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![]() WSC #009 松葉秀樹 Hideki MATSUBA [WE'RE IN THIS TOGETHER] 2D画稿に描かれていない面や空間をも補完する 立体化する対象が2D(二次元)のアニメ絵やマンガ絵であることが多いガレージキットの場合、それを造形する作家には、《純粋な工作力=アウトプット能力》のほかに、《オタク的感性を十二分に駆使し、2Dのアニメ絵を高解像度で読み解く力=インプット能力》が求められる。実際にはこれ以外にもいくつかの特殊な才能が必要とされるわけだが、大雑把に括るならば、「こうしたふたつの異なる能力を高次元融合させることができる作家=優れたガレージキット作家」と定義することができるだろう。 |
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text by Masahiko ASANO |
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まつばひでき●1965年3月25日生まれ。生業はテクニカルイラストレーター。'97年、一般求人誌に掲載されていた「テクニカルイラストレーター募集」の告知を見て、某模型メーカーで組み立て説明図などを描くアルバイトを体験。その際にガレージキットやワンフェスの存在を知り、「シロウトが趣味のレベルで作った造形物(の複製品)が版権元の許可の下に売り買いされている」という事実に驚愕する。それ以前は(じつはいま現在も)オタク関連や模型関連のことにはまったく興味がなかったのだが、そこで何かのスイッチが入り、'98年よりガレージキット的な造形に着手。そして'99年冬のワンフェスにて、一般客としての参加経験さえないままにいきなりディーラーデビューを飾る。「ロック好きな人間としては、思想や批評がほとんど存在しないこの世界には違和感を覚える。だからこそ、批評されるに値するレベルの作品を提示してみたい」というロックスピリッツの持ち主でもある(ディーラー名の“WE'RE IN THIS TOGETHER”も、ロックバンド“NINE INCH NAILS”の曲名から拝借したものらしい)。 |
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WSC#009プレゼンテーション作品解説 |
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ムスカ ※from『青の6号』 ![]() ■ 商品販売価格 (※販売は終了しています) ![]() 「ディテール至上主義」に陥ることなく、造形対象が持つ「フォルム(形状)」の的確な表現にとことんこだわった松葉の作品“ムスカ”は、オリジナルビデオアニメーション『青の6号』に登場する、ゾ-ンダイク側の生体兵器の立体化。じつはこの作品、かつて松葉がワンフェス会場で少量のみ販売したものとはまったくの別モノで、じっくりと時間をかけ、納得のいくまで各所をリテイクしまくった“WSCヴァージョン”とでも呼ぶべき存在です。 |
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松葉秀樹からのWSC選出時におけるコメント |
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WSCは「批評性」を強く打ち出した企画だと思います。模型(この場合ガレージキット)を造形することがその人の「自己表現」ならば、「批評性」がつねにともなっているのではないでしょうか。あるいは、「批評」することが表現形態のひとつかもしれません。「模型」が「表現」であるということは私なりに考えると、たとえば版権モノのキャラクターをガレージキットとして造形したとしても、それはただ単にキャラクターを立体化した二次的なもの、あるいはキャラクターの付属品としての立体物ということではなく、それを造形した人のセンスと技術を用いて個性を見えるものにするということではないかと思うのです。当然、そのキャラクターの立体物という事実から逃れることはできないのですが、ただ単に「うまいね」とか「これほしい」ということ以上に訴えかける何かがある、造形されたものがそれだけで「存在価値(意味)」がある、というところまで行けたとき、それがキャラクターというフィルターを通した「表現」であり、造形上の「批評」と言えるのではないでしょうか。 |
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