アーティスト紹介

WSC #015 KIMA

[リサセッズ]

多岐に渡る早熟な才能とグッドセンス
残る課題は「それを商業作品へと至らす術」か

 23歳という年齢を考えれば、自身が嗜好を有しているどのジャンルにおいても早熟であろう。「フィギュア造形はもちろん好きだけど、造形だけに縛られるつもりはない」「音楽もやってみたい」「建築にも興味がある」「写真も好き」「できればデザインも……」という発言も、ある意味、じつに納得。そう、おそらくは同年代の自称“クリエイター予備軍”とでも飲みに行けば、「KIMAちゃんってセンスあるよ、マジでマジで!」といった感じにプチヒーロー扱いさえ受けるはずだ。
 しかしここであえて残酷な言い方をするならば、いまこそがいちばん、夢や希望が無限に広がって見えている瞬間なのだ。女性蔑視と受け取られると困るのだが、“女のコ”の場合、経験値やスキルの向上が自身の評価にとって必ずしもプラスに働くとは限らない。女性アイドル歌手がどれだけアルバムのクオリティを追求していっても、得てしてファーストアルバムが有する「ときめき」を打ち負かせないのと同じように―。
 つまり今回のプレゼンテーションは、必ずしも全肯定なエールではなく、ある種の警鐘でもあるわけだよ。そのへん、KIMAちゃんわかってる?
「はあ…………。あの~……お昼ごはん食べてなかったんで、オムライス頼んでもいいっすか?」
 ……は? いや……まあ、いいよ、うん。
「うはー、マジっすか!」
 ……ま、それはいいとして。いま話したように、ぼくはキミの可能性に期待しつつも、キミの今後を危惧しているわけ。現状における才能が同年代の連中以上に長けている反面、どのベクトルにおいても決定的とまでは言い難い。そこを自覚せずこの先を歩み続けると、結果として、器用貧乏なだけのアマチュア作家で終わってしまう可能性もなくはないわけで……それはKIMAちゃんにとっても、もちろんガレージキットシーン全体にとっても、損失というか一種の敗北だと思わない?
「はあ……というか、あの~」
 うん、何!?
「デザートに、いちごパフェ頼んでもいいっすか?」
 ……は??? いや、まあ……もちろんいいけど。
「うはー、マジっすか!? いやー、いちごパフェ、しばらく食べてないんで」
 ……いや、だからいちごパフェはどうでもいいんだけどさ(泣)、なんつーか……うん、KIMA造形に内包されている少女性特有の残酷さと、大人や男性をひどくナメくさった方法論、それでいて乙女チックむき出しの曲率(マドレーヌで言えばスカートの裾の曲率が秀逸!)とか、そのへんのアンバランスな「危うさ」にときめいてるわけだよ、オイラは!!! ……って、まあ、わかんないか、そんな観念的な話。
「……要は、アイドル好きってことですよね?」
 …………ギクッ! い、いや、そういうことではなくって……でも、あながちまちがいでもないような……(←最近はあややとミキティ命 ←そのまんま)。

text by Masahiko ASANO

きま1980年8月9日生まれ。女性ながら「小学生時代に『ニュータイプ』の模型ページを通じてガレージキットというものの存在を知った」という強者。次いで、模型雑誌に掲載されていた「マンガやセル画からそのまま抜け出してきたようなガレージキットのフィギュアたち」にいたく感動し、中学時代からフィギュア造形に着手しはじめる。もっとも、高校時代は音楽に傾倒、美大時代は現代絵画を専攻するなど、中学時代以降は造形から微妙に距離を置き続けることになるのだが、'99年にWSCの設立を知り、WSCに選ばれることを目標としてワンフェス&ガレージキットシーンへ本格的に足を踏み入れることを決意。そして、'00年[夏]より“Strawberry Alarm”名義でいきなりディーラーとしてワンフェス初参加を果たし('03年[冬]からはディーラー名を“リサセッズ”へ改変)、自らデザインしたキャラクターを自ら立体化するなど、オリジナリティの高い作品を次々と発表しはじめ現在に至る。その多岐に渡る才能とセンスを把握してもらうには、彼女のWebサイトを覗いてもらうのが手っ取り早いはず。

Webサイト http://www.kimaport.com/

WSC#015プレゼンテーション作品解説

© KIMA 2003


マドレーヌ

※ノンスケール(頭頂高約215mm & 80mm)レジンキャストキット


商品販売価格
ワンフェス会場特別価格/3,800円(税込)
ワンフェス以降の一般小売価格/5,800円(税別)

(※販売は終了しています)


 WSC初の女性アーティストとなるKIMAのプレゼンテーション作品“マドレーヌ”(大小モデルの2体セット)は、彼女自身がデザインを手掛けた創作キャラクターです。男性キャラクターデザイナーでは絶対に生み出すことができない独特のガーリー テイストと、微笑の裏に潜む“毒(ポイズン)”―「かわいい」というお約束的キーワードを用いられることをひらりとかわすような、ひと筋縄ではいかぬ小悪魔的な魅力がポイントです。
 また、造形面においては、女性造形作家にありがちな「雰囲気重視型」のそれではなく、パーツ構成から表面仕上げまで、ガレージキットの文法をきちんと押さえたストロングスタイルである点にぜひとも注目してみてください。さらに、ホワイト×レッドを基調とした、まるでストロベリー ショートケーキのような特注WSCパッケージが女性アーティスト作品に華を添えます。

KIMAからのWSC選出時におけるコメント

 いろんな意味で私は、ワンフェスという場において異質な存在だと思っています。表面的に女性であるとか、既存のいわゆる“美少女フィギュア”の方法論を外しているといったことももちろんですが、作品に取りかかる上でのきっかけ、コンセプトなるものも相当に違っているのだと思っています。
 そんな私とガレージキットとの出会いはほぼ中学入学と同時になります。いわゆるオタク的人生を過ごしていた私が、たまたま模型雑誌を手に取り、ある原型師の作品を見たときのことです。二次元で生まれたものが三次元のものになり、なおかつ、立体化するという行為そのものに酔いしれるのでなく、元絵を“昇華”させているという事実とそのエネルギーに、大変な衝撃を受けました。
 その後、私はあまりアニメを観なくなり、むしろ音ザインに興味を持つようになっていまに至りますが、それでも模型雑誌を見ることはやめなかったし、逆に、流行っているアニメを立体物で知る、という行為のみが残りました。アニメグッズとしてのフィギュアでなく、造形作品としてのフィギュアという見方は、そういう経緯に基づくものなのだと思います。
 私は絵筆を取ったり、シャッターを切るのと同じように、フィギュアという表現形態を選んでいます。まだ若い業界と、ガレージキットと呼ばれる技術体系に可能性を感じているし、何より好きだからです。
 かと言って、これに固執するつもりもありません。自分の可能性に繋げるキッカケとしていま、ここに留まっているのです。