アーティスト紹介

WSC #017 亜野MEGA郎

ANO-MEGAROH

[亜野MEGA郎]

造形作品数と造形力が比例せぬがゆえの
「未来予想図」という要素の重要さ

 「キャラクターの設定画を見た瞬間、(それまでフィギュア造形を一度も手掛けたことがなかったにも関わらず)“自分にはこのキャラクターがきっと上手く作れる!”という無根拠な確信が体内を駆け巡ったんです(苦笑)。で、その直後に造形材料一式を購入しに行って、いきなり作りはじめてみたんですけど……まあ、客観的評価に基づく出来の善し悪しを棚上げにしてよいのであれば、最初に自分の頭のなかへ飛び込んできた完成予想図にはなんとか到達できたというか……」
 造形作品数と本人の造形力が比例するタイプのガレージキット作家、つまり、「数を作って段階的に上手くなっていった」というタイプの人たちには、亜野MEGA郎が体現してみせたこの行為を、根本的な部分で理解できないことと思う(理屈として理解できたとしても、少なくともそこにリアリティは感じられないはずだ)。
 が、亜野MEGA郎のこうした資質に対し、ぼくは強烈に共感を抱くことができた。理由は単純明快で、ここで手前ミソな話を持ち出しても仕方がないのだが、ぼくもまた、彼と同様の資質の下にものごとへと対峙しているひとりであるためだ(これは決して自慢話などではなく、「世のなかにはこういう人もいる」といった程度の話である)。
そして、非常によく似た資質を有する者だからこそ、前述の才能と表裏一体関係にある彼の「弱点」が、ぼくには人一倍……いや、人百倍正確に見えるのである。
 そう―亜野MEGA郎の弱点は、その“最初に頭のなかへ飛び込んでくる完成予想図”の存在そのものにある。そうした未来予想図を明確にイメージすることができれば、彼はこの先も相応の労力のみで、クオリティの高い造形を成し得るはずだ。しかし、仮に未来予想図が思い描けなかったり、その解像度が低かった場合には、「数を作って段階的に上手くなっていった」タイプのガレージキット作家に押し出しや寄り切り的な力ワザで負けてしまうような作品しか生み出せぬことだろう(何しろ、足腰はてんで弱いのだから!)。実際のところ、未来予想図が明確に思い描けた『おジャ魔女~』シリーズはどれも秀作揃いだが、「製作前も製作中もずっと霧のなかをさまよっている感じだった」という『ときめきメモリアル2』の陽ノ下 光は凡作そのものであり、はからずも(こんなにも早い段階で)その事実が証明されている。
 ただし、だからと言ってぼくは亜野MEGA郎に「数を作って足腰を鍛えろ」などと言うつもりはない。本人がそれを望むならば止めはしないが、そんな「遠まわり」は必要ないのではないか?
 手を動かさずにセンスを磨くことで、「日々是鍛錬」な筋トレ至上主義者たちをひらりとかわし、土俵から突き落とす。ぼくが亜野MEGA郎に期待するのはまさしくこの姿なのだが……それは少々、私情に走りすぎだろうか?

text by Masahiko ASANO

あのめがろう本名/小山 雄、1971年9月11日生まれ。中学時代よりプラスチックモデルやフィギュアキットに手を出すが、別段熱心に取り組むわけでもなく、ゲーム、バンド、アイドル、同人誌……と、「広く浅く」な多趣味生活を満喫。'94年にゲーム制作会社へ就職し、その後、転職した別のゲーム会社でシューティングゲームのキャラクターデザインなどを担当するも、'98年、「ゲームを作っていたはずなのに、ふと気付いたらパチンコ機の企画総指揮を任されていた」という状況に陥り、同企画に乗り気でなかったことと「同時期に恋に破れた」ことをきっかけとして(苦笑)'01年に退職、なんのあてもないまま、フィギュア造形の経験がゼロのまま、専業原型師として食べていくことをいきなり決意(!)する。ワンフェスへの参加は'02年[夏]からで、ディーラー名の“亜野MEGA郎”は、自身のアーティストネームをも兼ねたもの。また、WSCプレゼンテーション商品に選定された『おジャ魔女どれみドッカ~ン!』のおんぷちゃんは、フィギュア造形における実質的な処女作でもある。

 

WSC#017プレゼンテーション作品解説

© ABC・東映アニメーション


おんぷちゃん
& 悪魔のおんぷちゃん

※from 『おジャ魔女どれみドッカ~ン!』
ノンスケール(全高140mm & 130mm)レジンキャストキット


商品販売価格
ワンフェス会場特別価格/2,800円(税込)
ワンフェス以降の一般小売価格/4,800円(税別)

(※販売は終了しています)


 ガレージキットの造形に着手してからまだ1年強という亜野MEGA郎ですが、キャリアの短さをまったく感じさせないその繊細な作りは「さすが」のひとこと。何しろ、プレゼンテーション作品である“おんぷちゃん”(テレビアニメーション『おジャ魔女どれみドッカ~ン!』より)は、亜野MEGA郎の「実質的な処女造形作品」だというから驚きです。ひょろっと細長い棒状の手足は、まったく肉感的でないのにきちんと「表情」に溢れ、「この絵柄なりの骨格」を感じさせるのが最大のポイント。また、各部のボリューム把握もじつに的確であり、パーツごとに眺めた際の仕上がりも非常に美しい作品となっています。
 もう一体の“悪魔のおんぷちゃん”は「おジャ魔女~シリーズの第4弾として造形した作品」とのことですが、おんぷちゃんよりも数段表情が豊かになった体全体のデッサンが見どころ。一見すると非常によく似た2作品ですが、じっくり見比べてみると、短期間のうちに作者の実力がめきめきと上がっている事実に気付くはずです。

■亜野MEGA郎からのWSC選出時におけるコメント

 “モチベーション”……フィギュア原型を作るとき、それは必要なものでしょうか? 邪魔なものでしょうか? 自分の恋がままならないと、机に向かうのもつらい。でもメールが1通来ただけでなんでも作れる気がしてしまう。そういう人間です、亜野MEGA郎。少なくともいまは。とうてい原型師などと自称するにはおこがましいし、今後僕が商業原型師を目指すなら、大きなマイナス要素を公言しているのかもしれません。そして恐らくは原型師さんどなたも、それをコントロールすることで作品にエネルギーを注いでいるのでしょう。
 もちろん、僕もフィギュア造形の世界の高みを目指しています。商業原型も視野に入っているので、モチベーションをコントロールする術を身に付けたいとも思っています。でもどこかでは、浮かれた気分でスゴイ勢いと魅力に溢れるフィギュアを、あっというまに彫り上げてしまうようなおバカさんでありたい自分もいるのです。僕にとってモチベーションとはまさに両刃の剣!(笑) だから、フィギュアを作りはじめてまだ10体にも満たない僕ですが、モチーフを決定したら、それが自分の本意に因ると如何に関わらず、そのキャラクターの魅力と、立体化したときの魅せどころを思案して、「これはイイものになる!」という確固たるイメージをつかむまでちぃさぃ脳味噌をまわします。次に、期限とキモチの狭間でアートナイフを振るうわけです。そしてそのフィギュアに、多くの人に「手に取りたい」と思わせるような、理屈を超越した“価値”を練り込むことができたら、それが僕の望む原型師としてのありようだと思います。極めてフツーですね(笑)。