アーティスト紹介

WSC #025 yr?(ワイアール)

[卓球模型]

あれこれツッコミづらいそつない手堅さ
その裏に見え隠れする「エリート」の資質

「ガンプラを卒業して『SF3D(現マシーネンクリーガー)』にハマり、ゼネラルプロダクツにあこがれ、浜松町で開催された第1回目のワンフェスへ朝から並んだ」。当時高校生から大学生ぐらいの、いま現在40歳前後の模型オタクの体験談であれば「ふ~ん、そうなんだ」程度のよくある話だが、これが「小学校3年生だか4年生のときの話」となると、まったくもってわけが違う。そんな超弩級のオタクっぷりを10歳未満のときから炸裂させていたyr?をひとことで言い表すならば、“エリートオタク”という言葉以外は思い当たらないだろう。
 より濃いものを嗅ぎつける嗅覚と、より先鋭的なものを見抜く眼力。もちろん、そうしたエリートオタクとしての資質がそっくりそのまま自身の造形力と直結するわけではないが、その嗅覚と眼力を駆使すれば、どこにゴールを設置すべきか、そして、どうすればそこに辿り着けるかを逆算的に導き出すことは比較的簡単なはずであり、結果、フィギュア造形処女作からそこそこのものが作れてしまったであろうことは容易に想像が付く。yr?作品が醸し出す「あれこれどうこうとツッコミづらい空気」は、そうしたエリートオタクとしてのバランス感覚が優れていることの証明だろう。
 もっとも、そこがyr?のセールスポイントであると同時に、yr?のウィークポイントでもあるように思う。先人たちが発明した表現手段を上手く咀嚼した造形は、どこもかしこもそつなく手堅いものの、「yr?ならでは」という表現を見出しにくい。「そんなことどうだっていいじゃん、上手いには上手いんだから」と言われてしまえばそれまでだが、こうした「ボロの出ない戦い方」に終始している限り、自分が置かれた状況をこの先変化させていくことは難しいはずだ。
 もちろんyr?の資質をもってすれば、人気ディーラーとしての根城を築く程度のことは簡単かもしれない。だが、エリートオタクとしてのyr?には、そんな「現実的な目標」だけに甘んじてほしくないのである。かつて自身がSF3Dやゼネラルプロダクツにシビれたように、今度はyr?が、その造形をもって若い世代のオタクたちをシビれさせてほしいのだ(それは、エリートオタクに課せられた一種の“業”かもしれない)。そのためには、いまの足場からもう一歩……いや、もう二歩ほど、勇気を振り絞って踏み出す努力を試みるべきではないか?
 ここから1~2年のあいだに、どれだけがむしゃらに前へ進むことができるか。本来ならば褒め讃えるべき場でプレッシャーをかけるのも気がひけるが、やはり勝負はそこにかかっているような気がする。

text by Masahiko ASANO

わいあーる1974年5月1日生まれ。小学校低学年時代はアーティスト解説内で触れられているが、小学校高学年になると「(自身のスキル的に)ガレージキットを組むのは無理」「ZZガンダムの内容に失望した」といった理由から模型離れし、さらに、'89年の宮崎事件(連続幼女誘拐殺人事件)を境にオタク趣味から遠ざかることに。その後、「ヤンキー傾倒期」「サブカル傾倒期」「裏原宿傾倒期」「ゲーセン傾倒期」を経て、ふと気付けば「やっぱりオタクが最高!」という状態へ立ち戻り、オタク趣味に回帰。その直後に購入した某メーカー製キャラクタードールの出来に憤慨し、「これならばオレのほうがいいものを作れるはず」という理由からドールヘッドの造形へ着手する。ワンフェスへ友人とディーラー参加しはじめたのは'02年[冬]からで、ドールヘッドを相当数売りまくり、その後、'03年[冬]からは個人ディーラーとして独立し、“卓球模型”名義で参加。この先は、「プロ原型師として商業原型をこなしつつ、イベントディーラーとしても活動していきたい」そうだ。

WSC#025プレゼンテーション作品解説

© 1998 Leaf/AQUAPLUS


森川由綺&観月マナ

※from Windows PC用ゲームソフト『WHITE ALBUM』
ノンスケール(全高100mm & 90mm)レジンキャストキット


商品販売価格
ワンフェス会場特別価格/3,000円(税込)
ワンフェス以降の一般小売価格/5,250円(税込)

(※販売は終了しています)


 レーベルプロデューサーをして、「非常に魅力的なんだけど、どこがどういい、どこがどう優れていると、他人に対し説明しづらい造形」と言わしめたyr?(ワイアール)。その理由は、いかにもイマドキな「萌え系」のキャラクターを題材にしつつも、イマドキの空気に流されていない、非常にベーシックかつフォーマルな手堅い造形スタイルにあるのでしょう(逆の言い方をするならば、萌え系キャラクターの造形物には、イマドキの空気に流された、記号の積み重ねだけで構築されたような作品ばかりが目立つということでもあります)。
 プレゼンテーション商品となる“森川由綺”と“観月マナ”(共にWindows PC用ゲームソフト『WHITE ALBUM』より)をじっくりと眺めれば、「萌え」のひとことでは片付けられない、丹念に作り込まれた生真面目さに気付くはずです。また、「パソコンのモニター上に置いて飾ってほしい」という理由から、あえて小振りなサイズにて造形されていることもポイントと言えるでしょう。

yr?からのWSC選出時におけるコメント

 初めまして、もしくはおひさしぶり、卓球模型のyr?です。
 いやね、ビックリよね、WSCですって。いままで鼻水とか垂らしながら「ウェ~イ! プレネールさんだウェ~イ!」とか言ってまったく無反省な消費者のひとりとしてキットとか買ってたけど、まさか自分が選ばれるモノとは思ってなかったですからねぇ……ホントにビックリよ。最初に連絡をもらったときなんて電話口で、「初めまして、私、海洋堂の○○と申しますが……」とか言われた時点で「ヤッベェ~ッ! 怒られる! よくわかんねーけど先に謝っちゃえッ!」とか思ってソッコー詫び入れてましたから。
 ……ねぇ、いいんですかね? ウチみたいなディーラーが選ばれちゃって。なんかいままで選ばれてきた人とかやたらとスゴイ人ばっかりじゃないですか。そのなかにウチが入っても、ちょっと小粋なパーティーに紛れ込んだ野犬一匹っていうの? 「ウォーッ! 俺は戦犬だッ! 地獄の番犬ケルベロスだッ! 押井 守だッ! ウォ~~~ッ!」とかイキがっても所詮ヨダレとか垂らしてる小汚い犬一匹、みたいな。そのうち首都警特機隊がやって来て「奴だけは俺が始末をつけてやらねばならん……」とか言われて一斉射撃で雑巾のようにズタボロにされそうよね。すんません、さっきまで『犬狼伝説』読んでました。
 ナンの話でしたっけ? ……あぁ、WSCですよ。
 今回選ばれたことについてはやはり非常に光栄なことではあり、こういったチャンスもなかなかあるモノではないと思いお受けしましたが、やっぱり「ウチでいいの?」っていう奥歯にものが挟まったような感覚は最後まで付きまといますねぇ。
 まぁもちろん、普段のイベントで自分の作ったブツがひとつ売れていくたびに同じことは思うワケで……逆に言えばそう思っていられるウチは前に進めるのかもしれませんが。とりあえず当面は考えてもしゃーないことは考えず、いままでの自分のスタンスである「ちっちゃい子フィギュアをかわいく作りてぇ~」を徹底的にやりますよ?
 次回作はもっと幼いでぇ~~~ッ!