アーティスト紹介

WSC #027 FROG FLAG

[FROG FLAG]

「盛る×削る」が原則である世界にもたらされた
「こねる×貼る」というガレージキットスピリッツ

 家庭用オーブンにて20~30分加熱することで硬化する、ポリマークレイという“ねんど”を駆使し、カエル造形とワンフェス参加に没頭する希有な女性造形作家がいる。
 そのすべての作品が、シリコーンゴムやレジンキャストなどを使わぬ一品モノの手作りで、体表模様などのこまかなディテールもすべてが手びねり。
「……っていうか、なぜカエル!?」
「……っていうか、なぜよりによってワンフェスへ!?」
「デザイン・フェスタとかハンズ大賞のほうが向いてない?」
 まあ、「なぜカエル!?」というのは本人の趣味嗜好だから他者がどうこう言うべき問題ではないが、あとのふたつは「まったくもってそのとおり」だろう。
 しかし、本人は口元をもごもごとしながら、それでいて視線だけはこちらの目を一直線に凝視しつつ、こう語る。
「……私は極度のカエルグッズコレクターなんですけど、私がカエルグッズを買うときのテンションは、たぶん、ワンフェスでガレージキットを買う人のテンションに極めて近いと思うんです。そういう意味では、デザイン・フェスタとかは全然ヌルいっていうか……デザイン・フェスタには私の作るカエルを好きな人も来るけど、でも、“FROG FLAGのカエルでなきゃイヤだ!”っていう人はほとんどいない。そういう“FROG FLAGでなきゃイヤだ!”っていうような人が来てくれる場所を求めるならば、ワンフェスがいちばん適切だと思ったんです。
 つまり……ワンフェスって、買うほうも売るほうも“好きなものに対してどこまでバカになれるかの祭り”じゃないですか。そういうところがおもしろくて」
 造形対象=カエルを溺愛する盲目的な視点と、対象をあくまで対象化して客観視する俯瞰視点の使い分け。デフォルメと写実性の高次元融合。女性ならではの思い切った割り切り(ベルツノガエルの口腔内をどピンクにしちゃうあたりの感覚がすごい!)や、卓越した造形力と作品構成力、そして、カエル造形とその愛好者たちに対するパトス??そう、これはまちがいなく「女性ならではのガレージキットスピリッツ」の具現化なのである(さらにWSC選出を告げた以降は、「カエルとしてのリアルさ×カエルとしての萌え×ねんど細工らしさ」という3つのバランスを急速に追求しはじめるに至り、「……もしかしてパンドラの箱を開けちゃった?」とやや不安になってしまうほどの状況だったりもする)。
 レジンキャストで成形された組み立てキットだけがワンフェスのすべてではない。その事実を体現する希有な才能がFROG FLAGなのだ。

text by Masahiko ASANO

ふろっぐ ふらっぐFROG FLAGは、れな(1978年1月25日生まれ)が主宰する個人ディーラー名にして、場合によってはれなのアーティスト名も兼ねる。'00年春、スポンジねんど“モデルマジック”にてカエル造形の真似ごとをはじめたのがことのきっかけで、その後、仕事が忙しくなり造形活動の休止を余儀なくされたものの、'03年冬に会社のリストラが決定。「退職金が尽きるまでねんどをする」と宣言し(←ロックンロール)、ポリマークレイ“FIMO(フィモ)”によるねんどガエル造形を再開する。'04年夏のワンフェスにて造形物即売イベントを初体験し、なんと、一品モノのカエル55個を持ち込み完売を記録。以降はデザイン・フェスタなどにも参加しはじめたが、イベントではワンフェスを、パーマネントな活動的には東京・下北沢のレンタルボックス『ハコウリ』(http://hakouri.net/)を“ホーム”として設定し、家事をほったらかしにして(じつは既婚者!)ねんどガエル造形に明け暮れる日々を過ごす。

WSC#027プレゼンテーション作品解説

© FROG FLAG


FROG FLAG
スターターキット

※WSCアーティスト自身による創作(オリジナル)キャラクター
ノンスケール(全高250mm)レジンキャストキット


商品販売価格
ワンフェス会場特別価格/500円(税込)
ワンフェス以降の一般小売価格/1,000円(税込)

(※販売は終了しています)


 すべてが“ねんど”による一品モノ(ワンオフ作品)、体表模様すらもすべて手びねり。そんなスタイルで突如ワンフェスに登場し、「……えっ、これ、手でこねて作ってるんですか!?」と、買い手以上に作り手=ガレージキットディーラーへ大きな衝撃をもたらしたFROG FLAG。今回のWSC選出にあたっては、さすがに一品モノのカエルを数百個用意してもらうわけにもいかないため、彼女の名刺代わり的作品“鳴きシュレーゲルアオガエル”を、WSC用に、レジンキャストキット版へとアレンジしてもらいました。レジンキャストパーツはグリーン、イエロー、ピンクの3色成型なので、目と耳を塗装するだけであっという間にそれらしい仕上がりになります。
 さらに、FROG FLAGを理解するための16ページ小冊子『FROG FLAG BOOK』(企画制作・編集・アートディレクション/水谷さるころ)をセット。FROG FLAGワールドへの「入り口」となるこのスターターキットで、ディープなカエラー道をとくとご堪能ください。

FROG FLAG(れな)からのWSC選出時におけるコメント

「なんでカエルなの?」とよく聞かれるのですが、えーと、カエルグッズマニアだからです。カエルが好きだから、ただそれだけです。カエルグッズマニア、いわゆる“カエラー”という人たちは、度が過ぎてくると、本物のカエルを飼いはじめたり、より大枚をはたいて自宅に博物館を作ったり、自分でグッズを作りはじめたりします。私はただの、本物を飼う勇気と根性のない度の過ぎたカエルグッズマニアでしかないのです。
 じゃあカエルのどこが好きなのかというと、いつもニコニコと笑っていて、世界の片隅で一生懸命生きているそのけなげさが好きなのかもしれません。たとえば、ノドを精一杯膨らませて鳴くシュレーゲルアオガエルの喉袋とピンと伸ばした前足。清流のなかにたたずむカジカガエルの平べったさ。雨上がりの道路にわらわら出てくるヒキガエルの黒い子供たち。ベルツノガエルがマウスを口に押し込むときのその体に見合わない小さな手。アフリカツメガエルが餌を食べるときのなぜかアワアワした動き。ソバージュネコメガエルの好奇心に溢れた目。デンドロバデス・イミテーターのぽっこりした水玉模様のおなか。イエアメガエルのちょっとたるんだ前足もトノサマガエルのむちむちの後足も。ミツヅノコノハガエルのオッサンくさい表情も。ミルキーフロッグのニンマリ具合も。モリアオガエルの大きな吸盤も……。そんなかわいいところをすべて表現できたらいいなぁと思います。もしくはそんなかわいさが詰まったカエルフィギュアがあったら買いたいです。
 私にとってカエルとは「遠くに在りて想うもの」。そんなふうに好き。