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WSC #028 プラグマトーイズ
Pragmatoyz
[プラグマトーイズ]
単なるアメトイ・リスペクトを越えた批評性
「ガレージトイ」という見識はまちがっている!
「オモチャのガレージキット化」、もしくは「ガレージキットのオモチャ化」。プラグマトーイズの作品はよくそういった見方(書かれ方)をされるようだが、正直言って、そうした見解はあまりにも脊髄反射的というか短絡的だと思う。「莫大な制作費が必要とされる金型が個人では作れない」がゆえにガレージキットでオモチャを模しているのかと言えば、もちろんそうしたニュアンスが皆無というわけではないだろうが、それへの答えは「NO」のはずだ。
……もっとも、もしもそうした問いに対し「Y, YES !」と答えるのであれば、プラグマトーイズ主宰者にして原型製作担当のuka2(うかツー)は、故郷の青森にいながらキーチェーンフィギュアの商業原型なんぞをこしらえていないで、メディコム・トイの玄関前に座り込みを続けて押し掛け原型師として雇ってもらう道を選択するべきだろう。いますぐそうすべきだ明日にでも上京すべきだっ!
……って、イキナリ話が脇道へ逸れてしまったので元へ戻すが――プラグマトーイズ作品のおもしろさは、“アメトイ”と俗称されるアメリカントイへのアンヴィバレンツ(二律背反)的感情を、ハイビジョン&ハイクオリティーをもって自らの作品へと落とし込むスタイルにあるのだと思う。「う~ん、やっぱアメトイ最高ーっ! ……んんん~、でも、どうしてアメトイってこんなにも企画性とか設計とかがどこもかしこも甘いんだろう? なんかすげえイライラするー! ……でも、アメトイのそういうダメダメなところもまた大好きーっ」というような、端から見ていると「どっちなんだよ!」とツッ込まずにはいられない愛憎入り交じったアメトイへの想いや自己葛藤があるからこそ、彼(ら)の作品はめいっぱいアメトイテイストを有しつつも、アメトイを数倍濃く煮詰めたような要素にて構成されているのだ。やはりこれは、商業ロック(マスプロダクツ)に対するインディーズロックからの「リスペクトを前提とした真っ向からの批評」なのである。
「アメトイもぜひこうあってほしい」という願いが込められた企画性と、そして、ジャパニーズ“萌え”テイストもが汲み入れられたパーツひとつひとつのフェティッシュな形状を、ぜひともじっくり味わってみてほしい。彼(ら)の“あがり”が必ずしもメディコム・トイ入社ではないことは、彼(ら)の作品を遊び倒せばおそらくあなたにも実感できるはずだ。
……でも、メディコム・トイ入社もそれはそれでアリだよな(←だからどっちなんだよ!)。
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text by Masahiko ASANO |
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ぷらぐまとーいず●uka2(うかツー、1971年5月24日生まれ/原型製作担当)、石(いし、11月18日生まれ/デザイン担当)による男女ユニット。小学生時代から「ガンプラよりも、『ロボダッチ』やアオシマの『ミニ合体シリーズ』のようなメインストリームをちょっと外れたものが好きだった」というuka2が、就職後にゲームセンターで知り合ったオタク仲間たちと意気投合、同志にて、'96年冬のワンフェスに創作キャラクター造形でディーラー参加したのがすべてのはじまり。その後もコンスタントに活動し続けていたものの、'01年あたりから漠然とワンフェス参加が面倒になり、参加費が安く規模のちいさなガレージキットイベントへと活動の場を移す。'02年からは石とユニットを組み、ディーラー名を“プラグマトーイズ”に改変、'04年夏から再びワンフェスへ復帰。uka2は現在、故郷の青森にてキーチェーンフィギュアの商業原型製作などを生業としているが、「いわゆるフィギュアフィギュアした表現が苦手なので、自分に向いている仕事をやっていきたい」と限りなくマイペースな活動が続いている。
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WSC#028プレゼンテーション作品解説 |
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© Pragmatoyz

ビトレット・マイナー
& ブロベル
※ノンスケール(全高100mm & 40mm)レジンキャストキット
■ 商品販売価格
ワンフェス会場特別価格/3,500円(税込)
ワンフェス以降の一般小売価格/5,250円(税込)
(※販売は終了しています)
メイド・イン・ジャパンのオモチャとはさまざまな意味において一線を画す、“アメトイ(アメリカントイの俗称)”ならではの「どこかちょっと間の抜けたバタ臭い愛らしさ」や「工業製品としてのキモチよさ」。“アメトイ萌え”というよりは“アメトイテイスト萌え”であるプラグマトーイズは、こうした「アメトイならではの味わい」を、自らの作品のなかに色濃く落とし込むことができる才能の持ち主です。
そんな彼らのプレゼンテーション作品となる創作キャラクター“ビトレット・マイナー”と“ブロベル”は、なんと8色ものレジンキャストを使用した多色成型キットで、接着剤すらほとんど使うことなく、各パーツをすり合わせたのちに目などを描くだけで完成してしまうフルアクションモデル。各ユニットの接続には5mm径のジョイントが用いられているため、5mmジョイント規格のオモチャ(『トランスフォーマー』や『ゾイドブロックス』など)と組み合わせて遊ぶことも可能です。そのデザインセンスと工作精度の高次元融合には、誰もが驚くことでしょう。
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プラグマトーイズ(主宰/uka2)からのWSC選出時におけるコメント |
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思えば「ただなんとなく」という理由で3年近くもワンフェスへの参加をサボって創作系の造形イベントでわいわい遊んでいた私たちですが、思うところあってワンフェスに復帰するなりこのような機会に恵まれ、誠に恐縮しております。
プレゼンテーション作品は以前のワンフェスで原型を展示したもののリメイク版にあたり、「いままでサボってゴメン!」というお詫び的な意味も込められています。複製に手間のかかるものばかり作っていつも持ち込み数が足りず、なおかつ一度イベントで販売してしまうと作品への愛着がいまひとつ薄れてしまう性分から滅多に再販もしないという体たらくでお客様にはご迷惑をおかけしてきましたが、「このままではマズい! 心機一転して死ぬ気で量産せねば!」と決意した矢先に海洋堂さんからのお電話があり、今回の運びとなりました。工場での生産でお値段もお求めやすくなり、少しはご恩返しができそうです。
「てめー、業者抜きだけが目当てかよ!」とのお叱りも甘んじて受けます。WSCに選出されたことは本当に身に余る光栄だと思っていますが、何よりも「ほしい人みんなに普通に買ってもらえる」ことがうれしいので……。海洋堂の宮脇専務に「こいついまからでもWSCから降ろせ!」とどこまでが冗談でどこからが本気なのかわからないことを言われたのもいまではよい思い出です。
また、これまで培った多色成型・簡易組み立ての技術もできる限り盛り込んでありますので、私たちの作品を初めて目にされる方にも「こんなことしてますよー」という自己紹介としてうまく伝わってくれればいいなと思っています。「レジン製のオモチャもどき」とでもいうべきひねくれた不自由な代物ですが、手にとって遊んでいただければ幸いです。
創作系イベントという居心地のいい洞窟から多少日当たりのよい場所に出た私たちがいったいどのような運命を辿るのかは神のみぞ知るところですが、今回のWSC選出がよい方向に働いてくれることを祈りつつ、ある映画の一節を引用して締めたいと思います。
「モグラは太陽を求めて穴を掘り続けるが、地表に出ると目が潰れてしまうのだ」
……縁起悪いですね。まあ、今後もどうかひとつ。
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