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WSC #041 脇田耕二
Kouji WAKITA
[カノン]
リアルロボット系ガレージキットに活を入れる
生粋の「ロックンロール系」スカルプター
'80年代末に台頭し、美少女フィギュアと並びガレージキットシーンの主役の座に就いた《リアルロボット》であったが、美少女フィギュアがいまなおその人気を拡大し続けているのとは対照的に、予想だにしなかった勢いで失速を続けている。その凋落ぶりは、かつてリアルロボットと美少女フィギュアにより主役の座を引きずり下ろされた《怪獣》以上と言っても過言ではない。
可動至上主義の蔓延(その結果、レジンキャストキットよりも可動に適したアクションフィギュアやバンダイ製プラスチックモデルが人気を博すのは当然である)と、ガンダム以外のロボットアニメの弱体化。リアルロボット系ガレージキットが衰退した理由は明白だが、速水仁司~山口勝久と受け継がれてきた「見得切り固定ポーズによる絵画的なロボット造形」までもが一気に鳴りを潜めてしまったのは、ガレージキット的造形を文化的視点で眺めたときには明らかに問題ではないか――。
脇田耕二は、そうした現状のリアルロボット系ガレージキットに対し活を入れる「遅れてきた才能」だ。
脇田イコール速水~山口のあとを継ぐリレイヤーなのかと言えばそこまで話は単純でないが、速水~山口からの影響はもちろん見られるし、同時に、速水~山口の強大な影響下かようとする努力も見て取れる。それゆえ、そこに必要以上の気負いや若干の空まわりも感じられるのだが、そうした「とにかく前に進もう進もうと必死にもがく姿」が作品を通じて実感できることが、脇田造形における最大の魅力となっているように思う。
また、センスがイマイチ垢抜けていない反面、そのことが逆に造形の力強さとドライヴ感を強調しているあたり、スタイル的にはまさしく“ロックンロール”そのもの。「中学時代からハードロックのバンドを組んでいた」という話も決して偶然ではあるまい。
「ワンフェス会場で実力を示せるかたちは“数を売る”ことか“『ワンダーショウケース』選出”しかないと考えていたが、数を売ることに関しては落胆の連続で心が折れかかっていた」というタイミングでのワンダーショウケース選出は、果たして脇田に何をもたらすのだろうか。これで「あがり」に至ってしまうような人物ではないと思う反面、ビッグネームになっても、「大人」になっても、決してロックンロールスピリッツを失わずにひたすら前へ前へと進んでいく、oasisのノエル・ギャラガーのような(ある意味キ○ガイとも言える)スタンスをキープし続けていけるかどうかが、今後の脇田の造形活動における課題となってくるのかもしれない。
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text by Masahiko ASANO |
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わきたこうじ●1974年1月20日生まれ。'80sリアルロボットアニメブーム直撃世代として小学5年生まではガンプラ製作に勤しむも、強大な権限を持つ兄に「そんなものは卒業してギターをやれ!」と命じられ、バンドを組みハードロック漬けの日々に転身。が、20歳ごろにバンドメンバー間で再放送のガンダムが盛り上がり、メンバーから『ホビージャパン』を教えられガレージキットの存在を知る。その後、となり町にガレージキットショップがオープン、固定ポーズロボットの魅力にハマり、25歳ぐらいまでは市販ガレージキット製作三昧の日々を堪能。そして'99年[冬]のワンフェスに一般入場者として来場した際、お世辞にも上手とは言えないアマチュアが大量にディーラー参加している事実を知り、「だったら自分も参加しよう」と決意する。ディーラーとしてのワンフェス初参加は'00年[冬]、“揚げたてトンカツズ”名義にて。'02年[冬]からはディーラー名を“カノン”に変更、とくに専業原型師になることを夢見るわけでもなく、本業を堅実にこなしつつ原型製作の魅力に取り憑かれた日々を送る。
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WSC#041プレゼンテーション作品解説 |
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© サンライズ

グライムカイザル
※from TVアニメーション『蒼き流星SPTレイズナー』
ノンスケール(全高200mm)レジンキャストキット
■ 商品販売価格
ワンフェス会場価格/7,000円(税込)
(※販売は終了しています。なお、このプレゼンテーション商品に関しては、版権元の意向に伴い一般販売は行いませんでした)
可動至上主義者の蔓延により、かつて隆盛を極めた「見得切り固定ポーズによる絵画的なロボット系ガレージキット」は衰退の一途を辿るばかり。脇田耕二は、そうした現状のロボット系ガレージキットシーンに一石を投じる「遅れてきた才能」と言えるかもしれません。
プレゼンテーション作品となった“グライムカイザル”(TVアニメーション『蒼き流星SPTレイズナー』に登場する敵機)を見ても分かるように、アイテム選択からしてその姿勢はまさしく「ロックンロール」。ガレージキットという表現形態がそもそも備え持っていた「体制(メジャー)への反抗」という姿をいまに伝える、すでに希有となってしまった「ガレージキットらしいガレージキットの作り手」が脇田なのです。とにもかくにもこのグライムカイザルを通じて、ドライヴ感溢れる、パワフルで力強い造形をぜひとも堪能してみてください。パーツ1点1点そのすべてから発せられる「怨念」にも似た熱きロックンロールスピリッツに、圧倒されること必至です
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脇田耕二からのWSC選出時におけるコメント |
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カノンキットのテーマは「設定画より原画」「エンジンON」「有機質」。戦ってるその躍動感のある姿を荒々しく立体化。こんな感じですかね。メカ造形の定説(?)や基本セオリーからは随分ズレている、もしくは正反対。なかでもいちばんのこだわりは荒々しく。シンメトリーみたいなのが受けるジャンルですが、ボクは作れませんし作りません。
だから人気薄なんですがね(汗)。
毎回売れないキットをなぜ作り続けているのか? 正直自分でもよく分からないんです。当初は「アマがプロを抜くのだ、そしてひれ伏せろ」とか、バカな野望もありました。
が、しかしそんなことはすぐにどうでもよくなりました。目標・憧れの原型師がいるわけでもなく、プロになりたいわけでもなく、かといって最新アニメ・ゲームが好きなわけでもなく。
で、そんなボクに突然の選出連絡です。少し不思議です、いや当然かな(笑)。前回のワンフェスで何か悟ったんですよね、何かはよく分かりませんが。自身の最高傑作グライムカイザルが不評に終わり、いままでならハラワタ煮えくり返り、「もう辞めじゃ、購入者以外全員○ね!」なのに、前回終了時はなぜか心穏やか。即「次回もやってみようか」と思えたんですよね。カイザルの出来に満足してたのか?
そんなときに選出の連絡をもらったのでうれしかったですね。観てくれている人が「もうひとり」居てくれてたんだなと。「造形だけでなく、向かい合う精神まで見通されてたのか?」と思うぐらいです。「やっと大人になったね、ご褒美あげよう」みたいな感じでね(笑)。
もしWSC選出を願う人がコレを読んでいるなら、ひとつ言わせて下さい。WSCのテーマを熟知して造形に挑めば必ず選ばれます。時期の早い遅いはありますが。カノンの下手キットでも選ばれたんですから。腕じゃなく、その心です! ボクは心だけは自信ありますからね、7年掛かりましたが(笑)。
内田 匠さん、いつもキレイな塗装ありがとうございます。この場を借りて御礼申し上げます。
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