アーティスト紹介

WSC #055 ダイバディ

[Dimension Diver]

ロボ娘フェチ造形というニッチ感覚と相反する
懐かしさすら伴う「メーカー」然とした心意気

 ワンフェスが誕生する以前のガレージキット黎明期、当時の関係者たちが極度に興奮した理由は「個人が“メーカー”になることができる」という部分にあった。「今後はもうプラスチックモデルメーカーの動向に翻弄されることなく、自身が製品の送り手となり新たなシーンを創造していくことができる」という、目の前に突如として出現した風景に対し誰もが色めき立ったのだ。
  そこからほぼ30年という月日が流れ、ガレージキットを手がける人々の気持ちのありようも多種多様化した。昨今のワンフェスに参加するアマチュアディーラーの多くは「製品が売れるかどうか、皆がそれをどう評価してくれるか」という部分にはひどく敏感だが、自身の存在をメーカーとして位置付け、「コンシューマーに対し何をどう提供するべきか」という部分を真剣に考えながら楽しんでいる人はあまり多くないように感ずる。
  そうした現在のガレージキットシーン内において、ダイバディはメーカーの匂いを漂わせる筆頭格である。
  ただし、ガレージキット黎明期のそれとひとつだけ大きく異なるのは、「メーカーになれる」という概念に酔い、そのことに対し快楽を見いだしてはいない点だ。それゆえに、自ら設けたルールに則りシリーズラインナップを増やし続けていくことで、“メーカーごっこ”の領域を完全に突破し、誰の目から見てもメーカー然とした立ち位置にまで一気に上り詰めてしまったのである。
  ワンフェスに初めてディーラー参加した'07年[夏]にて発表したのは4作品。このうちの2作が同一フォーマットに基づく可動キットであり、“次元可動”というシリーズ名までもが当初より与えられていた。これでシリーズが短命に終わると赤っ恥ものなのだが、その後も継続的に次元可動のフォーマットをプラス成長させ続け、'11年1月現在までに(バリエーションモデル数点を含むものの)じつに29作を発表するに至っている。「継続は力なり」と称すのは簡単だが、この勢いとブレのないクオリティーにはやはり驚かざるをえない。
  キットの可動設計自体はごくごくノーマルだが、“ロボ娘フェチ”という己の属性を最大限に生かし、ネコ耳、ウサ耳、巨乳、ボンテージ、ハイレグ、Tバック、黒パンスト、スク水、といった萌え記号を造形内に盛り込むデザインアレンジ能力はなかなかのもの。すべての版権元がこうしたアレンジを許諾してくれるわけではないが、ダイバディ風味に染め上げられたロボ娘をもっともっと見てみたいという人は少なくないはずだ。

text by Masahiko ASANO

だいばでぃ1983年11月6日生まれ。もの心がついたころからロボットアニメにのめり込み、幼稚園生のときにはガンプラ製作へ着手、中学生になると塗装や改造も嗜むようになる。高校生のとき、『デ・ジ・キャラット』のキャラクターフィギュアがほしいと思ったものの広く流通していた市販品が存在せず、「だったら自分で作ってしまおう」と考えたのがフィギュア造形との馴れ初め。3ヶ月ほどかけて同作品を完成させ、立て続けに『カードキャプターさくら』など数体を製作。その後大学へ進学するも「あまり得られるものがない」との判断から退学、造形で食べていくことを決意し、専業原型師となる道を模索しはじめることに。ワンフェスへのディーラー初参加は'07年[夏]、“Dimension Diver”名義にて。以後現在まで続く、自身の代名詞的存在たる「次元可動」シリーズを初回からいきなり出展し、可動ガレージキットフィギュアファンから注目を集める。すでにマスプロダクツ製品の原型製作にも着手しはじめており、今後のさらなる飛躍が期待される新鋭である。

Webサイト http://www.daibadi.com

WSC#055プレゼンテーション作品解説

© ATLUS CO.,LTD. 1996, 2006 ALL RIGHTS RESERVED.


次元可動カラー
アイギス完全版

from PS2用ゲームソフト『ペルソナ3フェス』
ノンスケール(全高160mm)レジンキャストキット


商品販売価格
ワンフェス会場特別価格/9,800円(税込)
ワンフェス以降の一般小売価格/12,000円(税込)

※カラーレジンキャストを使った多色成型(7色)製品のため、アーティストとの合議により、品質を安定させるために国内生産を採用しました。結果、他2作品に比し高額な価格設定となってしまった旨をご理解いただければ幸いです


 「女性型ロボット好き」というフェティッシュな嗜好にて頭角を現したダイバディにとって、昨今流行となりつつあるカラーレジンは自身をブレイクさせるに最適な武器。「デザインアレンジ+可動キット(組み立て式アクションフィギュア)化」という作風と、カラーレジンキャストキットの「塗装がほぼ不要=可動させても塗料がはげる心配がない」という特性はすこぶる相性がよく、'08年より次元可動シリーズをカラーレジン化したことが、ダイバディにとっての大きな転機となりました。ホワイト、フレッシュ、イエロー、ゴールド、グレー、レッド、クリアーレッドの7色成型によるプレゼンテーション作品“次元可動カラー アイギス完全版”(PS2用ゲームソフト『ペルソナ3フェス』に登場する人型兵器)は、可動だけでなく、射撃モード右手、フェス バージョン装備、左平手といったオプションパーツの差し替えも楽しめる逸品です(商品には瞳デカールが付属しますが、自立させるためのスタンドと関節パーツは市販品を別途購入していただく必要があります)。

ダイバディからのコメント

 はじめまして、Dimension Diver名義でディーラー活動をしている原型師、“ダイバディ”と申します。現在、ワンフェスなどのイベントを中心に、アニメ、漫画、ゲームなどに登場するキャラクターのレジンキットフィギュアを企画/製作/販売し、また市販品の原型製作を手がけるなど、専業原型師として活動しています。得意なのはロボット、もしくはメカの要素が入った人物などのフィギュアで、アニメ作風の造形が好きです。
  ワンフェスに参加してから約3年の月日が流れました。最初は要領が悪く経験不足だったのでいろいろつらかったのですが、皆さんのおかげでやっとここまで来ることができました。自分でデザインをアレンジして製作した立体物がいろんな人たちに認めてもらえて、すごくうれしいです。本当にありがとうございます。
  私は原型師としてただ単に原型を製作するのではなく、自分だけのストロングポイントやオリジナリティーを盛り込んだ、商品として効率よくバランスがよいものを販売できる企画力のある原型師を目指しています。いまはレジンキットの販売を優先した活動をしていますが、これからはより多くの人に触れてもらえるような作品製作がしたいと思います。
  そしてこれはまた別の話ですが、いま原型製作のほかに、玩具販売のためのロボットアニメ企画もひとつ書いています。立体物の作り手として、またアニメファンとして、いまのロボットアニメの問題点を解決し、またこれまでになかった新しい売り方、ロボット玩具全般の売り上げ上昇、ロボットアニメというジャンルの新しいビジョン提示を目的とする作品です。
  仕事のご相談やご依頼はいつでも受け付けておりますので、私が製作したフィギュア、またアニメの企画など、私がやっていることが気になる方はいつでもご連絡ください。
  お待ちしております!!