アーティスト紹介

WSC #060 小林和史

[モデリズム]

完成の域にあった世界観の「バージョンアップ」
ベテランにしてまだ進化し続ける揺るぎなき才能

 小林和史という名前を知る者たちにとって、その認識には大きなバラつきがあるのではないだろうか。
 記憶力のよい人であれば「その昔、確か『ホビージャパン』の作例担当モデラーとしてパトレイバーとか作ってたよね?」という感じだろうし、創作系ガレージキットに詳しい人からすると「ああ、『MFLOG』に掲載された『メカトロ中部』の人ね」といったところだろう。さらに、アニメとその業界に詳しい人からすれば、おそらくは「ええっと……小林和史って、ヱヴァの新劇場版で3DCGを担当している人でしょ?」ということになろう。
 まあ、その印象のバラつきの話はじつは割とどうでもよくて―自身の創作系タイトルであるメカトロ中部では確たる世界観を構築し、デザインに関しても造形に関しても「とにかく巧い」と形容するしかないのだが、ただし、そこが小林のストロングポイントであると同時にウィークポイントだと考えていたところがあった。世界観に一切ブレがなく完成度が高すぎるがゆえ、観賞する側が勝手に何かを夢想することのできる余地が乏しく、「作品を誤解したり曲解したりすることが難しい」のだ。これは小林に対する褒め言葉であると同時に、メカトロ中部へのマイナス査定でもある。
 それゆえ、「ただ単に巧い」という才能をピックアップする機会がほとんどない『ワンダーショウケース』とは無縁の存在だとこれまで思っていたのだが、'12年[冬]のワンフェスにて発表されたメカトロ中部の新作“ウィーゴ”を見て、その考えがまるでメンコをひっくり返されたかのように一転してしまった。デザイン&造形的な完成度は以前にも増しさらに高まったものの、観賞する側における解釈の余地が一気に幅広くなっており、「よい意味でどうにでも受け止めることができる作品」へ転じていたのである。小林的には'50~'60年代の日本で製造されたレトロロボットをイメージしているそうだが、『がんばれ!! ロボコン』的な明るい未来像の提示にも見えるし、女性ウケもする雑貨的なフィギュアとして眺めることもできる。この幅広い多様性は、これまでの小林作品には見られなかったものだ。
 そうした事実をわかりやすく表現するために、WSCプレゼンテーション作品としてのウィーゴは、あえて小林のオリジナルの世界観とは正反対とも言えるトンデモなポップカラーを用いてみた。WSCカラー版のウィーゴを通じ、小林作品のクオリティーの高さを再確認すると同時に、小林作品のちいさいようでじつはとても大きな進化にも気付いていただければ幸いだ。

text by Masahiko ASANO

こばやしかずし1970年3月8日生まれ。小学5年生のときに爆発的なガンプラブームを体験し、以降もリアルロボットアニメとそのプラスチックモデルをヘビーにフォローし続ける。専門学校時代には『ホビージャパン』の作例担当モデラーとして活躍したが、そのギャラだけで生活することは到底無理だったため、'91年に造形/映像制作会社へ入社。'96年には3DCG制作を請け負う会社へ転職し独学にてハイエンド3DCGソフトウェア“Softimage”の使い方を覚え、のちにフリーランスとして独立することに。独立後は3DCG製作とカプセルトイの原型製作という二足のわらじにて活動しはじめるが、'05年に『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:序』の3DCGモデリングを依頼されたことをきっかけとし、現在は株式会社カラーのスタッフとして『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q』の3DCGモデリングに身を削る日々を過ごす。ガレージキットの原型製作は'95年から手がけはじめ、'06年より“モデリズム”名義にて創作系ロボット企画『メカトロ中部』を始動。'07年からワンフェスへ本格的な参加をしはじめ現在へ至る。

WSC#060プレゼンテーション作品解説

© モデリズム




© モデリズム


ウィーゴ WSC Color ver.
"Like a KABOOM(パープル)"
&"Too much KAWAIIピンク)"

from 『メカトロ中部』(※WSCアーティスト自身による創作作品)
1/20スケール(全高130mm)カラーレジンキャストキット


商品販売価格
ワンフェス会場特別価格/各12,000円(税込)
ワンフェス以降の一般小売価格/各14,000円(税込)

※カラーレジンを使った多色成型(それぞれ6色)製品という点を鑑み、アーティストとの合議により、品質を安定させるために国内生産を採用しました。結果、他2作品に対し高額な価格設定となってしまった旨をご理解いただければ幸いです


 創作系造形作家としても生業である3DCGモデラーとしても、すでに一定以上の社会的評価を得ている小林和史がWSCに選出されたことに、驚きや違和感を覚えている人もいるかもしれません。その選出理由はアーティスト解説を参照していただくとして、まずはともかくプレゼンテーション作品である『ウィーゴ』(アーティスト自身による創作タイトル『メカトロ中部』に属するロボット)の完成度の高さに注目してみてください。6色のカラーレジンを使った多色成型キットで、組み立ての基本はドリルでの穴開けと同梱されているネジによるネジ留めだけという、ガレージキット初心者にもじつにやさしい設計です(ただし、組み立ての際には市販の関節パーツを別途ご購入していただく必要があります)。成型色はWSCレーベルプロデューサーあさのまさひこがカラーリングデザインを担当し、小林がそのカラーリングをチューニングした、WSC内コラボレーションに基づくもの。パープル主体の"Like a KABOOM"ピンク主体の"Too much KAWAII"の2バージョンが用意されていますので、ご購入時にはおまちがえのないように!

小林和史からのコメント

 永遠の若手のつもりが気が付けばなかなかの年齢になっていました。仕事仲間からは「初老」と呼ばれたり、年齢に見合わないはしゃぎっぷりから「40歳児」と呼ばれてみたり。
 そんな歳不相応な僕にWSC選出のお話です。「え? いまさら僕で? いいんですか?」。はい。よろこんで受けさせていただきます。おめでとう自分。

 ずいぶん昔からワンフェスには出展をしていましたが、ターニングポイントとなったのは2006年夏。量産を考えずにオリジナルロボを作り、日本最大の展示会のつもりでワンフェスに参加しはじめた時です。それからは参加するたびに興味深い話をいろいろといただいてきました。
 今回WSCブランドで販売される『WeGo(ウィーゴ)』。こういう機会もそうそうないなと思い、カラーリングに関してはあさのまさひこ氏に相談しました。その話の過程で「モデリズム路線のカラーリングはいつでも自由にやれるじゃないか」と気付かされ、どうせなら普段の自分からは出てこない配色で行こうと思い、今回のパンチの効いた色になりました。あさのさんに一任してのカラーリングですが、一度OKが出た色に対して蛍光色をエスカレートさせたのは僕……だったかもしれません。はしゃいじゃってすみません。

 僕はオリジナルものをやるにあたって決めたことがひとつあります。「自分が好きなものを作る」。見たことのない形状を生み出そうなんて気負わず、流行を探ることもせず、自分の好きに作っていけば最低でも自分は楽しめるだろう。仕事ではない。自己満足上等。もしそれに賛同してくれる人が出てきたらそれは最高だ。結果、僕はいまとても楽しいです。数年後も「50歳児」と呼ばれながら、楽しんで作っていられればいいなと思います。