アーティスト紹介

WSC #073 カフN

[はこむす]

「魔改造出身」というプロフィールはある意味飾り
ロジックを武器に足りぬデッサン力を補う異端児

 カフNについて語る場合、やはり、まずは“魔改造”なるものの説明から入らざるをえまい。
 魔改造とは、「市販品、もしくはワンフェスなどのイベントで購入した、他者が造形したレジンキャスト製美少女フィギュアキットの服や水着などをそぎ落とし、ヌード姿にて仕上げるエロティックな遊び」のことである。費用対効果で言えば相当に効率の悪い趣味だが、だからこそ、魔改造仲間同士のネット上での横の繋がりは非常に強く、その道の大家に認められたことで、カフNはその道へ一気に傾倒していく。
 が、その後「本末転倒」的な事態が生ずる。
 魔改造製作を10体ほど続けたのち、「魔改造をしてみたいキャラクターのレジンキットが売っていない」という理由から、美少女フィギュアそのもの自体の造形へ着手。最初はワンオフモデルのつもりで製作していたものの、完成が近付くと複製と販売をしてみたくなり、ヌード姿だったフィギュアにあとから服を着せ、'08年末に造形作家&ディーラーデビューを果たすに至ったのだ。
 ここまでの経緯だけでも充分おもしろいが、彼の製作/販売する美少女フィギュアの特色は「トータルパッケージとしてのガレージキットをとことん追求する」という姿勢の部分にある。パッケージイラストを自分で描くだけでなく、過剰に気合いの入った組み立て説明書を付属させ、「これ、じつはレジンキットのほうがオマケなんじゃないの?」と思わせるほどのトータルパッケージングで魅せることを得意とする才能なのだ。
 こう書くと「……ということは、造形自体は大したことがないの?」と思う人もいるだろうが、決してそういうことではない。とくにWSCプレゼンテーション作品となった常月まといは、「目をつむった顔面の造形表現が甘い」というこちらからのダメ出しに対し見事対処。造形作家としての伸びしろがまだまだあることを自ら見事証明してみせたことになる。爆発的なデッサン力の持ち主ではないものの、自らの造形を論理的に分析することでプラス成長させていくことができる希有な才能を有しており、とくに手の表情(手首と指の曲げ方やその角度、しならせ方など)でフィギュアに「演技を付ける」手法は特筆に値するものがある(見方を変えれば、大半の美少女フィギュアの作り手が手の表情に気を配っていない、つまりは「顔面&前髪とおっぱいやお尻にしか注力していない」ということでもある)。
 そう―総じて論理的な造形が欠落しているこの世界において、ロジックを武器にして戦う才能が登場したことを非常によろこばしく思うのだ。

text by Masahiko ASANO

かふ1973年7月26日生まれ。小学校低学年時にガンプラブームの洗礼を浴びた、『コミックボンボン』&『プラモ狂四郎』直撃世代。中学生になるとフルスクラッチビルドに手を染め、『青の騎士ベルゼルガ物語』のブルーナイトなどを製作。同時期、テーブルトークRPGにもハマり、高校ではゲームシナリオやファンタジー小説の執筆も手がけはじめる。大学は人文科学系に進み、小説やその挿絵を描くことに趣味が変化。2年生のときにアニメ研究会へ加入し、ファンタジーコミックの同人誌製作にのめり込んでいく。就職後も同人活動が続くも、'00年、ガンプラのマスターグレードシリーズで模型趣味へも出戻ることに。'02年には魔改造という世界を知り、'07年まで傾倒。その後美少女フィギュア造形に着手しはじめ、'08年12月に開催された『ホビーコンプレックス 06・東京』にて造形作家&ディーラーデビューを果たす。'09年夏からは“はこむす”名義にてワンフェスにもディーラー参加し、以降は毎回新作を1点出品することを目標に作品製作を続けている。

WSC#073プレゼンテーション作品解説

© 久米田康冶/講談社




© 久米田康冶/講談社


僕の前に人は居ない僕の後ろに君は居る

from コミック『さよなら絶望先生』
1/8スケール(全高175mm)レジンキャストキット


商品販売価格
ワンフェス会場特別価格/7,000円(税込)※ワンフェス会場販売分130個限定
ワンフェス以降の一般小売価格/9,000円(税抜)


 元々は“魔改造”から美少女フィギュアの世界に入って行ったという変わり種のカフNは、「パッケージや組み立て説明書を製作したいがために、仕方がなくフィギュアを造形しているのではないか?」と勘ぐりたくなるほど「トータルパッケージとしてのガレージキット」を追求する造形作家です。WSCプレゼンテーション作品用にブラッシュアップされたプレゼンテーション作品『僕の前に人は居ない僕の後ろに君は居る』(コミック『さよなら絶望先生』に登場する和風美少女キャラクター、常月まとい)も例に漏れず、カフNの手によるイラストや漫画も掲載された無意味なほどの完成度を誇る組み立て説明書が付属します(これもまたカフNのデザインによる、袴に貼る花柄や手に持つ本に貼るデカールも付属しています)。
 また、'14年冬のワンフェスにて出品された段階から大幅に改良された顔面パーツや、表情がより豊かになった前髪&手首のパーツも注目ポイント。さらに、「魔改造出身者ならでは」と見ることもできる特殊なパーツ構成は、実際に購入した者のみがこっそりと楽しむことができる「購入特典」と言えるかもしれません。

※カフNからのコメント

 「はこむす」のカフN(かふ)と申します。このような機会をいただけましたこと、大変うれしく思っております。自分が選出されるとは思ってもいませんでしたし、思ったところで狙ってやれることではありません。選出理由にはいわゆる「久米田絵」の再現性が挙げられたとのこと。これもひとえに『さよなら絶望先生』という作品に巡り逢えたこと、かつワンフェスという場での活動を認めていただけたおかげです。久米田先生と講談社さまには、感謝以外の言葉が見つかりません。そしてさまざまなかたちで評価し、活動を支えてくださったすべての方々にも。ありがとうございますと言いたいです。
 その一方で「何故、自分は選ばれたのか?」という疑念は、正直なところ未だに残っています……。お話をいただいたとき、内心、これは荷が勝る、自分は相応しくない、と尻込みしたのも確かです。しかし??この歳でヘタに謙虚になったところで美徳というより臆病なだけ。あたりまえのように何もかもが通り過ぎ、ただ置き去りにされるのみ。最初で最後の機会だろうし、少しでも貪欲に背伸びをしてみようと開き直って、全力でこのお話に乗っかってみることにしました。
 選出作品には修正の指摘もいただきましたが、かつてないほど真剣に取り組んだように思えます。その甲斐あってまた少しよくなったかな、と。自分の伸びしろがまだ残っていそうなあたりにちょっと満足です。
 今回のことで、自分の見る景色が何か変わるのかどうか。まるで予想も付かないですが、目の前にある作りかけの作品に、つねに真摯に取り組むことは変わらず続けたいと思います。