アーティスト紹介

WSC #074 sisiro

[春愁堂]

「独特のデフォルメ」を改めるつもりは一切なし!
我流を貫き通し勝利を勝ち取る「わがままな造形」

 sisiroの生み出す美少女フィギュアは、なんとも言葉にしづらい不思議な魅力に溢れている。シンプルに「上手い(巧い)!」「凄い!」と表現することができない点がじつにもどかしいのだが、本人が極めようとしている造形の方向性に一切迷いがなく、「デッサン力に基づく評価軸とは大きく異なる、こぢんまりとしたキャラクターフィギュアならではのカッチリとした完成度」を目指している(そして、それを成し遂げつつある)というところが非常にユニークであるわけだが、それを他者に説明しづらいところがじつに面倒臭いのだ。「この独特の魅力、わかる人にはわかるだろうけれど、わからない人にはいくら説明してもわからないだろうな……」というあきらめの境地に近いものがあったがゆえ、ここまでWSCの選出を見送ってきたのだが(2年ほど前から選出候補者ではあった)、ここに来ていよいよ「sisiro流の造形作風」が完成の領域に入った感があり、結果、このたびめでたく(?)WSC選出となった次第である。
 WSCプレゼンテーション作品のダンサーに限らず、彼の造形作風は「生理的に苦手」という人が必ず生じる作風だ。それは顔における造形に顕著で、決して下手ではないももの、そのデフォルメぶりは「苦手」を通り越して「気持ちが悪い」と感ずる人もいることと思う。
 ただしsisiroは一貫してそこを改めようとしてこなかったわけだから、つまり彼的には「これで正解」と考えているということでもある。そして、そうした顔のデフォルメ具合を変えぬまま、「なるほどこのデフォルメ法でも、この角度から眺めると元画とそっくりに似せることが可能なのか」という領域にまで持ってきたのだから、これはこれでひとつの勝利のかたちなのだ。
 さらに、「いくら塗装時におけるマスキングの手間が減るとは言え、そこまでこまかくパーツ分割してしまったら組み立ての手間が増えて仕方ないだろうに……」と思わずにいられぬトンデモなパーツ構成もまた、sisiro流。ガレージキットの場合は「パーツ分割やパーツ構成まで含めての作家性」なので、sisiroの場合はキットのパーツ構成もひとつの見どころということである。
 もっとも、この造形作風だとハマるキャラクターとハマらないキャラクターにはっきりと別れる嫌いがあるが、要はそこまで含めての「sisiro流」。それゆえ長打と凡打を交互に繰り返す可能性も高いが、そこもまた彼の魅力であり特徴であると捉えるべきであろう。

text by Masahiko ASANO

ししろ1977年2月24日生まれ。小学2年生のときにガンプラブームの洗礼を受けた『プラモ狂四郎』世代。その後もガンプラとファミコンをはじめとしたゲームに夢中になり続けるが、将来的にプログラマーを目指すことに決めたため理系に進んだこともあり、高校入学以降は模型趣味を封印しゲーム趣味専門に。大学~大学院は情報工学科に進みWindows 95用のゲームソフト製作に興じるも、いくつかの挫折を経験し、模型趣味の世界へ出戻ることになる。その後、「フィギュア造形ならばやりたいことが表現できるのではないか」という考えに至り、結局大学院は中退。'00年夏のワンフェスより一般参加をはじめたところ、会場の空気感にあてられ、'05年夏より“春愁堂”名義にてディーラー参加を開始する。その後もコンスタントに参加を続け、'13年には原型製作を手がけた『魔女と百騎兵』のメタリカ&百騎兵がアートスピリッツから製品化されている。この先はフィギュアメーカーからの仕事をこなしつつも、ワンフェスなどのイベントメインでの活動をイメージしているそうだ。

Webサイト http://www.shunshudo.com

WSC#074プレゼンテーション作品解説

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ダンサー

from ニンテンドー3DSソフト『世界樹の迷宮IV 伝承の巨神』
ノンスケール(全高114mm)レジンキャストキット


商品販売価格
ワンフェス会場特別価格/8,800円(税込)※ワンフェス会場販売分100個限定
ワンフェス以降の一般小売価格/10,800円(税抜)


 個性的でおもしろさが強い反面、癖が強くて好く人を選ぶ、独特な顔のデフォルメがsisiro作品における最大の特徴。さらに、「そこまでこまかくパーツ分割する必要が本当にあるのか?」と疑問に思うほど、全高わずか114mmのフィギュアを85パーツ(!)にも分割する過剰なスタイルも彼ならではの個性と言えます(ある意味、「わざわざ組み立てる必要がない」というか、「未組み立て状態で保有することが正しい楽しみ方なのではないか」とまで思わせるものがあります)。
 プレゼンテーション作品の『ダンサー』(ニンテンドー3DSソフト『世界樹の迷宮IV 伝承の巨神』に登場するキャラクター)は、多数の透明レジンパーツを駆使しキャラクターデザインの魅力をそっくりそのまま3D化した逸品。元画のタッチとsisiroの造形作風が驚くほどしっくりとシンクロしており、躍動感がありつつも透明感の高い雰囲気は非常に魅力的。ちいさなサイズの中にぎゅっと凝縮された、繊細にして緻密なディテール表現をお楽しみください(腰まわりのパーツに貼る花柄のデカールが付属します)。

※sisiroからのコメント

 どうもはじめまして、今回『ワンダーショウケース』に選出していただきました春愁堂のsisiroと申します。ディーラー歴はもう9年ほどになりますから自分でもびっくりです。
 ダンサーはゲームソフト『世界樹の迷宮』の立体化作品として5作目、作品全体では20作目になります。考えてみると5年前から版権作品は(依頼されて製作した一般商品用原型を除いて)『世界樹の迷宮』の立体化作品しか作っていません。
 飽きっぽい自分がなぜこんなに続けていられるのか。
 それはもう当然のこととしてゲーム自体のおもしろさとイラストレーター日向悠二氏の描かれる魅力的なキャラクターデザインにあるわけですが、もうひとつの理由があります。
 おもしろさとは別に、多くのゲームはゲームをプレイしているときとそうでないときの区別が割とはっきりしているものですが、キャラクターメイキングとパーティー編成がゲームのおもしろさの核になっている世界樹の迷宮はそこが構造的にかなり「ゆるい」のじゃないかなと思っています。キャラクターメイキングは「スキル振り」という要素もありますが、キャラクターのプロフィールに関しては完全にもう「妄想」なので、実際にゲームを遊ぶ必要はありません(笑)。
 そういうゆるい構造があるので、フィギュアを作っているあいだは当然ゲームができませんけど、でもそれがゲーム自体からまあそこそこ肯定されている気がして、作り続けて来られたのかななどと思っています。
 そしてディーラーとしてここまでやってくることができたのは、さまざまなかたちで応援していただいた方々のおかげです。ありがとうございました。今後ともよろしくお願い致します。