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WSC #077 なかた
[Nautilus]
「美少女+殺戮兵器」という陳腐さから滲み出る
最後のアナログ造形にかける漢の本気さ具合
たとえば『DAICONⅢ』('81年)や『同Ⅳ』('83年)オープニングアニメを初めて見せられたときの、「……あ~、やっちゃっていいんだ、コレ!」感。
これとある意味同様の、『キル・ビル』('03年)や『エイリアン2』('86年)などを見せられつけられたときに覚えた、「……ああ、日本だけでなくハリウッドにやらせちゃってもいいんだ、コレ!?」感。
そういった'80年代初頭から脈々と流れ続ける「(大抵の場合はかわいい)女の子+殺戮兵器」というある意味この上なく陳腐なシチュエーションを、当時からリアルタイムで見続けてきた男が極めて真摯にそれを創作フィギュア化し続けている。であればそこにある種の羞恥心を覚えてもおかしくないと思うのだが、その男は「なぜそれらと自分の作品を同系列で見比べられるのかが真剣にわからない」と真顔で語るのだ。
「DAICONⅢもⅣも当然ながら大好きでしたが、'80年代以降ぼくはアニメを熱心に見ていません。ただ、それでも深夜アニメを中心に眺めていると、基本『いまでもかわいい女の子が武器や特殊能力で戦うのって一定の人気があるんだろうな』と思うわけです。つまり、ぼくは別段アニメ世界における武器と女の子の組み合わせに興味はないのですが、ぼくの好き嫌い以前の問題で『それ』がそこに存在するという事実なのです。
ただし、です。
ぼくは、というかディーラー・Nautilusとしては『よく売れること』を第一義に置いてきました。その上で大型の武器は造形技術のアピールとして絶好のものだという認識は、作る側からも、あるいは買う側からも一定の理解を得ていると考えています。
そしてデジタルとアナログの過渡期後半であるいま、急いで《武器もの》をやらなければ、今後どんなに複雑な造形でも売り上げには繋げられないだろうという認識がぼくの中で大きくあったわけです。
ぶっちゃけぼくはオタクではありませんし、その世界のことがよくわかっていないのかもしれないとは思います。ぼくのこの認識はまちがっていますか? 正直申し上げてあさのさんがそこまで“かれん”らに否定的な意見を持たれる理由が、(メールのやり取りで)ここまで聞いても自分では本当によくわからないのです」
……うん。いいじゃないですか、こんなおかしな人がひとりやふたりいたって。それこそがワンフェスというイベントの包容力の大きさであり、こうした特殊な才能が一気に頭角を現す可能性を秘めているわけだから!
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text by Masahiko ASANO |
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なかた●1970年10月10日生まれ、北海道出身。19歳で上京後、数年間のフリーター生活を経て20代半ばで写真関係の企業に就職。仕事自体は好きだったものの給料の安さに辟易して転職し、水産卸関係の企業に'07年まで勤務するも、今度は勤務先が解散。本来なら次の仕事を探すべきところで、当時ガレージキットに興味をもっていたことから「お金も貯まったことだしここらで一発勝負を掛けてみるか!」とプロ原型師を目指すことに。当初、処女作として綾波レイを手がけるが、完成は2011年まで待つことになる。“Nautilus”名義にてワンフェスに初ディーラー参加した'08年夏は、先に完成した別作品を持ち込むもひとつも売れずに己の力不足とワンフェスの厳しさを痛感。その後、購入層の嗜好や傾向など、独自の分析を行いつつ、試行錯誤を繰り返しながら、自らの創作作品『N/A』シリーズを製作するに至る。いわゆる“キャストオフ”仕様ながらA~AAカップのバストとブラの食い込み表現、下尻のボリューム感の秀逸さは目を見張るものがあり、「武器」「黒猫」以上の見どころと言うこともできるだろう。
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WSC#077プレゼンテーション作品解説 |
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N/A
from 『N/A』シリーズ(※WSCアーティスト自身による創作作品)
ノンスケール(全高225mm)レジンキャストキット
■ 商品販売価格
ワンフェス会場特別価格/12,000円(税込) ※ワンフェス会場販売分100個限定
ワンフェス以降の一般小売価格/14,000円(税抜)
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かれん
from 『N/A』シリーズ(※WSCアーティスト自身による創作作品)
ノンスケール(全高320mm)レジンキャストキット
■ 商品販売価格
ワンフェス会場特別価格/13,500円(税込) ※ワンフェス会場販売分100個限定
ワンフェス以降の一般小売価格/16,000円(税抜)
「JK(女子高生)」「セーラー服」「殺戮兵器」「黒猫」、そしていわゆる“キャストオフ(塗装して完成させたのちの脱衣が可能なキットフォーム)”仕様。「'10年代中盤にもなって、いまさらこんなベタな……」と苦笑したり頭を抱える人も少なくないはずですが、作者自身による創作タイトルであるこの『N/A』シリーズは、「モチーフはモチーフ、造形は造形」と割り切って鑑賞することを強くお勧めしたく思います。レジンキャスト成型によるパーツ肉厚を差し引いても成立する驚異のA~AAカップのスレンダーな肢体(ここまで細身の女の子にこだわった造形を見たのは和製萌え美少女フィギュア発生以来初めて!)をはじめとする数々のフェティシズム表現をはじめ、「……なぜいまこの時代にこんな大きなライフルをアナログで造形するかな!?」と思わずにいられぬ武器のクオリティー、均一化され造形表現に対する冒険心が消失してしまったいまの時代に反抗するかのような顔面の独特の立体表現など、じっくりと眺めはじめると1体に対し1時間はかかるほどの高情報量に圧倒されてみてください。また、「かれん」キット内にはライフルをより精巧に仕上げるための透明樹脂パーツ(スコープ部)、精密ネジ、アルミ線、プラ棒も付属します
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※なかたからのコメント |
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『N/A」』のシリーズをはじめた理由でいちばん大きかったのは、アニメキャラ原型の申請を蹴られたことでした。数ヶ月かけて作ったものを売りに出せないとなれば、ウチとしてはかなり痛いワケです。
その頃「……アニメのヒットとキットの売れ行きって何の関係もなくねーか?」と考えはじめていたことも相まって、「だったらオリジナル(創作キャラクター)でやったるわ!」ということになりました。
「アタマにきた。ざけんなよ。かたやエロだろうがグロだろうがお咎めなしのジャンルがあるってのに、なんだよこの仕打ち!?
……よしわかった、いいだろう。そっちがそのつもりなら、もうアニメ版権なんぞ知ったことか!」
……とは言えそれまでオリジナルなんて考えたことないですから、どうしたらいいんだかさっぱりで何ひとつ思い付かなくて。そんなときふと浮かんだのは僕のかつてのアイドル、クエンティン・タランティーノの『キル・ビル』でした。オマージュに満ちたあの痛快復讐劇。「よし、これだろう!」と。
布袋ギターのリフを脳内再生しながら「パクリ? ありきたり? うるせえ。やりたいようにやってやる。当然キャストオフ仕様だろ。パンツひとつ自由に作らせてもらえないアンタにゃできないことを全部やってやる。……よし、刀だな。理由? かっけーから。それと猫だろ。なんで? かわいいから。やりたいから。誰にも文句は言わせねえ!」と、勢いだけでデザインを考えました。技術的にもありったけを注ぎ込んで製作して、こうしてWSC選出という結果も残せたいま、ぼくの馬鹿げた復讐劇も終幕を迎えたように思います。“N/A”も“かれん”も、生まれた経緯はどうあれ紛れもないウチ発信のキャラクター、今度はもっと違った方向へも広げてみたいと考えています。
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