アーティスト紹介

WSC #079 のら

[RUMKANDIS]

「絶対色彩設計感」と「絶対立体把握感」の両立
マスコットキャラクター造形と侮ることなかれ!

 絶対音感、という言葉を耳にしたことがある方は多いと思う。聴き覚えの音楽を簡単に楽譜化できる、雨だれの音や冷蔵庫の振動音などがドレミなどの音名で聞こえてしまう等、たとえ音楽家を生業にしていたとしても全員が有しているわけではない一種の特殊能力だ。これと同様に、似たような言葉にたとえるならば「絶対色彩設計感」や「絶対立体把握感」というものが絵画やデザイン、造形の世界には存在している。“のら”の作品を最初に目にしたときに感じたのはまさしくこのふたつで、作者=女性であろうと一瞬で悟ったのと同時に、「おそらく職業はグラフィックデザイナーに違いない」「この人の目には2D絵の最適解としての立体像が見えているに違いない」ということだった。
 近年はこうした資質を前面に押し出す作風の造形作家が少しずつ見受けられるようになってきているが(なお、その大半が女性なのがおもしろいところなのだが……)、このふたつの要素を高次元で成立させ両輪化している人はまだまだ少なく、さらに言うと、仮に絶対立体把握感を有していてもそれをそのまま正確な姿で3Dにアウトプットすることができるかどうかはまた別の能力を必要とするので、そうした意味で、のらの(彩色まで含む)造形感覚は非常に高次元なバランスの上に成り立っていると言えよう。
 「ワンフェスにディーラー参加してガレージキットのフィギュアを発表する」というと、近年においてはその“あがり”の姿は、フィギュアメーカーからのスカウト=プロ原型師への道か、自己作品がフィギュアメーカーからPVC製塗装済み完成品として製品化されることがいちばんイメージしやすいだろう。もちろんのらにもそうしたチャンスが巡ってくる可能性は決して低くはないと思うが、たとえばその昔銀行へ行くともらえたノベルティーのソフトビニール製貯金箱や薬局でもらえたソフトビニール製指人形など、そうした「プロダクトとしてはいささかチープだが、ただし極めて正確な姿で3Dにアウトプットされた企業マスコットの原型製作を担当する」といった仕事が彼女に巡ってきたらとても愉しい、というか「時代の造形感覚が豊かになる」と思うのだ。
 残念ながらそうした仕事を彼女に対しブッキングする人脈もルートもぼくは持ち得ていないのだが、のらに関しては「3年後ぐらいにばったりと再会した際に、ぼくが想像していたイメージとはまったく異なる方向性で大成していたらうれしいな」と感じてしまうユニークな才能の持ち主であることはまちがいないのである。

text by Masahiko ASANO

のら1981年3月21日生まれ。中学~高校時代に『新世紀エヴァンゲリオン』をきっかけとしてアニメや漫画にのめり込みはじめ、通っていた高校~短大が美術系の学校であったため、友人たちといっしょに同人誌やグッズなどを製作しコミケをはじめとした同人誌即売会系イベントに多数参加する。同時期にプライズやガチャ、食玩などのフィギュア収集にハマり、短大卒業後はアルバイトというかたちでバンプレストへ入社。同社では『カピバラさん』の商品開発グループに所属、そのうちに「自分たちで作ったキャラクターを自分たちの手で立体化してみたい」という思いが募りはじめ、模型の王国が主催する『模型塾』に通いフィギュア&ガレージキット造形のイロハやワンフェスの仕組みなどをひととおり学習することで、'06年冬、女性5人組により“RAMKANDIS”名義にてワンフェスへ初ディーラー参加を果たす。なお、そののちバンプレストを退職し、雑貨メーカーで開発の仕事を2年間経験し独立、現在はあみあみでフィギュアのパッケージデザインなどの仕事を担当している。

Webサイト http://rumkandis.com/blog/

WSC#079プレゼンテーション作品解説

© ParaPhray/nene


© ParaPhray/nene


ジュラちゃん

from コミック『じゅらぱに!』
ノンスケール(全高65mm)レジンキャストキット+専用ラバーコースター製台座


商品販売価格
ワンフェス会場特別価格/4,500円(税込)※ワンフェス会場販売分100個限定
ワンフェス以降の一般小売価格/5,500円(税抜)


 「女性アーティスト5人組」という非常にめずらしいアマチュアディーラーである“RUMKANDIS(ラムキャンディス)”に属する“のら”のプレゼンテーション作品となる『ジュラちゃん』(雑誌『キャラさがしランド』連載中『じゅらぱに!』の主人公)は、迫力溢れる造形やほとばしるデッサン力などに惹かれる人たちに対してはどこがどうすごいのか説明しづらい反面、色彩感覚やグラフィックデザイン性に長ける人からすると「……なるほど!」と感ずるであろうかわいらしくもハイクオリティーな逸品。その「すごさ」に対する詳細な説明はアーティスト解説文に譲るとして、まずはマスコットモデルとしての存在感の高さと、隙がまったく存在しない「2D絵の最適解=3Dとしての模範解答」と称するしかない(つまり、もうこれ以上どこにも手の入れようのない)完成度の高さに注目してみてください。
 また、原作者と版権元の許諾を得てお借りした版権画を素材とし、ジュラちゃんが大好きなお肉をデザインモチーフに用いた、のら自らがプロデュースしたラバーコースター製の専用ベース(台座)と、3色対応用の瞳デカールが付属します。

※のらからのコメント

 こんにちは、RUMKANDISの“のら”と言います(最近は村長と呼ばれてます)。この度はWSCという歴史のある公式レーベルに選出していただけましたこと、大変光栄に思っています。
 賑やかなことが大好きで、好奇心旺盛なわたしは、コミケやGEISAIなどさまざまなイベントを経てワンフェスに辿り着きました。模型塾で出会った、全員酒のみ・フィギュア好きの女性5人組が集まり、9年程前にRUMKANDISを結成、ディーラーとして活動をはじめ、「つらい……でも楽しいでもやっぱりつらい!」という中毒性のあるワンフェスの魅力に取り憑かれ、いまではすっかり常連です。
 今回、モチーフにしたジュラちゃんは、わたしが好きなブランドのTシャツがきっかけで知りました。ジュラちゃんのストーリーや世界観は何ひとつ知らなかったのに、顔、色合い、フォルムの可愛さに一目惚れしました! フィギュアというより雑貨に近い、玄関や窓辺にちょこっと飾っておけて気持ちがほっこりするような……そんなかわいいものが作りたいと思い、自分の中のありったけの“推し心”をジュラちゃんに込めました。
 そのジュラちゃんを選出していただいたということは、わたしの創作の方向性がこっちだったんだな……と改めて自覚することができました。
 今回の選出は、自分にとってとても意味のあるできごとになったと感じています。
 最後になりましたが、今後も自分のペースで作りたいものを作り、同時にいろんなことに手を出しながら愉しく活動していく予定です。


- Special Thanks -
RUMKANDIS:八巻・yosh・ちだけいこ・暁
模型塾:東海村原八さん
お友だちのみなさま、家族...Thank you always