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WSC #086 pate
[ぱてごねや]
'80年代中盤的フィギュアの「ガラパゴス的進化」
時間軸の狂った最新型の造形に刮目すべし!
のっけから否定的としか受け取れないようなことをズバリと書いてしまうが、pateの美少女フィギュア造形には目新しい表現はほぼまったくと言ってよいほど存在していない。もちろん平均的なアマチュア造形作家と比べればさまざまな意味において確実に上手いには上手いのだが、たとえば顔の面構成などは昨今のメリハリを利かせた3DCG的な造形に比べれば明らかに時代遅れだし、とくに開いた状態の口の造形などは「ただただ三角錐状に彫り込んだだけ」であって、流行り廃りのそれで見れば「'80年代中盤における黎明期的な美少女フィギュア造形の古臭いスタンダードそのものズバリ」でしかない。
唯一にして最大の特徴は「なぜ1/12などという小スケールのフィギュア(ベースを含まぬ全高でたかだか120mm程度)でここまで髪の毛の細密表現にこだわるかな!?」というところにあり、pateに対し話しかけてくる一般来場者は「これってデジタル造形ですよね?」と勘違いする人が多いらしい(つまり3DCGツールを用い全高250mm程度の設定でモデリングしたあと、それを全高120mmほどに縮めて立体出力していると考えたほうが自然に見えるということである)。が、実際には「ポリエステルパテで途中までそれを造形し、一度シリコーンゴム&レジンキャストにて髪の毛のパーツを複製、そうそう簡単にパキパキ折れない(レジンならばしなり剛性が高い)状態に置換したのち細密表現にこだわっているだけ」だそうで、繰り返しにはなるが、彼の超アナログチックな造形にはあえて注視するほどの目新しいファクターはまったくもって存在しないのである。
が、それでもぼくがpateの造形に数年前から注目し続けていたのは、'80年代中盤的な古臭い造形作風にも関わらず、それがそのままのスタイルを維持したまま日本刀のように研ぎ澄まされガラパゴス的進化を遂げた姿に見えはじめたからだ。つまりは「最新型の'80年代中盤的美少女造形がここにある」というわけである。
つまりはそれこそがpateにおけるストロングポイントであり、さらに、ここ最近急成長を遂げているダイナミックな空間構成能力を見るに至り、WSCアーティストへ選出すべきだという考えに達したというわけだ。
ということでまずはともかく、可能ならばワンフェス会場でぜひともpateのプレゼンテーション作品を生で多方向から眺めてやってほしい。とくにアラフォー以上の美少女フィギュアファンならば、「……あ~、なるほどね!」と納得していただけること必至だと思うのだ。
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text by Masahiko ASANO |
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ぱて●1970年1月30日生まれ。小学校高学年時にガンプラブームを体験、以降、リアルロボット系とAFVのプラスチックモデル製作に勤しむ。その後はゲームにハマり、さらにコンピュータ専門学校へ進学するため地元愛媛から大阪へ移住した際には模型製作道具を実家に残してきたため、大阪在住時はもっぱらゲーマー的な生活を過ごす。そして同校卒業後に愛媛へ戻り地元のコンピュータ系企業に就職するのだが、さまざまな職種を転々とし最終的には建設関連の自営業に落ち着くことになる。模型製作は社会人になったのちに再開、ワンフェスやJAF・CONの存在を知り「一度行ってみたい」と思うも、一般参加者として長蛇の列に並ぶことがイメージできず「ならばディーラーとして参加してみよう」と決意。その後、綾波レイやセーラーマーズなどのワンオフ習作を経て、'08年夏に初の一般参加を経て、'09年夏より“ぱてごねや”名義にてディーラー参加を果たす。プロ原型師になりたいという夢こそあれ「元絵に忠実に似せる」という自信が持てずにいるため、本人的には悶々とした思いが抜け切れずにいるようだ。
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WSC#086プレゼンテーション作品解説 |
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プリズマ☆イリヤ サファイヤVer.
-WSC Edition-
from TVアニメーション『Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤ ドライ!!』
1/12スケール(全高135mm)レジンキャストキット
■ 商品販売価格
ワンフェス会場特別価格/12,500円(税込) ※ワンフェス会場販売分80個限定
ワンフェス以降の一般小売価格/16,500円(税抜)
この広報用写真だけを見たら「……まあ、もちろん上手いには上手いけれど、でもコレがWSCに選ばれるような作品なの?」と思う人もいるかもしれません。ただしコレがわずか全高120mm程度のカプセルトイクラスの作品だと知ったとき、貴方はどう考えるでしょうか? '80年代中盤的な(ある意味「古臭い」としか表現しようのない)美少女フィギュア造形黎明期のテイストを残しつつも、それをハードエッジにまで突き詰めた造形──それがpateにおける造形作風の最大の特徴と言えるでしょう。
プレゼンテーション作品となった『プリズマ☆イリヤ サファイヤVer.』(TVアニメーション『Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤ ドライ!!』のヒロイン)は、過去に彼が発表した同作品をWSCに向け大幅にヴァージョンアップを図った意欲作。とくにスカートのフリルに関してはゼロから完全に作り直したリニューアルぶりで、結果、「360度どの角度からも眺めまわしても楽しい」といった彼の空間構成能力が誰の目にも見て取れる作品に仕上がっています。それゆえにぜひとも、その密度感をワンフェス会場で体感してみてください。
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※pateからのコメント |
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初めまして、“ぱてごねや”というディーラーを営んでいるpateと申します。
ノリとイキオイだけで作っているので、皆さまに堂々と話せるようは高尚な意はありません。ですので、サイズの話をしようと思います。
1/12スケールという、いま現在における美少女フィギュアの平均的な大きさよりひとまわりちいさいサイズで造形してます。デジタル作家の方々の造形が小サイズ化してきているからでしょうか? 最近、よく「デジタル造形ですか?」と尋ねられますが、完全なアナログ造形です。ポリエステルパテやレジンキャストの削り出しです。
以前は一般的な1/8ぐらいのスケールで造形していたのですが、自分的にはサイズが大きく感じられたためひとつの作品を仕上げるまでの時間が段々と長くなってきてしまったた上、部分的にレジンキャスト反転した仕上げ用の二次原型パーツの作成により費用が嵩むようになり、時間増&費用増を小サイズ化で減らそうと考え、その結果、作品がちいさくなりました。
……が、どちらも未だに実らず目論み外れです。
「ちいさくすると完成が早くなり、作品数と展示品が増えて卓が華やかになる!」とも考えていましたが、未だそれも叶わず寂しい卓のままです。目立たない卓のちいさい作品ですが、見ていただいけている方には見ていただいていたようで、このたび『ワンダーショウケース』アーティストに選んでいただきました。
最後に、応援してくださいました皆さま、版権元さま、ワンフェススタッフさま、皆さまのおかげで続けてくることができました。本当にありがとうございます。この場をお借りして御礼申し上げます。
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