アーティスト紹介

WSC #087 クッカ

[クッカ]

6年の刻を経て《万年WSC候補》の呪縛から解脱
ようやく見つけ出した「自分にしか紡げぬ線と面」

 横山 宏による『マシーネンクリーガー』等により造形マニアのあいだでは広く知られる手法だが、世には「造形による立体検証を同時進行させていきながら仕上げるメカニックデザイン」というものが存在する(竹谷隆之による『シン・ゴジラ』なども、その対象が怪獣ではあるもののほぼ同様の手法にて仕上げられたデザインに分類される)。その利点は「頭の中や二次元の画でイメージしていたデザインを立体検証する際に、よりベターな線や面を偶然紡ぎ出すことができたときには三次元上でどんどんデザインを変更していくことが可能である」「立体検証中の造形物は手に取りさまざまな角度から眺めることが可能なため、頭の中や二次元の画ではイメージし切れていなかった新たなデザインへと改変していくことが容易にできてしまう」といった点にあると言えよう。
 もちろん、3DCGモデリングがここまで進化してきたいまならば、PC画面内で立体検証を行うこともすでに可能だ。ただし今回クッカのプレゼンテーション作品となったFQ-117ほど複雑なデザインになってくると、PC画面内で立体検証していると逆に何がなんだか分からなくなってしまうのではないだろうか? そう素直に思わせるほど本作では本当に久々に、「アナログ造形に基づく立体検証を120%生かし切ったハイレベルなメカデザイン」を見せつけられたように感ずるのだ。
 もっとも、クッカが次期WSCアーティスト候補としてセレクトされたのは彼が初ディーラー参加を果たした'11年冬で、以降、じつに6年ものあいだ《万年WSCアーティスト候補》としての年月が流れ続けていたことになる。
 創作系メカのガレージキットというのは相当にニッチな世界なので、ほんの僅かでも「コレって○○○さんのメカデザインにどことなく似ているよね」と感じさせてしまう要素が含まれていると、その時点ですでに「負け」を意味してしまう。さらに言えば、わざわざ立体検証を行ったぶんだけの「……なるほど!」的な要素が最終的なメカデザインから見て取れない限り、どうしてもマスターベーション的な作品として判断せざるを得ない。
 そういう意味では「ニッチなくせにやたらと敷居だけが高い創作系メカのガレージキット」でクッカがこのレベルにまで辿り着けたのは、己のウィークポイントが6年前からしっかりと見えており、そしてそれを潰していく努力を延々と行い続けた結果と言えよう。
 ニッチなジャンルならではの奥深さとおもしろさを、こうした分かりやすいかたちで皆に見せつけてくれたクッカに対しぼくは大いに感謝している。

text by Masahiko ASANO

くっか1975年4月8日生まれ。小学生の低学年期から模型製作を「絶対的な趣味」とし、数々のキャラクターモデルを組み立て続ける。そして中学1年生のときに海洋堂やコトブキヤのレジンキャストキットと出会い、以降はガレージキットの購入とその製作に傾倒。当時は福島県在住だったのだが、中学2年生の夏休みに家族旅行で東京へ出かけた際、家族が東京ディズニーランドで遊んでいる合間に「こんな好機は二度とない!」とばかりに浜松町の東京都立貿易センターにて開催されていたワンフェスに一般参加者として来場するに至る。その後大学は関西にある学校へ進学したため、海洋堂やボークスに入り浸り「夢のような生活」へと転じたのだが、将来的にグラフィックデザイナーになりたい気持ちが募り大学卒業時にはあえて就職せず、1年間の浪人期間を経て東京へ移住し『桑沢デザイン研究所』へ入学。同校卒業後は目標どおりグラフィックデザイン会社へ就職したものの、WSC#011 掘林 正の手がけた創作系メカ造形に感銘を受け、「自分もその道へ進もう」と決意。結果、’11年冬のワンフェスより“クッカ”名義でディーラー参加をスタートさせ現在へ至る。

Webサイト http://qucca.blog129.fc2.com

WSC#087プレゼンテーション作品解説

© クッカ




FQ-117

from WSCアーティスト自身による創作キャラクター
ノンスケール(全高160mm)レジンキャストキット


商品販売価格
ワンフェス会場特別価格/18,000円(税込) ※ワンフェス会場販売分30個限定
ワンフェス以降の一般小売価格/22,000円(税抜)


 ワンフェスでのディーラー活動をスタートさせた'11年冬以降、一貫して“創作系メカ”というニッチなジャンルにこだわり続けてきたクッカ。そしてじつはその'11年冬のワンフェスにおいていきなり次期WSCアーティスト候補にピックアップされたものの、実際にWSCアーティストに選出されるまでじつに6年の年月を費やした苦労人でもあります。
 が、前回のワンフェスにて発表され、今回プレゼンテーション作品となった人型戦闘機『FQ-117』は、それを見た瞬間に「……ついに来た!」と一発で確信させられたほどのオリジナリティーに溢れたハイクオリティー作品。実物を生で眺めれば、「どうしたらこんなにも多層的で複雑怪奇な(それでいて抜群に格好よい!)デザインが思い付くんだ!?」と思わず唸らされること請け合いです。また、創作系作品ゆえに明確なカラーリング設定などは存在しませんが、生業であるグラフィックデザイナーの資質を十二分に生かしたそのカラーリングセンスもクッカのストロングポイント。背面部分の同型ユニット3箇所に施された効果的な差し色が、作品を引き締め盛り上げているあたりも要注目ポイントと言えるでしょう。

© クッカ


© クッカ


※クッカからのコメント

 初めまして、今回『ワンダーショウケース』に選出して頂いたクッカと申します。ワンフェスの中ではオリジナルメカというニッチなジャンルのディーラーです。多くのディーラーの方々の作品の数々に感銘を受け、自分でも製作をしたくなり6年前から架空のロボットなどでワンフェスに参加しています。
 アニメ・実写・ゲーム・漫画などジャンルを問わずSFメカはなんでも好きです。もちろん、それらのメカを作るのも私自身とても楽しいのですが、いま、造形していていちばん楽しめているのがオリジナルメカの製作のようです。大好きな作品のメカも作りたいのですが、模型に使える時間はあまり多くないので、今後もオリジナルメカで続けて行こうと思っています。
 製作は稚拙なスケッチを描く場合もありますが、基本的には作りながら形を決めていきます(自分なりですが3次元的・模型的見どころを考えながら作っています)。概ねシルエットができたところでこのまま仕上げるかどうか決めるのですが、残念ながらその時点で失敗になることも少なくありません。効率は悪いのですが、おおよその形ができるまで考えながら作っているのがいちばん楽しい時間なので仕方ありません。
 また、いままで作ったものを通しての統一した世界観や設定があるわけではなく、どちらかというと、毎回作るときに思いついたアイディアやイメージが先にあり、それに合わせて設定や背景を考えています。
 引き出しは少ないですが、毎回見ていただいたとき「前回とはちょっと雰囲気が違うな」と思っていただけたら幸いです。
 それでは、今後ともよろしくお願いします。