アーティスト紹介

WSC #090 あかちょむ

[苺MilkTea]

そのキャリアにまったく見合わぬ「絶対的な人気」
弱冠22歳にして一気に頂を目指すことが可能な逸材

 '17年2月開催のワンフェス終了後、次期『ワンダーショウケース』アーティストの有力候補となっていた“あかちょむ”。そんな彼女から2月下旬にWSCへ自薦メールが届くことになるのだが、諸般の事情から前期=第33期WSCへ選出することは叶わず、「もしも次回作が再びWSC選出基準へ達していた場合は自薦を受け入れる」という条件の下、今回のプレゼンテーション作となったジャンヌ・ダルク・オルタ・サンタ・リリィが造形され、そして彼女は見事晴れてWSCアーティストの座をゲットすることに成功した。これまでにWSCへ自薦メールを送ってきてくれた方は10名ほど存在するが、こんなにも易々と決して低いとは言い難いハードルをクリアして見せてくれたこと自体がまず驚きだが、昨春代々木アニメーション学院大阪校のフィギュア科を卒業したばかりの弱冠22歳だという点にも驚かされた。そしてそれ以上に驚かされたのが、22歳という若さにして彼女はいわゆる《◯◯顔(◯◯の部分にはその作者の名前が入る)》などと称される「自分にしか造形することのできない個性的な顔の造形」を早くも確立し武器として用いていることだ。
 この《◯◯顔》はときに「◯◯氏はどんなキャラを造形しても皆同じ顔をしている」という揶揄の対象となることもあるわけだが、ただしその《◯◯顔》が魅力的で買い手の財布の紐を緩ませるようなものであれば、ガレージキットにおける美少女フィギュアの世界においては強力な武器と成り得る。もちろん、フィギュアメーカーから製品化されるPVC製塗装済み完成品フィギュアの原型製作時には(いまどきの版権元は大抵が設定画に似ていることを第一義とするため)この手法を投ずることはまずできぬわけだが、当日版権を利用したワンフェスのような場ではそうした心配はほぼ無用。実際のところあかちょむもその現実はきちんと理解しているようで、「仕事としての原型製作」と「イベント用の原型製作」では早くも作風を使い分けはじめている。そうした器用さ具合もまた、この先の造形活動における彼女のストロングポイントに繋がっていくはずだ。
 そしてすでに、あかちょむは自身のキャリアにまったく見合わぬほどの人気を水面下にて築き上げている。このまま驚くべき成長曲線を描き続けていけばおそらくこの先、美少女フィギュア系造形作家としては“十傑”と称されるレベルにまで登り詰めてくれるのではないだろうか? そういった期待を本気で抱かせてくれる、「即戦力」などという安直な言葉では括ることのできぬ新進気鋭な女性プロ原型師の誕生である。

text by Masahiko ASANO

あかちょむ1995年9月2日生まれ。小学生のときから手先が器用で、両親にミニチュアフード製作の指南書を購入してもらい、クラスメイトからリクエストを募りミニチュアフードを作成しプレゼントすることを趣味としていた。なおアニメ的なものにはまったく興味がなかったのだが、中学2年生のときにボーカロイドが流行り、初音ミクの虜に。結果、ミクの『ねんどろいど』を購入したことで「オタクっぽくてちょっと……」と距離を置いていた美少女フィギュアに開眼、高校1年生のときからインターネットでフィギュア造形のことを調べはじめ、造形を生業にすることを前提として高校卒業後は1年間アルバイトで貯金をし、代々木アニメーション学院大阪校のフィギュア科へ入学。同校在学時の'16年冬のワンフェスから“苺MilkTea”名義でディーラー参加しはじめ、'17年冬に発表した『艦隊これくしょん -艦これ-』のプリンツ・オイゲンをもってフィギュアメーカー4社から声をかけられ(その後まで含めると10社を超えたという!)、すでにプロ原型師としてのキャリアをスタートさせている。

WSC#090プレゼンテーション作品解説

© TYPE-MOON/FGO PROJECT




ジャンヌ・ダルク・オルタ・サンタ・リリィ

from スマホ用ソーシャルゲームアプリ『Fate/Grand Order』
ノンスケール(全高180mm)レジンキャストキット


商品販売価格
ワンフェス会場価格/18,000円(税込) ※ワンフェス会場販売分40個限定
※諸般の事情により、一般販売は行われません

完成見本製作/Aizer


 「おそらく今冬のワンフェスが終了するころには、美少女フィギュアファンのあいだでその名を知らぬ者はほとんどいない」という存在にまで一気にブレイクしているであろう新進気鋭の女性プロ原型師──そうした存在が“あかちょむ”であり、このようなタイミングで彼女をWSCへ選出することができたことを我々的にも非常に光栄に思います。
 そんなあかちょむのプレゼンテーション作品である『ジャンヌ・ダルク・オルタ・サンタ・リリィ』(スマホ用ソーシャルゲームアプリ『Fate/Grand Order』に登場するキャラクターのひとり)は、躍動感溢れる大胆なポージングと高次元なクオリティーを誇る空間構成、そして「……とにかくかわいい!」としか表現しようのない独特の顔のつくりが魅力的な逸品。パーツひとつひとつの仕上げも非常にていねいで美しく、巨大なランス&クリスマスプレゼントが詰まった袋、そしてあかちょむ自身のデザインアレンジに基づく三つ編みの髪型などディテールの見どころも多数。そのすべてを通じ、あかちょむの造形バランス感覚のよさが誰の目にも見て取れる作品となっています。

© TYPE-MOON/FGO PROJECT


※あかちょむからのコメント

 初めまして。苺MilkTeaの“あかちょむ”と申します。まず、『ワンダーショウケース』に自分が選出していただけるなんて夢見たことはありましたが、現実にはないと思っていました。いま、このコメントを書けていることを大変光栄に思います。
 後々後悔しないようにそのときできることはできる限りやる……というような糞真面目でずっとやって来たのですが、改めて家族や恋人や友だち、先生や各方面の先輩方、プロで活躍されている方々等の助けがあって、いまがあると痛感します。
 フィギュア造形をいつかお仕事にしたいと考えたとき、最初は「独学でできるかな?」と思っていたんです。でも、私は絵もまったくと言っていいほど描けないし、人体構造も分からない、見よう見真似で作っていても何が理想と違うのかが分からない。趣味としてならよいんですが、「仕事」にしたいならスタートラインにも立ててないような気がする……。
 せっかくやりたいことが若いうちに見つけられたのはとても幸せなことだし、当時18歳だった私はひとり手探りで勉強するのは悩む時間がもったいないと感じたので、専門学校に行くことを決めました。入学してからの2年間は、学校の外でもご縁が繋がりたくさんの人たちに出会っていろいろなことを教えてもらって、卒業後はさまざまな企業様からお仕事もいただけるようになり、あのとき行動してよかったと思います。本当にたくさんの方々に支えていただきました! この場を借りて御礼申し上げます。ありがとうございます。
 まだまだプロとしては未熟ですが、これからもっともっとよいものを生み出せるように自分なりにがんばっていきますので、末永くよろしくお願い申し上げます。