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WSC #091 suzu
[ATOMICBOM]
「なぜいまごろこの人を?」という意見は至極当然
ただしいまだからこそゼロから見直したい真の資質
おそらく、長きにわたりワンフェスへ関わり続けているディーラーや一般参加者からすると、いまこのタイミングで『ワンダーショウケース』にsuzuが選出されたことに少なからず違和感を覚えているのではないだろうか。ワンフェスへディーラー参加しはじめたのはじつに20年以上前の'97年からだし、プロ原型師としてフィギュアメーカーの原型製作も複数手掛けている。「そんなsuzuがなぜいまごろWSCに?」と考えるのは至極自然な話と言うこともできるだろう。
実際のところ、今回suzuをWSCへ選出したのは《特別枠》的な思惑が存在しての結果であり、suzuには「近い将来、枠(※WSCの場合、「各期MAXで3名」がルール)的に選出でき得る機会が訪れた際にはぜひWSCに選出させてほしい」というオファーを1年半前の時点で出していたのだが、今回それがようやく実現に至ったと考えていただきたく思う。
さて。それではなぜsuzuをいまWSCへ選出したのかと言うと──2年ほど前のワンフェス会場でATOMICBOMのブース前を通り、'11年夏から展開されているロードバイク+美少女シリーズがずらりと並べられた光景を眺め、思わずsuzuに「ここまでシリーズが続くとさすがに壮観ですねえ」と声をかけたことがはじまりだった。
そのときのsuzu曰く、「何か最近はロードバイクをデザインして作りたいという気持ちのほうが主と化してしまっていて、女の子の造形のほうがが従的な立場に逆転しちゃってるんですよね(苦笑)」とのことで、その倒錯的な構造に対し「あ、コレは相当におかしな事態になっているな」と感ずると同時に、実際にロードバイクのデザインがどんどん先鋭的なものと化してきている事実を把握した結果、「このおもしろさはきちんと文脈化して広く伝える必要があるのではないか?」という考えに至った……というのがsuzuを「あえていまさら」WSCへ選出した最大の理由だと考えていただきたい。
もっとも選出理由はじつはもうひとつ存在しており、「彼が7年ほど前まで家電メーカーのプロダクトデザイナーを生業としていた」という経歴を有している点だ。家電とロードバイクでは具体的な共通項は存在しないが、彼がデザインするロードバイクには「プロダクトデザイナーなりの視点」が確実に見て取れ、それが同シリーズ全体のクオリティーの高さに繋がっていることにぜひ着目してみてほしい。……などという話をここで書いてしまうとsuzu的には次回作に余計なプレッシャーがかかってしまうかもしれぬが、そんなものは笑い飛ばし、かっ飛んだ新作を今後も期待したいところである。
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text by Masahiko ASANO |
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すず●19XX年3月30日生まれ。オタク的な趣味に目覚めたのはかなり遅く『戦闘メカ ザブングル』で、同作品を通じリアルロボット系のメカニック好きに。そして『聖戦士ダンバイン』のチャム・ファウを1/1(全高30cm)でフルスクラッチビルドし、フィギュア造形に初めて手を染める。高校卒業後はカーデザイナーを目指して浜松職業訓練短期大学へ進みプロダクトデザインを学習、同校卒業後は家電プロダクトメーカーにプロダクトデザイナーとして就職する。その後、'97年より“ATOMICBOM”名義にてワンフェスへディーラー参加しはじめたところ、会社勤めとの二足のわらじ状態が体力的にも精神的にも限界に達し、'11年に会社を退職、フリーランスのプロ原型師としての活動へ専念しはじめる。ちなみに代表作たる創作系作品のロードバイク+美少女シリーズのロードバイクはプロダクトデザイナー時代に習得した3Dソフトにて設計しており、最終的には「自分でデザインしたロードバイク(ミニベロ)を実際に自分が乗車することができる1/1サイズにて製作してみたい」というのがいま現在の夢だという。
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WSC#091プレゼンテーション作品解説 |
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イプシロン ver.WSC
from WSCアーティスト自身による創作キャラクター
1/7スケール(全高190mm)レジンキャストキット
■ 商品販売価格
ワンフェス会場価特別価格/12,500円(税込) ※ワンフェス会場販売分30個限定
ワンフェス以降の一般販売価格/16,500円(税別)
ワンフェス参加歴20年を誇り、現在はプロ原型師を生業としているsuzuがなぜいまごろWSCに選出されたのか……という話はアーティスト解説に譲るとして、suzuのプレゼンテーション作品となったのは、彼が'11年夏から展開し続けてきた「創作系ロードバイク+美少女シリーズ」において出色の出来栄えを誇った『イプシロン』('14年夏のワンフェスにて発表)。
ミニベロのTT(タイムトライアル)仕様はほとんど存在しないため当時はロードバイクのデザインに相当苦労したそうですが、そのイプシロンをプレゼンテーション作品とするにあたり、主に美少女フィギュアのパーツをブラッシュアップすることで“ver.WSC”と称すべき存在へと進化させました。元プロダクトデザイナーという経歴を活かし、CAD系の3Dソフトを駆使してデザイン~立体出力されたロードバイクと、昔ながらのアナログ造形に基づく美少女フィギュアを組み合わせて魅せる手法はまさしくsuzuの真骨頂。さらに、ver.WSC仕様として大幅に変更されたカラーリングデザインを再現するための専用カッティングシートもプレゼンテーション作品内に付属します。
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※suzuからのコメント |
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ATOMICBOMというアマチュアディーラーとして活動していたら、いつの間にか本職が原型師になってしまったsuzuと申します。
「……いまさら僕なんかを選んじゃって大丈夫ですか? 『ワンダーショウケース』さん」
これがお話をいただいときの驚きと同時に最初に思ったことでした。
ワンフェスとの出会いは20年くらい前になります。最初はガレージキットなんていう存在も知らなかったし、こんなプラスチックの塊が高値で売り買いされている怪しい世界が存在するなんて正直驚きました。しかも同じ趣味を持った人たちがこんなにたくさんいるなんて……そして猛烈な熱気。高校生以来忘れていたオタク心が目覚めた瞬間でした。
怖いもの知らずでディーラー参加をしてみたのですが最初は見事に惨敗でした。見兼ねたお隣さんたちがひとつふたつ引き取ってくれた程度ではずかしい思いを繰り返しました。自分でもよくも挫けなかったな~と、いまさらながら感心します。
続けて行けてる理由はいろんな人たちと出会える場だからなんだと思います。がんばる人には優しい業界なので、作り続けているとどんどん人が集まって来ます。作品の刺激もそうですが、造形することの楽しさをいつも思い出させてもらえます。めちゃめちゃ強力な栄養ドリンクなのです。
長く参加していると知り合いの中でもWSCに選ばれていてる方も何人かいて、正直うらやましいというか特別な聖域のようなものを感じていました。こんなに時間がかかってしまいましたが、やっと他の方たちに追いつけたのかなとガッツポーズを握りしめました。作品作りには才能やセンスなどいろんな要素が必要なのかもしれませんが、僕の最大の武器はやはり「しつこさ」なのかな(笑)。
日本どころか世界的にもフィギュア原型師がいただける賞的なものなんてほかにありませんので、原型師としての最高の栄誉だと思っています。本当にありがとうございました。
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