アーティスト紹介

WSC #092 ウチヤマリュウタ

[ダイタイロボット]

ガレージキットという形態はあくまで「入り口」
その先の展開を本気で目指す強い気持ちに拍手喝采

 ウチヤマは「ワンフェス、引いてはガレージキットの世界でトップを取ろう」と考えている人間ではない。確かにワンフェスへはガレージキットディーラーとして参加し、『DaitaiRobot(ダイタイロボット)』という創作系タイトル作品を展開しているが、それはガレージキットという「一個人で表現が可能なスタイル」を活用しているだけに過ぎず、見据えているのはもっと先の未来──たとえばひとりだけでは製作することが難しいゲームや映像などといった表現形態の入り口として、ガレージキットとワンフェスを利用しているのだという。なんとも壮大な計画であり「とんだ夢想家だ」と笑い飛ばす人もいることと思うが、3DCGとそれを駆使したモデリングがここまで一般的になったいま(ちなみにウチヤマもやはりZBrush使いである)、これぐらい規模の大きな未来予想図を描くクリエイターが現れても決しておかしくはないと思うのだ。
 まあ、そうしたウチヤマの夢がどこまで叶うかは一旦棚上げにしておくとして、『DaitaiRobot』をあくまでガレージキットを眺める視点にて考察してみたい。
 「少女型戦闘ドール“DTR”が身長140~150cmという小柄な規格で製造されているため、人間用の銃火器を持たせるには保持力が弱く、手首に成人サイズの高出力作業用アームを装着している」という設定の元にフィギュアが造形されているので、手首だけは1/6のアクションフィギュアと同サイズとなっており、1/6アクションフィギュア用に市販されているあらゆる小物を持たせたり組み合わせたりして遊ぶことが可能となっている。この「市販の塗装済み完成品の小物をそのまま転用できることがプレイバリューの高さと直結している」というコロンブスの卵的な発想の柔らかさと、実際にそれを試した際の意外なほどの楽しさは特筆に値するが、もっとも'17年冬のワンフェスではそうした説明が一切為されぬまま1/6アクションフィギュア用の小物がディーラー卓上にずらずらと並べられていて、「これらもキットの付属品なのか?」と多くの人から誤解を招くことになりプレゼンテーターとしての詰めの甘さを露呈するに至ってしまったのだが、それはまた別のお話。いずれにせよ、造形面でもデザイン面でもまだまだこの先における伸び代を充分感じさせる点に期待がかかるところだ。
 そして、このままガレージキットディーラーとしてすくすくと成長し続けていってほしい反面、今回こうして『ワンダーショウケース』に選出されたことを踏み台とし、一気に「より高みの世界に立つ」ことを真剣に目指してほしい新進クリエイターと言えるだろう。

text by Masahiko ASANO

うちやまりゅうた1981年4月14日生まれ。とくにオタク的趣味に特化していたわけではないのだが、幼少期からゲーム好きで、中学2年生のときに『新世紀エヴァンゲリオン』のスタイリッシュさに魅せられる。ただしそこから一気にオタク的趣味へ傾倒……という感じではなく、ゲームこそ継続的にプレイしていたものの普通に高校~一般大学へと進学。が、大学生末期時に「ゲーム系のCGを学びたい」と考えるに至り、あえて就職をせずアルバイトでお金を貯めたのちにCG専門学校へ入学。卒業後はゲーム製作会社へ就職、キャラクターデザインからモデリングまで任せられるようになったタイミングで世に3Dプリンターが登場しはじめた結果、ZBrushを独学で学習し「自分で創作したキャラクターを立体物として手に取ってみたい」という夢を追いかけはじめることに。そして'13年に会社を退職、フリーランスとしてゲーム会社の下請け仕事をこなしつつ、'16年夏のワンフェスから“ダイタイロボット”名義にてディーラー参加をスタートしはじめ現在に至る。

Webサイト https://www.daitairobot.com

WSC#092プレゼンテーション作品解説

© 2016-2018 DaitaiRobot




41式試作型-シア- Ver.As

from 『DaitaiRobot』(WSCアーティスト自身による創作タイトル)
1/6スケール(全高188mm)レジンキャストキット


商品販売価格
ワンフェス会場特別価格/22,000円(税込) ※ワンフェス会場販売分30個限定
ワンフェス以降の一般販売価格/24,000円(税別)

●「プレゼンテーション作品は個人のセンスで自由気ままに組み立ててほしい」というウチヤマの考えに基づきプレゼンテーション作品にデカールは付属していませんが、ただしワンフェス当日に、ウチヤマの個人ディーラーである“ダイタイロボット”のブース(4-09-08)へシアのWSC版プレゼンテーション作品を持参していただいた場合、「プレゼンテーション作品購入特典でDaitaiRobotオリジナルデカールを無料配布させていただきます」とのことです


 『DaitaiRobot(ダイタイロボット)』なる創作タイトル作品をマルチメディア的に展開していくにあたり、まず最初にガレージキットという形態から入ったというウチヤマ。そうしたスタイルのユニークさにも驚かされますが、プレゼンテーション作品『41式試作型-シア- Ver.As』(見た目は普通の美少女だが、非侵襲式自律型兵器という設定)のフィギュアとしての完成度の高さとデザインのスタイリッシュさ具合、そして、レジンキットとしての製品形態ももちろん見ものです。
 個人ディーラーではホワイト1色で成型~販売していたものを、なんと10色(蛍光イエローグリーン、肌色、ブラック、ダークグレー、ライトグレー、ホワイト、ダークブルー、蛍光ピンク、エメラルドグリーン、クリアー)もの成型色を用いたカラーレジンキットへ改変すると同時に、独特の世界観を端的に表現するスペシャルアイテムとして、普通に考えると戦闘とはまるで無関係なキャリーバッグ(設定では「破損した機体のパーツ回収用」)のパーツを新たに追加。目を描き込み、各所にスミ入れを施すだけで完成する特別仕様です。

© 2016-2018 DaitaiRobot


※ウチヤマリュウタからのコメント

 世にはすでにジャンルやキャラクターは山ほどあって、もちろんその中で自分の好きな見た目のキャラクターやロボなど多くいるし好きなフィギュアを買ったりもします。造形や要素を突き詰めるのであれば既存のキャラクターを作ったほうが……とふと周りを見て思うこともありますが、あくまで自分のメッセージを伝える為の手法として『DaitaiRobot』という設定での立体作品という形で表現しています。
 DaitaiRobotは「人工知能の発達により、とある境界で人類が二分化された世界」を舞台に、下層側の人間の「叛逆」をテーマにした設定です。不平等・不自由な状況を諦め受け入れるのではなく足掻く者、の戦うための選択として産み出された兵器が“41式試作型-シア-”になります。
 デザインするにあたっては「すべて意味があるもの」になるようにしています。なぜ少女なのか・なぜ一部がメカなのか……などの大まかな設定から、こまかい武装やメカデザインまで頭の中でアクションさせたときのことを思い描きつつ作っています。今回の-Ver.As-で追加されたキャリーバッグについては「大破機体のパーツ回収用ケース」という設定で展示用に別のキャラに持たせていたのですが、あさのさんご提案の元、今回こちらのキットに付属することになりました。
 なるべく多くの方に手に取ってもらいたいということでこれまで完成品の販売をしてきましたが、今回『ワンダーショウケース』に選出していただき「フルカラーレジンキット」という形で販売できることとなりました。相談、協力していただいた海洋堂様、あさのまさひこ様、R.C.ベルグ様、ほか多くの方のご協力に感謝いたします。
 今回のプレゼン作品や他のキャラクター・デザイン・世界観・雰囲気などから何か感じ取ってもらえたら幸いです。