アーティスト紹介

WSC #097 MIZ / 水野功貴

[MARUTTOYS]

理系出身ではないものの「脳の構造は完全な理系」
プロダクトデザイン&ブランディングの鬼才現る!

「デザイン専攻の大学に通っていたので当初はイラストレーターを志していたのですが、実際のところ、大学ではプロダクトデザイン寄りの立体デザインや造形ばかりしていて……そんなとき、とあるホビーショップの店頭にて千値練版1/35 塗装済み完成品の(WSC#060 小林和史による)メカトロウィーゴのPOPを目にしてしまい、その衝撃によって、“……よし、自分も大学の卒業制作は創作系メカのブランディングで行くぞ!”と決めてしまったんですよ」。
 現在と比べると格段にマイナーな存在であった小林とウィーゴを'12年夏の段階で『ワンダーショウケース』へ選出していた自分からすれば少々鼻が伸びてしまいそうなエピソードではあるのだが、そこまでウィーゴ・ショックたる影響下に置かれながら、ウィーゴをほぼまったく想起させぬ“MARUTTOYS(マルットイズ)”というブランディングを確立させ、そして、「デビュー作にていきなりこの完成度の高さはオカルト染みていやしないか?」というレベルの作品を世に送り出したMIZ / 水野功貴の才能をこの文字数で語り尽くすのはたぶん不可能に等しい。「深澤直人や佐藤ナオキ、ディーター・ラムス(ブラウン)やジョナサン・アイブ(アップル)などさまざまなプロダクトデザイナーから多大な影響を受けた」というバックグラウンド的な言葉をいくら記したとしても、それでもやはり、彼自身の資質に基づくオリジナリティーとその立体再現度の極端な高さにはただただ驚かされるばかりである。
 たとえば「そもそもはコスト削減による手法ではあったのですが……」と本人は語るものの、光沢感溢れる白色の外装パーツは業者成型によるレジンキャスト製なのだが、グレーの内部フレームパーツには、ワンフェス系デジタルモデラーが光造形に向けた出力テストにしかほぼ使わぬようなFDM式3Dプリンタ(UP mini2=ほぼ10万円で購入可能)のABSフィラメントによる出力品を意図的に使用。「安価なFDM式プリンタの出力パーツゆえに本来ならば存在しないに越したことはない積層目が当然ながら目視できてしまうのですが、ただし、その積層目がCFRP(カーボンファイバーコンポジット)的なテクスチャーに見えるような方法を考えに考え抜いてみたんです」というコメントを聞くに、「う、うう~ん……マジか!」と思わず唸らされてしまうのである。
 言ってしまえばもうすでに、「誰が先駆者で誰が追随者なのか」などという考え方は必要ないのかもしれない。それほどまでに、MIZ / 水野功貴とMARUTTOYSの存在感は他を圧倒していると言えるだろう。

text by Masahiko ASANO

みず/みずのこうき1992年4月7日生まれ。「2歳から絵を描きはじめ3歳で肩凝りによる偏頭痛で病院に運び込まれる」という、幼少期から絵画や工作などに完全特化した人生をスタート。その後ロボットアニメ等にも至極自然に傾倒していき、小学6年生のとき再放送で出会った『ふしぎの海のナディア』で「自分が好きなものがすべて詰め込まれている!」という自覚を促すことに繋がる。高校はデザイン学科のある川崎総合科学高校へ、大学は東京工芸大学(デザイン学科ビジュアルコミュニケーションコース)へ進み、メカ+美少女フィギュアのガレージキット的造形やその複製を覚えるも、ある意味当然と言えば当然なのかもしれないが己の趣味嗜好が漫画やアニメよりもプロダクトデザイナー側へ傾倒しはじめ、ワンフェスへのディーラー出展の下見として'18年冬のワンフェスで初の一般参加を果たす。そして'18年夏のワンフェスにて“MARUTTOYS”名義にてディーラー参加をスタートさせ、その初回にてWSCアーティストに選出されるというある種のシンデレラストーリーを達成するに至る。

ツイッター https://twitter.com/MARUTTOYS_MIZ

WSC#097プレゼンテーション作品解説

© MARUTTOYS




© MARUTTOYS


MAMORU

from 『ATARASY products』(WSCアーティスト自身による創作ブランド)
ノンスケール(全高=変形前135mm、変形後180mm)レジンキャスト & ABSフィラメントキット
※写真には2体写っていますが単体(白色版のみ)での販売です


商品販売価格
ワンフェス会場特別価格/18,000円(税込)
※ワンフェス会場販売分30個限定
ワンフェス以降の一般販売価格/21,000円(税別)


 世界中の著名なプロダクトデザイナーから影響を受け、同時に、己が創作したプロダクトをきちんとブランディングしていくことに自分の進むべき道を見い出したMIZこと水野功貴は、過去のワンフェスには存在しなかった、まったく新しいタイプの「プロダクトデザイナー兼3DCGモデラー兼ブランディングプロデューサー」と言うことができるでしょう。
 ワンフェス初出品作にして、WSCプレゼンテーション作品となった創作系ロボット『MAMORU』(近未来における対ロボット向けセキュリティーロボット)は、「いかにもそれらしい」プロダクト然とした変形前のフォルムの美しさがまずは大きな見どころ。そしてもちろん、作品内に付属するネジ止め加工にて可動~変形するのも同作品のポイントですが、最大の特徴は、内部フレームパーツにあえて安価なFDM式3DプリンタによるABSフィラメント出力品を使用したアイディアにあります(WSCプレゼンテーション作品も、実際に内部フレームパーツはABSフィラメントパーツにて構成されています)。こうした発想の柔らかさと、それを高次元で成し遂げてしまった決定的な事実にぜひとも注目してみてください。

© MARUTTOYS


© MARUTTOYS

※白いパーツがレジンキャスト成型品、黒いパーツがFDM式3DプリンタによるABSフィラメント成型品。これに、「M3/15mm×3本、M3/10mm×9本、M3/8mm×13本、M3/6mm×19本」のネジとネオジム磁石がプレゼンテーション作品には付属します

※MIZ / 水野功貴からのコメント

 初めましてMARUTTOYSのMIZと申します。
 「ワンフェスに行ってみようかな~」と、初一般参加したのが2018の冬。ワンフェスに初ディーラー参加したのが2018年の夏。そしてWSCに選ばれたのが2019の冬。
 WSCの存在は知っていたものの大御所の方々が選出される企画程度の認識でしたので、まさか駆け出しの自分が選ばれるとは思っていませんでした。
 この度ありがたいことに選出された“MAMORU”についてご説明したいと思います。
MAMORUは私の造形活動の中でも集大成として、看板作品となるべくして生み出した作品です。
 MAMORUは機能美、シンプルな造形の美しさ、形状が与える心理的な要素などプロダクトデザインとしてのメカデザインをしました。昨今、緻密なディテールや奇抜な形状が多いメカの中であえて個性を出すならGOOD DESING AWARDやred dot design awardなどを受賞するようなオリジナルロボットを作ろう。自分の中にあるプロダクトデザイナーへのあこがれをかたちにしようと躍起になって製作しました。
 ちなみにMAMORUの設定は「近未来の対ロボット向けセキュリティーロボット」で、全長は通常時で2m程あります。
 丸みのある柔らかな形状は攻撃的なロボットではなく街の安全を守る優しきロボットとして認識させると共に、市街地での活動においても威圧感を極力与えないようにしています。
 変形時はさまざまな活動ができますが変形後はそれなりの威圧感、攻撃性を感じさせるため、その心理を軽減するために変形機構を採用したという設定です。
 しばらくはプロダクトデザイナーになりきりながらオリジナルメカのガレージキットを販売していこうと思います。
 今後ともよろしくお願いします。