アーティスト紹介

WSC #102 RICO

[SAKAKI Workshops]

5年前では考えられぬ明らかにやりすぎな作り込み
「美少女フィギュアのステージ」自体が一段上がる刻

 2期連続で“SAKAKI Workshops”からの選出、しかもWSC#100 雨谷 怜と同じく“Pixologic公認ZBrushマスター”榊 馨が率いる3DCGクリエイト会社(株)Wonderful Worksの社員で、これまた雨谷と同様に「普段はフィギュア造形とは似て非なるリアルタイム系キャラクターモデリングを毎日の仕事としている」という事実が公表されるに至ったら、「……なんだよ、『ワンダーショウケース』と榊ってズブズブの関係じゃん!」という批判が生じるであろうことは容易に予想できた。しかし、それでもぼくは今季において、RICOのことをどうしても『ワンダーショウケース』に選出せざるを得なかったのだ。
 文字数の都合上なるだけ簡潔に記すしかないのだが、彼の造形でもっとも驚かされる点は「まだプロの原型師でもないのに、現状における最先端のアニメ絵系美少女キャラクターフィギュア造形の二段階ほど先をすでに歩んでいる」という驚くべき現実だ。
 その中でも特筆に値するのが、作品全体における情報量コントロールだろう。「自分の作品が他の人と決定的に異なる部分は、メカ部分のクオリティーだと思う」「たとえば銃器であれば作りはじめる前にYouTube等で分解動画を見てまずは内部構造を把握し、そのうえで造形作品に落とし込む際に堅持しなければならないデザイン上の凹凸の取捨選択から入る」というのは明らかにやりすぎだと思うが、そうして過剰なまでに作り込まれたメカ部分との情報量を揃えるため、一見すると元絵とそっくりに造形されているかのような美少女フィギュア部分においても、じつは前髪の作り込みがより繊細かつ立体的になっていたり、シャツの袖のシワにおけるメリハリ感が強調されていたり、指摘されなければなかなか気付かない(気付けない)箇所に超的確なアレンジが施されている点がすばらしい。さらに言うならば、エプロンにおける立体裁断感をここまでさりげなく、しかも正しく造形できる美少女フィギュア原型師をぼくはこれまで見たことがない。
 ちなみに、同じ会社に勤める先輩的立場の雨谷が自分よりも先に『ワンダーショウケース』に選出された際には「“うわぁ、おめでとうございます……このヤロ~!”と思いました(苦笑)」とのことだが、こうした人材が同じ職場を通じ毎日のように切磋琢磨していった際、まちがいなくアニメ絵系美少女フィギュアシーンの造形レベルは一歩前進するに違いない。デジタルモデリングばかりを推奨するつもりは微塵もないが、「時代」がそうした変換期を迎えていることはまちがいないだろう。

text by Masahiko ASANO

りこ1988年1月3日生まれ。両親がオタク的な趣味の持ち主だったこともあり、小中高を通じアニメ&ゲーム&プラスチックモデル等に触れる機会は一般人に比べ多かったという。が、高校生のときにセガの『シャイニング・ティアーズ』にドハマりし、同作品のキャラクターデザイナーであったTonyの絵柄やそのフィギュアを本気で追いかけはじめることに。その後大学では経済学部に進むが、3年生のときに『メタルギアソリッド ピースウォーカー』という作品に触れ「将来はゲームデザイナーになりたい」という夢を抱き、それを叶えるため3DCGソフトや数学&物理などを一気に学びはじめる。そして大学卒業後は新卒でゲーム会社に就職できたものの、「デザイナー」ではなく「プログラマー」としての雇用であったためそのコンプレックスに耐え切ることができず、1年を待たずに退職。そして再びゲームデザイナーの道を独学で勉強していたところ、TwitterでWonderful Worksの求人広告を見つけ、'17年より同社の社員として雇用されることとなった。

ツイッター https://twitter.com/Enrico_shin

WSC#102プレゼンテーション作品解説

© SUNBORN Network Technology Co., Ltd.
© SUNBORN Japan Co., Ltd.




© SUNBORN Network Technology Co., Ltd.
© SUNBORN Japan Co., Ltd.


※3D CADソフト『Fusion 360』にてモデリングされた、実在する銃器であるダネルNTW-20。「これだけでもガレージキット製品として成立するのでは?」と思わせる、驚異的な完成度を誇ります

NTW-20 貴族体験館

from スマホ用ゲームアプリ『ドールズフロントライン』
1/6スケール(フィギュア頭頂高250mm/ライフル先端高300mm)レジンキャストキット


商品販売価格
ワンフェス会場特別価格/45,000円(税込) ※ワンフェス会場販売分40個限定
ワンフェス以降の一般小売価格/55,000円(税別)

完成見本製作/路川宏之


 銃器の萌え擬人化である『NTW-20 貴族体験館』(育成&戦略シミュレーション スマホ用ゲームアプリ『ドールズフロントライン』に登場するキャラクター)。その特殊性を完全再現するために複数の3DCGソフトを使い分け、3D CADソフト『Fusion 360』にてモデリングされた銃器=ダネルNTW-20の信じられないほどの精巧さにはじまり、「美少女フィギュア造形の最前線を駆け抜けている」と称するに相応しい造形表現に満ち溢れた、ある意味トンデモな作品(そしてよくも悪くも、その価格面においても超トンデモなヘビー級作品)──またも現れた「ゲーム業界からの越境組」RICOの力量の高さは、多くを語らずともいたるところから見て取れるはずです。
 なお、今回このNTW-20を造形するにあたりとくに気を使ったのは顔の造形だそうで、「顔の角度を元絵とは違う角度にした造形作品として仕上げたかったため、元絵のイメージと乖離しないよう、NTW-20を描いたイラストレーターのツイッターやWeibo上のイラストを収集し、それらを参考に造形した」というこだわりようとその成果に対し、ぜひとも注目してみてください。

※RICOからのコメント

 「少女と銃」の組み合わせ、よいですよね。新卒のころゲーム会社に提出した自作ゲームの主人公もそんな感じでした。
 皆さん初めまして、RICOと申します。
 元ゲームプログラマーでしたが、現在は3Dゲームキャラクターの作成をやっています。
最近だとモンスター系のモデリングが多いでしょうか。その反動か自主製作で作るフィギュアはすべて美少女フィギュアです。
 今回『ワンダーショウケース』に選出していただいた『ドールズフロントライン』のNTW-20 貴族体験館は、じつはサーフェイサーを吹いただけの展示原型でした。製作当初は楽観視してたために少数でもワンフェスで売ろうかなと思ったものの、パーツが揃いはじめると「……これ採算取れないんじゃね?」というボリュームになったので原型展示に切り替えました。なので、まさか展示原型が選ばれるとは思いませんでしたね……展示していた時は時間もなかったこともあり、スカートの中も見えないので埋めてしまっていたほどだったのです。ただ今回完成したものはちゃんとパンツまで作りこんでありますので安心してください。
 自分が本格的にフィギュア作りをはじめたきっかけはTony先生のあるイラストを見たことでした。赤いドレスとちらりと覗く脚の曲線美が美しい躍動感のあるイラストだったので、「これはフィギュアとしてほしい!」という思いからでした。「いまの自分なら理想的なかたちで立体化できるかもしれない」と思えるようになってきたので、次回以降挑戦してみたい題材のひとつですね。
 最後になりましたがこうしていまの自分があるのは弊社社長、先輩原型師の方々のご指導とご助力があったおかげです。本当にありがとうございます。