アーティスト紹介

WSC #103 荒木秀造

[ゆとりジェダイ]

「ゆとり世代」だからこそ開花した芸術的才能
仕事の造形と趣味の造形を切り離し考える造形作家

 ゆとりジェダイ、というディーラー名が示すように、荒木はいわゆる「ゆとり世代」に属する造形作家だ。が、彼の場合は当時の偏った学習指導要領=ゆとり教育がプラスに転じ、その結果、造形作家としての才能がバランスよく開眼したように感ずる。というのも、両親の美術に対する理解度が非常に優れており、彼が幼少期だったころから「国語や算数などの通常教育よりも美術の才能が伸びる可能性が高い時間の使わせ方を優先させたい」と考えたゆえ、某著名美大の彫刻科に見事合格し、さらに大学院まで進むというある意味「造形エリート」的な道を歩んで行くことができたのである。
 そうした資質を有する者だけに、デッサン力や空間構成能力などハイレベルな造形に必要とされる複数要素のバランスが極めて高く、「どこがどう上手い」と具体的に説明するのが非常に難しい才能なのだが、要は「荒木の造形特性を六角形のレーダーチャートで表示した場合、六角形の形状が綺麗でしかも大きい」と表現するのがいちばん分かりやすいかもしれない。
 もっとも、今回WSCプレゼンテーション作品となった創作キャラクター『ゲッコー戦士レオパルド』からは、「とにかく生物が好き」という彼ならではの属性と、極めてユニークな発想が容易に見て取れる。
 元々が無類の生物好きのため、日本でもペットとして人気の高いレオパードゲッコー(愛称はレオパ、日本名/ヒョウモントカゲモドキ)に着目した点まではなんていうことはないのだが、「変にディテールを簡略化したりキャラっぽくアレンジするのではなく、ホンモノの比率を少しだけ変え胴体を短くすることでレオパを超リアルに造形したらレオパのかわいらしさを全面的に活かしたままヒーローっぽくできるのではないか? ……というか、生物ならばなんでもヒーローにしちゃえば格好よくなるのでは?」という、乱暴極まりない反面、じつは真相を的確に捉えた発想をこの年齢で抱けているのがおもしろい。
 さらに、すでにプロ原型師として生活している活動から逆算された「版権元監修で一度は修正を強いられたことのある箇所(たとえばマントのシワなど)をモアベターなものへと昇華させ、それをワンフェス用の創作キャラクター製作になるだけ活かしていきたい」という姿勢に対し非常に好感を抱くことができるのだ(なぜならば、その意識こそゆとり世代が持ち得ていないものだからだ)。
 「仕事での造形とワンフェス用の造形は別モノ」という考え方を地で行く、強烈なアピールこそないものの、その造形作品を見た者が思わず「クスッ」と笑ってしまうような秀作を生み出すことのできる人材と言えよう。

text by Masahiko ASANO

あらきしゅうぞう1991年7月30日生まれ。幼少期から絵を描いたり粘土遊びをするのが大好きで、父親が理科の先生だったという影響により生物に興味を抱きはじめ、小学生時代は虫や魚の絵をひたすら描き続ける(ちなみに平成版『ウルトラマン』シリーズは大好きだったものの、「オタク的な趣味とはほぼ無縁の生活を送っていた」とのこと)。そのままの流れで美術学科のある高校に進学し、当初は油絵を専攻していたものの高校3年生の春から彫刻に専攻を変え、2浪の末に某著名美大の彫刻科に合格、大学院まで進むことになる。なお、大学3年生の際にひょんなるきっかけからプロ原型師と知り合いとなり、フィギュア造形のノウハウを伝授されすぐさまワンフェスへの参加を決意、'15年夏より“ゆとりジェダイ”名義にてディーラー参加をスタートさせた。そして現在すでにプロ原型師として活動しており、某トイメーカーのプライズフィギュアの原型製作などを担当。いまは「仕事を通じて学び得たことを、ワンフェスで発表する創作系作品に活かしていきたい」という目標を掲げている。

ツイッター https://twitter.com/man_sculpt

WSC#103プレゼンテーション作品解説

© Yutori Jedi 2020 / Araki Shuzo


ゲッコー戦士レオパルド

from WSCアーティスト自身による創作キャラクター
1/2スケール(全高110mm)レジンキャストキット


商品販売価格
ワンフェス会場特別価格/5,800円(税込) ※ワンフェス会場販売分40個限定
ワンフェス以降の一般小売価格/6,800円(税別)


 巧い、カワイイ、カッコイイ。爬虫類やその造形物にまるで興味のないような人からすると荒木のこの創作キャラクターのすごさにすぐには気付けないかもしれませんが、元ネタとなったレオパードゲッコー(日本名/ヒョウモントカゲモドキ)の完璧なディテール再現と、いまにも本当に動き出しそうな優れた躍動感、さらに、しっかりとその場の“風”を感じさせる絶妙なマントのなびかせ方などをよくよく観察していくと、同作品が醸し出している「じつに堅実、かつ、まだまだこの先の伸びしろを十二分に感じさせる基礎的な造形力の高さ」が読み解けるのではないでしょうか?
 スカルピー(オーブンで焼いて仕上げる造型用プラスチック粘土)とスパチュラ(細密造型用のヘラ)だけを用い、「デジタル造形とは縁遠すぎて(汗)」と焦った様子も見せてはいるものの、これだけ根本的な造形力の高さがあるのであればこのままアナログ造形を続けてもよいでしょうし、年収面のことも考えデジタル造形に切り替えても、半年も経たずそれをかたちにすることができるはずです。そうした爆発寸前の要素が「ぎゅっ」と凝縮されているのがこのプレゼンテーション作品だと考えてみてください。

※荒木秀造からのコメント

 初めまして。荒木秀造と申します。普段はフリーランスでフィギュアの原型師をさせていただいております。しかしながらお仕事として造形をするというのはとても難しいものですね。自身の成長をよろこび、自身の非才を嘆く日々です。
 『ゲッコー戦士レオパルド』はそんな日々とは対照的に、ひたすら無責任に趣味をしこたま込めて造形させて頂きました。レオパードゲッコー(和名:ヒョウモントカゲモドキ)というヤモリをペットとして迎え入れ、オスかメスかも分からないまま“竜司”という名前をつけてかわいがっていたところ、「……この子にヒーローの格好をさせたら最高に可愛いヒーローが誕生するのでは?」と思い立ち製作に至りました。『アンパンマン』を観て歩き方を覚え、『ウルトラマン』を観て言葉を覚え、『アベンジャーズ』を観て社会に出た僕にとってヒーローとは無条件に魅力を感じる存在であり、僕の造形師人生において永遠に作り続けたいモチーフでもあります。レオパをヒーローにしたいと考えたのもそんな思いからでした。
 製作する上で最もこだわった点は、ゲッコー戦士レオパルドの魅力すべてが“leopard ”のロゴを正面にバン!と完結する構成です。
 しかしながら、突発的な思いつきと爬虫類熱に身を任せて製作した今回の作品が『ワンダーショウケース』に選んでいただけるとは……正直夢にも思っていなかったので、大変恐縮の限りです。
 ですが自分の妄想から生まれ育ったレオパルドくんが、こんなにも名誉あるかたちでたくさんの方々に見ていただけることを本当にうれしく思います。こんな素敵な場をくださったあさの様、関係者の方々に心から感謝を申し上げます。