アーティスト紹介

▲「……そういえばこの角度からWSCブースを撮影したことはなかったなあ」と思い、俯瞰から撮影してみました。幕張メッセの4ホール内で、WSCブースが占める「存在感」がよくわかっていただけるのではないでしょうか


■模型雑誌への広告出稿というかたちから、WSC公式Webサイトに発表の場を移したWSCプレゼンテーション報告書も今回で3回目。前回も前々回も同様のことを記しましたが、このWSCプレゼンテーション報告書は「ワンフェス当日にWSCアーティストたちの作品がどのような売れ方をしたか=信任投票されたかを赤裸々に報告する」と同時に、「レジンキャストキットのリアルな現在(いま)をアマチュアディーラーの皆さんと共有していくためのリポート」だと考えてください。
 で、その観点で考えた際、今回まず皆さんに対しご報告……というか、皆さんもいっしょに考えていただきたいのが、「今期のWSCでワンフェス会場に持ち込まれたプレゼンテーション作品の生産数」なんです。


■WSCはなんといっても“ワンフェス公式レーベル”ですから、たとえば「プレゼンテーション作品が早々と11時に完売してしまった」といった事態は絶対に避けたいため、レーベル立ち上げ当初より赤字覚悟で「売れ残って当然」な個数を生産し続けてきました。
 そして、WSCという企画がきちんと軌道に乗りはじめ、レジンキャスト成型に対し中国工場を使いはじめた第6期('02年夏)以降は「1/8スケールのフィギュア2体セットでワンフェス会場特価2,800円」などといういまにして思えば夢のようなブロックバスター価格化を成し遂げるに至り、結果、WSC#025 yr?(第11期/'05年冬)の『森川由綺&観月マナ』(ワンフェス会場特価3,000円)に至っては「ワンフェス会場販売個数2,000個=完売」というとんでもないバッケンレコード(最長不倒記録)を叩き出すことに繋がりました。
 が、諸般の事情によりその後は中国工場を使ったレジンキャスト成型が不可能となり、再び国内生産となって商品価格が高額化した第13期/'06年冬より販売個数が急激に減少。
 その「石ころが急斜面を転がり落ちるかのような現象」はその後どんどんと加速を増していき、いよいよ第28期/'14年夏からは「ワンフェス会場販売個数を100~130個まで抑えざるを得ない」こととなります。
 なぜならば、「(たかだか)100個の生産でも完売することが極めて難しい」という“レジンキャストキット冬の時代”が訪れてしまったためです。


■それでも前回=第31期/'16年夏までは「ワンフェス会場販売個数=100個」をやせ我慢的にキープし続けていたのですが、いよいよその“100個”というハードルが昨今のバッケンレコードに近付きはじめてしまったに至り、今期=第32期WSCプロデュースアーティスト3名のプレゼンテーション作品は「ワンフェス会場販売個数=80個」とせざるを得なくなってしまいました。
 「……赤字覚悟、上等やんけ!」でスタートしたWSCではありますが、海洋堂本社の敷地内に“金の生える樹”が生えているわけではありません。忸怩たる思いはありつつもある意味これは「至るべくして至ってしまった事態」であり、逆の言い方をすれば、「今回の80個生産が早々に完売してくれればこの先にまた何か新たなチャレンジの余地が芽生えるのではないか?」と期待していたのですが……。


■いや、この件はここで一度「閑話休題」としましょう。
 まずは何より、今回もまたWSCブース(幕張メッセ 4ホール内)へ足を運んでくださった方々、誠にありがとうございました。
 スタッフ一同、謹んでお礼を申し上げます。

▲ちなみに今回はアーティスト3名が前日搬入をしてくれたことで、安心してワンフェス当日を迎えることができました(当日搬入だと「寝坊した」みたいなことが生じるとシャレにならないので……)。そして今期のWSCで「顔出しOK」なのは役者が生業でもあるWSC#084のつるぎのみなので、代表して(?)つるぎの前日搬入シーンを激写w


■それでは、毎度恒例の包み隠さずの赤裸々な売り上げ報告へ移行したいと思います。
 WSC#084 つるぎ だんのプレゼンテーション作品『宇宙服少女 -休息-』(ワンフェス会場特価/13,500円)は、ワンフェス会場販売分80個限定で52個の販売(残数28個)。
 WSC#085 あいしのプレゼンテーション作品『シンシャ』(ワンフェス会場特価/9,500円)は、ワンフェス会場販売分80個限定で62個の販売(残数18個)。
 WSC#086 pateのプレゼンテーション作品『プリズマ☆イリヤ サファイヤVer. WSC Edition』(ワンフェス会場特価/12,500円)は、ワンフェス会場販売分80個限定で67個販売(残数13個)。
 結局のところ、「たかだか」80個のワンフェス会場販売個数がやはりどれも完売に至らなかったというのが「リアルな結論」なのでした。


■この件に関し、知り合いであるベテランや新人の造形作家、そして歴代WSCアーティストに対し「なぜここまで崖崩れ的な状況が生じていると思う?」とここ数年問いかけ続けているのですが、「……いや~、それは同じ1万円ぐらいを投じればフィギュアメーカーによる同じキャラのハイクオリティーなPVC製塗装済み完成品が発売されてしまっているからじゃないですか?」と同様の回答をされてしまうのですが、まあ、身も蓋もないことを言ってしまえば「まったくもってそのとおり」なのだと思います。
 たとえば「1/8スケール フィギュア2体セットの組み立て式キットでワンフェス会場特価2,800円」ならば、仮に組み立てて塗装し完成させるつもりがまったくなくても「まあ……お土産として一応買って帰るか」という気持ちが生じていたのが'02~'05年という時代だったと。実際に、その当時のWSCプレゼンテーション作品がいま現在いわゆる“積みキット”と化している人は相当に多いはずです。


■それをもう少し論理的に分析すると、その当時の「WSCプレゼンテーション作品を購入するかどうか?」というチェックボックスはじつは3つぐらいしかなくて、その3つとは「1: 驚くほど安いからお土産として一応買う」「2: WSC以外で買い物をしたものが多すぎるからスルーする」「3: 造形物にどうしても興味が抱けないのでスルーする」というもののみで、その結果、「2,000個が完売する」などというある意味とんでもない事態が生じていたのだと思うのです。
 ただしいまという時代はそうしたチェックボックスがじつは10ぐらいもあって、「1: ブロックバスター価格でなくなった時点でWSC作品を見る目が異様に厳しくなった」「2: プレゼンテーション作品のキャラクターを心の底から愛していない限り手が出ない(※それゆえに創作系キャラはこの時点ですでに相当に不利になります)」、「3: そのプレゼンテーション作品を本気で組み立てて塗装する気持ちが心の中に存在していない限りは手が出ない」、「4: WSCアーティストの作風が自分の好みに80%以上フィットしているかどうがひとつの基準として浮上してきた」(5:以下は長くなるので省略)という感じで、つまるところ「10個中8個ぐらいのチェックボックス条件が満たされない限りは購入に至っていただけない」のです。
 これは、いま現在におけるアマチュアディーラーのレジンキャストキットの販売状況にピタリと当てはまっているのではないかと思うのですが、いかがでしょうか?


■さて、いきなり話が変わりますが──ちなみに今回、『ワンダー詐ショウケース』なるWSCの完全なパロディディーラーがワンフェスへエントリーしていた事実をご存じでしょうか?
 「こういう人たちが出現してくれることを待ち望んでいた」とまで言うと言い過ぎかもしれませんが、WSCで当初より提示し続けてきた“ガレージキットスピリッツ”が目に見えるかたちとなったひとつの事象として捉えています。だって、彼らの中から本当にWSCアーティストが選出されるに至ったとしたら死ぬほどおもしろいじゃないですか!
 そういう意味では彼らの活動を大いに応援すると同時に、「企画を継続していくことの難しさと厳しさ」も味わいつつ成長していってもらいたいと思っています。

▲4-19-14『ワンダー詐ショウケース』ブースの様子と、彼らのWebサイト。作品もなかなかのものでしたが、ブースでのディスプレイも美しい! そしてWebサイトのパロディ具合は「完璧」のひとことで、さらに英語ページが備わっているぶん本家WSCよりも優れている!?(汗) わざわざ“WcSCスタイルTシャツ”まで作成した徹底ぶりにも脱帽です!


■そんなこんなで今回のアフターリポートでは第32期WSCアーティストたちについて何も触れることができませんでしたが、できればもう一度、可能ならばいますぐにでも彼らのアーティスト解説を読み返してみてください。「たかだか80個のプレゼンテーション作品が完売に至らなかった3名」などというくだらない括りで括ることは絶対にできない、すばらしく特化した才能の持ち主たちです。そしてその事実は必ずや、2~3年後のワンフェスにて証明されることでしょう。
 それでは、次回のワンフェスにてまた再見!


(※なお、WSCのワンフェス ガイドブック表4広告にて、WSC#086 pateのプレゼンテーション作品『プリズマ☆イリヤ サファイヤVer. -WSC Edition-』が“プラズマ☆イリヤ”とタイピングミスされていた事実がワンフェス終了後に発覚してしまいました。関係各位様にご迷惑をおかけしたことを大変申し訳なく思います。誠に申しわけございませんでした。)

▲こんな調子でWSCブースは終日賑わってはいるのです。そして、皆さんきちんと作品をデジカメで撮影してくださっている。ただし、「たかだか80個」のプレゼンテーション作品はどれも完売に至らない……悲しい話ですが、これが「現実」だということです