アーティスト紹介

▲今回のWSCブースを俯瞰から撮影してみました(撮影時間は10時08分なので、あかちょむのジャンタの箱もまだ山積み状態ですね)。ちなみにWSC大判紙袋を肩から下げたワンダちゃんの等身大パネルは、故・水玉螢之丞先生によるイラストを使用したもの。仮に数年後この等身大パネルがボロボロになってしまった場合には、水玉先生の同じイラストを使い新たな等身大パネルを作り起こすつもりでいます(つまりWSCという企画が続いていく限り、WSCブースから水玉版ワンダちゃんは絶対に消え去りません!)


■というわけで、すでに恒例となりました「WSC公式Webサイトという場を使ったWSCプレゼンテーションのアフターリポート」を今回も綴らせていただきます。
 まずは何より、今回もまたWSCブース(幕張メッセ 4ホール内)へ足を運んでくださった方々、誠にありがとうございました。
 スタッフ一同、謹んでお礼を申し上げます。


■それではまず、恒例の隠し隠さずの赤裸々な売り上げ報告から入りましょう。
 WSC#090 あかちょむのプレゼンテーション作品『ジャンヌ・ダルク・オルタ・サンタ・リリィ』(ワンフェス会場価格18,000円)は、ワンフェス会場販売分40個限定で40個の販売=完売。WSC#091 suzuのプレゼンテーション作品『イプシロン ver.WSC』(ワンフェス会場特価/12,500円)は、ワンフェス会場販売分30個限定で30個の販売……の予定だったのですが、ワンフェス終了後の販売も見越し42個生産したすべてを持ち込んでしまったため42個の販売=完売。WSC#092 ウチヤマリュウタのプレゼンテーション作品『41式試作型 -シア- Ver.As』(ワンフェス会場特価/22,000円)は、ワンフェス会場販売分30個限定……の予定だったのですが、こちらもやはりワンフェス修了後の販売も見越し44個生産したすべてを持ち込んでしまったため44個の販売=完売。
 というわけで「ひさびさの全作品完売」という結果となりました。

▲3作品がすべて完売したのって、いったいいつぶりでしたっけ……? レーベルプロデューサー自らが覚えていないぐらいですから相当に久しぶりなはずです(←「ただ単に記憶力が悪い」という説もありますが)。確かに生産個数はかつてと比べ激減しましたが、すべて1万円オーバーのWSCプレゼンテーション作品がこれほど飛ぶように売れたことには正直びっくりしました


■もっとも、です。
 「……あかちょむのジャンタ、開場からわずか10分程度で完売ってひどくね? アレぐらい売れ線のキャラ&造形ならば普通、100個ぐらいは用意するだろうに!」等、WSC関係者に対しいろいろと言いたいことがある方が大勢いるであろう旨は容易に想像ができます。
 が、容易に想像はできるのですが、ただしそういう方はこのページを最下端までスクロールしていただき、第30期~第33期のWSCアフターリポートをいま一度読み返してみていただけないでしょうか。
 そして、できれば「ではなぜ今期のWSCプレゼンテーション作品の生産数が上記したような個数となったのか?」を、貴方なりに考えていただければ幸いに思います。
 そもそもWSCのアフターリポートでWSCプレゼンテーション作品の販売個数を赤裸々に発表し続けてきた理由のひとつは、「レジンキャストキットのリアルな現在(いま)をアマチュアディーラーの皆さんと共有していきたい」ためでした。ただしWSCプレゼンテーション作品の販売個数の話「だけ」が必要以上にあちらこちらで悪い意味でのネタにされるようになってしまった現在、次回からはもう販売個数についての話は一切記さないようにしようかとも考えています(ただしまだ「考え中」なので、「決定」したわけではありませんが)。
 というのも、我々が世にアピールしたい第一義はなんといっても「WSCアーティストが有しているすばらしい資質」なわけですから、プレゼンテーション作品の販売個数の話ばかりが無駄にひとり歩きしている現状は「本末転倒」と言わざるを得ない状況なので。


■さて、それではここで気分を一新し、第34期WSCアーティスト3名のプレゼンテーション作品がどういった経緯の下に修正(改良)され製品化されたのかをひとつひとつ説明していきましょう。
 まずWSC#090 あかちょむの『ジャンヌ・ダルク・オルタ・サンタ・リリィ』ですが、当作品は前回='17年夏のワンフェスにて発表された作品がベースとなっていることはアーティスト解説内で記したとおりです。
 その「'17年夏のワンフェスにて発表されたジャンタ」でもWSC選出基準を充分クリアしていたと言えばクリアしていたのですが、下の画像を見ていただけると分かると思うのですが、ランス(槍)から伸びた赤と緑の2枚の飾りリボンの流れ方具合が作品全体の空間構成を著しく乱していたため、あかちょむに対し「この飾りリボンの造形をモアベターなものにできない?」というダメ出しをしたんですね。それに対し彼女は「私もそこは気になっていた点なので、ならば飾りリボンを取っ払ってしまいませんか?」というあまりにも思い切りよすぎる提案が為されたのですが、結果的にこの判断を版権元様に許諾していただけたという逸話はぜひともお伝えしておきたく思います。
 さらに、躍動感溢れるポージングを支えているベースを兼ねた(クリスマスプレゼントが中に詰まっている)大きな袋の造形が“おでんの具材の巾着袋”にしか見えなかったため、「どういう手段でもいいのでコレもなんとかして!(←the いい加減な指示)」とお願いしたところ、あかちょむなりの判断でプレゼント袋の一部にわざと布が破れた表現を施し、中身のプレゼントを露出させる……という修正も行われたのでした。
 このあたりの「ジャッジメントの速さ」と「適応能力の高さ」に、あかちょむの今後の明るい未来像が見えたこともぜひともお伝えしておきたいポイントです。

▲左が昨夏のワンフェスにて、『苺MilkTea』にて販売された状態のジャンタ(右上はそのときのパーツ構成)。ランスから伸びる2本の飾りリボンが空間構成を乱し、作品の魅力を半減させてしまっていることが分かる人には分かっていただけると思います。そして右下の2点の画像は、あかちょむのアイディアに基づき改修されたプレゼント袋。その効果が抜群なことは、左の画像と見比べれば一目瞭然なはずです


■続いてWSC#091 suzuの『イプシロン ver.WSC』について。
 suzuのイプシロンはプレゼンテーション作品解説内に記してあるように、じつは'14年夏(つまり7回前のワンフェス)にて発表された作品であるため、今回のWSCプレゼンテーション作品化に対しどこにどんな改修を加えるべきか大いに悩んだ作品でもありました。
 もっとも、「WSCプレゼンテーション作品化するにあたりなるだけ過去作品と雰囲気を変えたい」というこちらからのリクエストに対し、下の画像のようにsuzuのほうからPhotoshop加工による大幅なカラーリングデザインの変更と、それを誰もが簡単に再現できるようなカッティングシートの付属化が提案されてきた次第でして。
 もちろん、こちら側のディレクションで「そこのカラーリングやマーキングはこんな感じに変更したほうがよいのでは?」というさらなる修正画像をいくつか投げさせてもらうにはもらったのですが、そうした修正画像を投げ合うキャッチボールが非常に楽しく、さらにその結果、販売数は42個ながらも7回も前のワンフェスで発表された作品がここで改めて注目を浴びたという事実は本当にうれしいばかりです。
 suzuのような“ワンフェスへのディーラー参加歴20年以上”というような人であっても、その作品や作風が「フィギュアメーカー用ではなくワンフェス専用の造形」であれば、我々はつねに貴方たちのことをチェックしているとお考えくだされば幸いです。

▲いちばん左の画像が、'14年夏のワンフェスにて初めてお披露目されたイプシロン。そして右側の2点の画像が、イプシロンをver.WSC化するためにsuzuがPhotoshop加工にてカラーリングデザインを試行錯誤していた様子。じつは大型のメッセンジャーバッグを新たに造形し腰に装着してみたのですが、女の子フィギュアの見どころである腰まわりの色っぽいラインがまったく見えなくなってしまったため、その大型メッセンジャーバックのパーツは泣く泣くボツ化の道を辿ることに……


■そして最後に、WSC#092 ウチヤマリュウタの『41式試作型 -シア- Ver.As』についてです。
 ウチヤマ自身による創作系タイトル『DaitaiRobot』シリーズはすでに3作品がワンフェスにて発表されており、じつを言うと、シアはその第1作目('17年冬のワンフェスで発表~販売された作品)なのです。
 つまりウチヤマをミュージシャンに置き換えて考えるならば、「2ndシングルと3rdシングルをプロデューサーに否定され、いまさらデビューシングルをピックアップされた」というある意味屈辱的なシチュエーションであったはずなのですが、そうした事実をまったく意に介さず、むしろ「ではデビューシングルをどうリメイクすれば作品のみならず自分自身をよりクオリティーアップすることができると思いますか?」という姿勢でこちらからのオファーに前向きにOKを出してくれたことに対しまずは感動しました。
 で、その結果、「シアにはぜひ完全新規造形によるショッキングピンク色のキャリーバッグを持たせてほしい」「もっともぼくはキャリーバッグオタクなので、インチキ臭くて安っぽいデザインのキャリーバッグは許せないため、キャリーバッグのデザインはRIMOWAのSALSAシリーズあたりのテイストを上手い具合に汲み取ってアレンジしモデリングしてほしい」というかなりワガママかつ無理難題なオファーを出したのですが、それに対してウチヤマが見事応えてくれたと。
 これに対してはいやもう、マジで「あざーっす!」としか言いようがないですね。

▲こちらがウチヤマのアーティスト解説内で触れた、「“1/6アクションフィギュア用に市販されている塗装済み完成品の小物をそのまま転用できることがプレイバリューの高さと直結している”という旨がまったく説明されぬまま、1/6アクションフィギュア用の小物がディーラー卓上にずらずらと並べられていて、“これらもキットの付属品なのか?”と多くの人から誤解を招くこととなった'17年冬のワンフェスにおける『ダイタイロボット』ブース」の図。そりゃあアナタ、誰だってそう誤解しますぜ……


■ちなみにこの原稿を綴っているのは2月19日(=じつはぼくの誕生日なので誰か祝ってくださいw)なのですが、先ほど第35期WSCアーティストのひとり目が仮決定に至りました(もっともまだ版権元からプレゼンテーション作品の販売許可を取り付けていないため、完全決定へ持っていけていないのがなんとももどかしいのですが……)。
 というわけで第35期WSCアーティストが何名になるかは未定であるものの、次回のプレゼンテーションもまずまちがいなく実施されますので夏のワンフェスにて再見、です!

▲ウチヤマは初の著書たる『作って覚える! ZBrushフィギュア制作入門』(2月25日発売予定/発行:株式会社ボーンデジタル/定価:本体2,800円+税)が発売直前ということもあり、3D-GANとワコム主催によるデジタル原型ステージの講演3「今期WSCアーティスト著、ZBrush4R8書籍の紹介とキャラクターデザイン」にも登壇。ウチヤマにとってはおそらく一生忘れることのできない回のワンフェスになったのではないかと思います