アーティスト紹介

▲画像は13時41分に撮影したWSCブースの様子。まあ、さまざまな意味で「いつもどおりの光景」ですね。ちなみに本文中では「販売個数に関しては今回から触れない」と書いてはいますが、こっそりお知らせしておきますとこの時点でWSC#095 ジムの『Flower Secret』はすでに完売していました


■はい、そんなこんなですでに恒例となっております「WSC公式Webサイトという場を使ったWSCプレゼンテーションのアフターリポート」を今回も綴らせていただきます。
 まずは何より、今回もまたWSCブース(幕張メッセ 4ホール内)へ足を運んでくださった方々、誠にありがとうございました。
 スタッフ一同、謹んでお礼を申し上げます。


■ちなみに今回ワンフェス会場で限定販売した第35期WSCアーティスト3名のプレゼンテーション作品の個数はすでにご存じのとおりですが、前回予告したとおり、今後は基本的に「どのプレゼンテーション作品が何個売れたか」ということに関してはこのプレゼンテーション報告書内に記さないようにしようと思います。
 というのも、そもそもプレゼンテーション作品のリアルな販売数をプレゼンテーション報告書内に記しはじめた理由は、「いまレジンキャストキットがどういった状況に置かれているのか?(レジンキャストキットの売り上げ低下はどのようにしたら食い止められるのか)」というアマチュアディーラーとの情報共有のために綴っていたのですが、SNSの急速な発展によりWSCプレゼンテーション作品の販売個数の話「だけ」が悪い意味でひとり歩きをしはじめてしまったため、「……これはもう販売個数を赤裸々に情報開示するのは意味がないな」といった判断に基づくものです。
 というわけで今後は、「どのプレゼンテーション作品がどれだけ売れたのか?」ということに対する興味が強い方は、大変申し訳ないのですがワンフェス会場にて、貴方ご自身の目でそれをご確認していただければ、と思います。


■さて。というわけで話を根源的な部分に戻しますが──すでにお気付きの方も多数いらっしゃることと思いますが、第35期WSCアーティストに選出された3名は「3名全員が3DCGソフトを駆使したデジタルモデリング系モデラー」という結果と相成りました。
 言うまでもなくこれは35期(19年間)も続いてきたWSCの歴史の中では初のできごとであり、3Dモデラーとアナログモデラーを完全な等価にて扱ってきたWSCにおいて、レーベルプロデューサーという立場としては「……いつかはこのときが来るとは思っていたけれど、とうとうそのときが来てしまったのか」という複雑な感情を抱いています。


■そんなこんなで今回は、「3Dモデラー」という視点にて第35期WSCアーティストの特性を綴っていってみましょう。
 まずはWSC#093“おあげ”のプレゼンテーション作品『御幸一也』からとなるわけですが……おあげはそもそもゲーム会社で3DCGモデリングを担当しているため、「素体」たる部分はMaya(統合型ハイエンド3DCGソフト)にてモデリングし、その後、同データをZBrushに移行して細部を仕上げていく手法を取っています。ただしMayaでのモデリングはアニメやゲーム用に人体の素体にポーズ付けがしやすい反面、着座ポーズなどの場合は「地面に対してかかっている1G感」がほとんど生じないわけです(※下に掲載する画像をぜひ参考にしてみてください)。
 ただしその事実を指摘された以降のおあげの成長率はある意味とんでもないものがあり(つまりそれだけZBrushの使用比率が高まったということでもあるのでしょう)、結果、いよいよWSCアーティストに選出されるに至ったという具合です。

▲写真の上側は、'16年夏のワンフェスにて撮影したおあげの『沢村栄純』と『御幸一也』(沢村は'15年夏、御幸は'16年冬が初出で、この回は共に再販作品)、下側はこの回初出となった『沢村と御幸』。もうこの時点で技術的な意味では充分WSC選出基準をクリアしているのですが、写真下側の『沢村と御幸』における「絶対的な1G感の足りなさ」に注目してください。これこそが(まずまちがいなく)一次的なデータ作成にMayaを使用したがゆえの弊害であり、沢村も御幸も0Gの宇宙船の中に座っているようにしか見えないのです


■次いで、WSC#094 クッキー草のプレゼンテーション作品『天道様』について。
 クッキー草は大阪総合デザイン専門学校在籍時にMayaを授業で勉強したそうなのですが、統合型ハイエンド3DCGソフト特有の「3軸を意識しながらモデリングしていく」という仕組みにどうしても馴染むことができず、「粘土細工的なモデリングのままフィニッシュまで持っていくことができるZBrushのほうが自分のスタイルに向いているのではないか?」と考えZBrush使いに転身。
 その結果が大正解であった旨は、彼のプレゼンテーション作品の完成度の高さを見ていただければ分かると思います。やはり感覚派造形作家にとってのZBrushというソフトの発達(とくにその日本語対応バージョンの発売)は「福音」とたとえるしかないと思いますね。

▲昨冬='18年冬のワンフェスにて撮影した、クッキー草の『天道様』(の立体出力見本)と、その元絵となったジョン平氏によるイラスト。ここまで前後に分厚い造形となったのはジョン平氏による造形アドバイス用スケッチの存在に理由が存在したらしいのですが、……いやしかし、“小林誠版(オリジナル)ジ・オ”あたりを例えとして用いない限り説明のしようがないほどのボリューム感と空間構成能力には唸らされるばかり。なお、このWSC公式Webサイト以外の印刷物ではちょっとした手違いによりクッキー草の生年月日が「2002年1月31日」になってしまっていますが、正確には「1990年1月31日」が正解です。クッキー草をはじめとする関係各位にはこの場をお借りしてお詫び申し上げます


■そして最後に、WSC#095 ジムのプレゼンテーション作品『Flower Secret』について。
 ジムの作風はそれほどデジタルに頼ったものではないものの、「Flower SecretはZBrushとメタセコイヤ(無償提供ソフト)を使ってモデリングしたが、メタセコイヤに関してはその後一切いじっていないのでもう操作方法も忘れてしまった」とのこと。つまりジム的には「当時('16年)においてZBrushがまだ不得手としていたパーツをメタセコイヤでモデリングしただけの話」であり、おそらくいまならばZBrushですべてを仕上げてしまったのではないかと思われます(もっともいま現在も、ZBrushだけでなくblenderも併用しているそうですが)。
 このあたりの(とくにZBrushにおける)3DCGソフトの進化具合は、自分では3DCGソフトをいじらない(いじることができない)自分的には「驚愕」としか言えないものがありますね。いや、マジで。

▲これもまた'16年夏のワンフェスにて「次期WSCアーティスト候補のひとり」として撮影していた、ジムの『Flower Secret』(頭部と肌色部分以外の塗装が間に合っていなかった点に注目。ちなみに、ぶっちゃけこの時点では3Dモデリング作品だとは思っていませんでした)。元絵となったredjuice氏のイラストも同時に展示されていたため、「ああ、下半身に関してはこの造形作家(=ジム)の創作的造形なんだな」ということには感づいていたのですが、その仕上がり具合が全体的にあまりにも優等生的であったためこのときのWSCはジムへのオファーを意図的に断念したのです


■あと余談じみた話ではありますが、我々にとっては割と重要(?)な話をひとつ。WSC#093 おあげのプレゼンテーション作品『御幸一也』はアイボリーのレジンキャストにて成型されていますが、このアイボリー、今回こだわりにこだわってRCベルグさんにわざわざ新たに調色していただいた特別色なんです。
 我々のあいだでは俗に“あさのアイボリー”と呼ばれていますが、ベルグさんも“あさのアイボリー”という呼称を把握されていますので、もしもこの成型色が気に入った方はベルグさんに「あさのアイボリーで成型してください」と告げていただければまったく同じ色で成型してもらえますよ(苦笑)。

▲こちらが俗称“あさのアイボリー”にて成型された御幸一也。デジカメ画像だとどうしても正確な色味が出ない&ピントが浅くて恐縮ですが、右下に置いたFlower Secret(ピュアホワイト成型)の胴体&スカートの色味と見比べてみてください。RCベルグさんの通常色であるアイボリーよりも若干黄色味が強く象牙色に近い感じで、白色系ながらこまかなモールドまでしっかりとよく見えるのが特徴です。ピュアホワイトで成型し肌色をサフレス塗装で仕上げても数年後には肌色は必ず黄ばんでしまうので、いまこそアイボリー成型の有用性が見直されるときではないかと思うのですが……


■……しかしこうして「第35期WSCアーティストに選出された3名が3DCGソフトを駆使したデジタルモデリング系モデラーであった」という結果が出てしまったとしても、WSC的には「みんながみんないますぐにでもデジタルモデリングに切り替えるべきだ」などということは微塵とも考えていません。
 とは言え、第36期WSCアーティスト候補の中には当然の如くまたまた3Dモデラーが多数含まれているんですよね。正直な話、「もうこの流れは止められないんだろうな」と思うところはやはりあります。
 というわけで第36期WSCアーティストが何名になるかはまだ未定であるものの、現時点で1名がすでに決定済みということもあり次回のプレゼンテーションも必ず実施されますので冬のワンフェスにて再見、です!

▲今回のプレゼンテーションを通じ、WSCアーティストの通しナンバーもついに095まで到達しました。よくよく考えてみると(いや、深く考えずとも!)、仮に次期=第36期WSCアーティストが3名だった場合、WSCナンバーはWSC#098まで行くことになります。そして来夏のワンフェスではおそらくWSCナンバーが100に達し(!)、WSCは創設20周年(!!)を迎えるということに……うううう~ん、来年はとてつもなく忙しい春~夏になりそうだなあ(うれしいような、うれしくないような)