WSC #021 渡辺結樹 Yuuki WATANABE [G-tempest] 衰退する怪獣造形にもたらされた「一縷の望み」 かつて、ガレージキットシーン全体を躍進させる礎を築き、初期ワンフェスの屋台骨を支えた“怪獣”というジャンルが、予測だにしなかったほどの勢いで失速・衰退している。「当時('82~'85年)は昭和30年代生まれのゴジラ&ウルトラ世代がボリュームゾーンを担っていたからこその人気だった」「金型成形の安価なマスプロダクツが大々的な進化を遂げた結果、怪獣のガレージキットは“躍動感”や“生物的表現”というアドバンテージを失ってしまった」等、その原因は複数存在するわけだが、そのなかでもっとも問題視すべきは、「怪獣造形の正解なんてとっくの昔に出揃ったわけだし……」という、“ガレージキットスピリッツ(つねに圧倒的であり続けようとする造形精神)”に背くようなだれきった意識ではないかと思う。実際、怪獣のガレージキットを取り巻くここ最近の状況は、寅さん映画のようなプログラムピクチャー的造形(コレクションには適する、造形的進化が途絶えた変化なき造形)を求める人と、それへ従順に応える造形家が大半を占め、新たな造形表現や奇抜な発想などはほとんど生まれていないと言ってもよい。結果、この道20年選手の作品と新人造形家の作品との見分けさえ付かぬ状況が生じ、怪獣造形はまるで盆栽のよう「時間が止まった世界」と化してしまったのである。 |
text by Masahiko ASANO |
わたなべゆうき●1979年8月31日生まれ。それまでオタクカルチャーとまるで無縁だった中学時代、『ゴジラVSキングギドラ』('91年作品)を観て突如スイッチが入り、“ゴジラオタク”をアイデンティティとする人間へと豹変。高校時代、ゴジラグッズを収集していく過程で初めてガレージキットの存在を知るが、ファーストインプレッションは「ふ~ん、こういうものもあるんだ」程度で感動はゼロ。が、美大進学後、ゴジラグッズ収集が加速した結果から、当初はさほど気に留めていなかったガレージキットにもチェックが入ることとなり、ワンフェスやJAF・CONなどへ「ゴジラのガレージキットを探すため」に顔を出しはじめる。そして'00年、「美大(デザイン科)で習得した技術を生かせば自分にもできそうだ」といった理由からディーラー参加を決意し、夏のワンフェスにて“G-tempest”名義でデビュー。'03年11月にはイベント運営団体に頼らぬパーマネントでの版権を取得、“アマチュアディーラー”から“ガレージキットメーカー”へとステップアップを果たしている。 |
Webサイト ■ http://g-tempest.com/ |
WSC#021プレゼンテーション作品解説 |
3式機龍(メカゴジラ) ※from 劇場映画『ゴジラ×メカゴジラ』 ■ 商品販売価格 (※販売は終了しています) いまやすっかりマイナーなジャンルと化してしまった怪獣ガレージキットのなかで、“平成ゴジラ”にこだわり続ける孤高の新星、渡辺結樹。ワンフェスでのディーラー参加を足がかりにパーマネントのガレージキットメーカーを志す彼が、前回のワンフェスにてお披露目展示を行い、その強烈な存在感をもって怪獣ファン以外の人々からも熱い視線を集めた超弩級作品が、この“機龍(劇場映画『ゴジラ×メカゴジラ』より)”です。 |
渡辺結樹からのWSC選出時におけるコメント |
ときは1980年ごろ、オタクという文化内の活動のひとつにガレージキットというものがありました。当時、日本に入ってきて間もなかったこの活動の中心と言えるジャンル、それが“怪獣”でした。 |