アーティスト紹介

WSC #022 山ちゃんズ

Yamachanz

[山ちゃんズ]

「クオリティ」と「余裕」の素敵な両立
彼らがワンフェスという旅へ出る理由

 「山ちゃんズのどこに惹かれたのか?」とWSCスタッフに問われたとき、非常に曖昧な回答しかできなかった。もちろん、造形レベルはAクラスだし、キャラクターデザインもなかなかに秀逸だ(一応“美少女系”に含まれるものの、妙な計算高さを感じさせないあたりや、オタク内流行を追いかけていないところがグッド)。が、他の創作(オリジナル)系ガレージキットディーラーと明らかに異なる「彼らならでは」という魅力を言葉にしようとすると、「飄々としていて余裕のある感じ」という、まったくもって漠然とした印象論でしか語ることができなかったのだ。
 ただし、実際に彼ら3人(タクジ、コハナ、むうてん)と会って話をした際、そうした印象の理由が一瞬にして理解できたような気がした。彼らは同じゲーム制作会社に勤める同僚で、クリエイターとして日々の仕事をまっとうしつつ、純然たる趣味としてディーラー活動を展開しているという。つまり、生業を通じて創作意欲を一定以上満たしたうえで(腹八分目までしっかりと食事を採ったうえで)、「今回のワンフェスで作家としてのアイデンティティを証明してやる!」などという必死さとは無縁の状態で(ほぼ満腹なのにデザートを「別腹」で食すようなノリで)、「生業とはまた違ったおもしろさが提示できるといいね」ぐらいのゆるめの意気込みにて(誰かにデザートを取り上げられたとしても「お腹いっぱいだったしね」とあきらめられるぐらいの感覚にて)、山ちゃんズ作品を生み出し続けてきたのである。大半の創作系ガレージキットディーラーが卓の内側から「オレのセンスってほかの人とちょっと違うでしょ!?」というオーラをメラメラと発しているのとは、まさしく好対照。「発する空気はゆるゆるだが、基盤がしっかりとしているので作品のクオリティは高い」というこの独自の立ち位置が、彼らの作品をじつに心地よいものとしているように思えるのだ(ロックバンドにたとえるならば、自己主張色が薄いくせに淡々とした旋律が心の琴線をくすぐる“くるり”の立ち位置にそっくり)。
 老婆心ながら唯一危惧するのは、創作系ガレージキットディーラー群が近年脈々と形成しつつある「悪い意味での横連帯(「創作系ガレージキットディーラーに声をかけ、褒め、商品を購入していくのは、大抵が創作系ガレージキットディーラーの人間である」という閉鎖生態系)」に取り込まれ、何かしら「勘違い」してしまうこと。仲間や同志を増やすこと自体は決して悪いことではないが、ちやほやされるとけっこう簡単に舞い上がってしまうタイプなので(とくにコハナ!)、彼らが体現する「飄々としていて余裕のある感じ」がこの先も損なわれないとよいのだが。

text by Masahiko ASANO

やまちゃんずタクジ(1973年3月21日生まれ/原型製作担当)、コハナ(1973年3月9日生まれ/キャラクターデザイン&イラストレーション担当)、むうてん(1976年3月24日生まれ/キャラクターデザイン&原型製作担当)の3人からなるユニット。'97年から一般入場者としてワンフェスへ参加しはじめ、知人が代表を務めるディーラーで版権モノの原型を手掛けたりしていたが、「版権モノは事務処理が面倒だし、どうせならば創作(オリジナル)系で勝負したい」という思いに至り、母体となったディーラーからの独立を決意。「ちょうどそのころ会社を去っていくことになった山下さんのことを偲んで」というわけのわからない理由からユニット名兼ディーラー名を“山ちゃんズ”と決定し、'01年夏、リスタートされたワンフェスにてデビューを果たす。これまでは「デザイン/コハナ+造形/タクジ」というスタイルでしか作品が生まれていなかったが、万年完成しない病を脱したむうてんが、'03年冬のワンフェスにて処女立体作品を発表予定。今後は「3人組」としての意味合いがより強調されそうな気配を漂わせている。
(※現在はディーラー活動を休止しています)

 

WSC#022プレゼンテーション作品解説

© Yamachanz


サマナーチャン
& パンダブルマダ

※ノンスケール(全高170mm & 135mm)レジンキャストキット
※プレゼンテーション作品はこの2体のレジンキャストキットに、ポストカード5枚と缶バッチ2個をセットした形態をとっています


商品販売価格
ワンフェス会場特別価格/2,800円(税込)
ワンフェス以降の一般小売価格/4,800円(税別)

(※販売は終了しています)


 創作(オリジナル)系ガレージキットの世界において、売れ線狙いに走るでもなく、かといって、ひとりよがりで自己主張ばかりが強い路線に走るでもなく、「創作度数と自己表現のほどよいバランス」をものの見事に具現化してみせる3人組ユニット、山ちゃんズ。彼らが展開する作品はいわゆる“美少女フィギュア”のカテゴリーに含まれるわけですが、美少女フィギュアというのはあくまで「モチーフ」であり、「目的」ではありません。そうしたあたりが、「女性にも受けがいい」という結果を生むのでしょう。
 プレゼンテーション商品は、'03年冬のワンフェスにて発表された“パンダブルマダ”と、'03年夏のワンフェスで発表された“サマナーチャン”を2体セットにし(2体ともキャラクターデザイン/コハナ+原型製作/タクジによるコラボレーション作品)、さらに、山ちゃんズ デザインによるポストカード5枚と缶バッチ2個をパッケージングした、山ちゃんズBOXセットとでも言うべき内容。この商品ひとつで、山ちゃんズの魅力がおなかいっぱいになるまで楽しめるはずです。

山ちゃんズからのWSC選出時におけるコメント

 “山ちゃんズ”とは、ワンフェス限定で創作(オリジナル)系ガレージキットを製作している、ファミコン世代の3人組ユニットです。
 ワンフェスに参加するようになったきっかけは、私たちが考えたキャラクターデザインや造形物が、会場に来たお客さんに通用するかどうか挑戦すること、そしてそのリアクションを楽しむことにありました。
 毎回キャラクターを生み出すにあたっては、“スクール水着”や“ブルマ”といったお題がまず最初にあり、それをどこまでオリジナルものとしてアピールできるかが勝負となります。
 バッチやハガキといったオマケがついているのも、造形物だけにこだわらず、いろんな遊び要素を加えたいという考えからです
「なんでパンダがブルマなんだよ!」「これってペン立てですか?」などなど率直な感想をいただいていますが、のんきに楽しんでおりますのでこれからもどうぞよろしくお願いいたします。
 がんばりました!