アーティスト紹介

WSC #023 吉沢光正

Mitsumasa YOSHIZAWA

[REFLECT]

アニメ絵と「生身の女体」の高次元融合
この物語はまだプロローグを迎えたばかりである

 いわゆる“美少女フィギュア”と称される造形物は、アニメーションやコミックなどに登場するキャラクターがモチーフだとは言え、さらにその大元となるモチーフはしょせん“人間の女体”である(「じつは人間じゃなくて魔法使いだ」とか「ロボだ」とか「女神さまだ」とかいろいろあるだろうが、その手の話は本筋から外れるのでここでは割愛)。それが大友克洋的なタッチによる写実的なキャラクターであっても、少女マンガ風の手足が異様に長い10頭身キャラクターであっても、はたまた3頭身ほどにデフォルメされたギャグマンガ風キャラクターであっても、帰結するモチーフが人間の女体である以上、それらを造形する者は「生身の女体の情報をどこまで造形物に盛り込むか」もしくは「生身の女体の情報をどのあたりまで造形物から削ぎ落とすか」を(意識的・無意識的に関わらず)頭のなかで考えながら手を動かすこととなる。“生身の女体情報をできるだけ多く盛り込む派”と“生身の女体情報をできるだけ削ぎ落とす派”、そのどちらが優れているとか劣っているとかいう話ではないのだが、前者における「最新型の造形」のひとつ、それが吉沢光正の生み出す作品であることだけはまちがいない。
「つい3年ほど前まではプロのフィニッシャー(製作代行業)としてガレージキット業界と関わっていた」というプロフィールも異色だが、いくら「元々クリーチャーなどのリアルな造形物が好きだった」とは言え、ほとんど造形経験のない人間がいきなり作った美少女フィギュアが「これ」だというのは、「……そんなバカな!」というのが正直なところ。これほど大量に生身の女体情報をアニメ絵に盛り込み、それがデッサン的にもデフォルメ的にも破綻していないというだけでも充分驚異的なのだが、それ以上に驚かされるのがやはり、“顔”の造形だろう。目周辺の彫り、鼻の穴、頬骨、唇の突起や口端の窪みなどを明確に作り込んでおきながら、モチーフとなった造形対象が有する「アニメ絵ならではのかわいらしさ・愛らしさ」を目減りさせない技量は筆舌に尽くし難いものがある(プレゼンテーション作品となったキャミィの場合は「凛々しい」系のキャラなので、それがややわかりづらいのが残念。もっとも、近い将来彼が発表するであろうイマドキ系アニメ絵キャラのフィギュアにて、その全貌は広く知らしめられるだろう)。そしてさらに驚かされるのは、そうした吉沢造形がいまだ音を立てるような勢いで進化(変化)し続けているという現実だ。
 とにかく、騙されたと思って今後の彼をマークし続けてみてほしい。吉沢造形という物語は、まだまだ「序章」の段階なのである。

text by Masahiko ASANO

よしざわみつまさ1977年4月27日生まれ。幼少期からキャラクター系のプラスチックモデル製作に没頭、小学校を卒業するまでは「とにかくプラモばっかり作っていた」という日々を過ごす。その後は模型関連から遠ざかっていたのだが、19歳のときにゲームを通じて再びキャラクターモデルに目が向き、ガレージキットを大々的に扱うショップ経由で作今の模型業界事情を知る。20代前半は「とにかくガレージキットに色を塗るのが楽しかった」時期で、クリーチャー系を中心に完成品を多数製作し、ガレージキットのフィニッシャーとして活動。が、フィニッシャーと並行しながら原型製作にも着手しはじめ、いつしかその構図が完全に逆転、いま現在は原型製作業のみに従事している。ワンフェスへの参加は'01年夏からだが、そのときは完成品工房として出展していたため、造形ディーラー“REFLECT”としての参加は'02年冬から。商業原型を手掛けることを拒むわけではないが、「イベント活動を中心に据えたプロディーラーとして活動していきたい」という夢を抱く。

Webサイト http://mitumasa.com/

WSC#023プレゼンテーション作品解説

© CAPCOM CO.,LTD.


キャミィ

※from『ストリートファイターZERO3』
1/6(全高260mm)レジンキャストキット


商品販売価格
ワンフェス会場特別価格/4,500円(税込)
ワンフェス以降の一般小売価格/6,800円(税込)

(※販売は終了しています)


 当初はプロのフィニッシャー(製作代行業)としてガレージキット業界と関わっていたものの、「他人の作品を組み立てているだけではつまらない」という気持ちが日増しに強くなっていった結果、原型製作&ディーラー参加のキャリアをスタートさせたという吉沢光正。写実的でリアリティー溢れるデッサン&ディテール表現を得意とし、そうした写実的表現と「アニメ絵ならではのデフォルメ」との高次元融合を易々と成し遂げてしまう、驚くべき資質を有した新星です。
 そんな彼のプレゼンテーション作品となる“キャミィ(『ストリートファイターZERO3』の人気キャラクター)”は、'02年冬のワンフェスにて発表された事実上の処女作に大幅な改修を施した、「最新の吉沢造形」を堪能することができるWSCヴァージョン。ディテールの改修にとどまらず、デッサンやポーズにまで手が加えられ、頭部に至ってはゼロから作り直した完全新作をセットしました。過去の同作品を知る人は、吉沢の急激な成長ぶりに驚くこと必至です。

吉沢光正からのWSC選出時におけるコメント

 カーライルは言いました、「意義ある仕事は、どれも最初は不可能に思える」と。皆さんは知らず知らずのうちに、不可能から可能に至る道を遠まわりしているのです。と、こんなはじまり方でよいのでしょうか? 幼稚園のころから工作が大好きで大好きで、好きすぎてその当時の将来の夢に、なぜか「工事現場のおじさんになって、ブルドーザーに乗りたい」と書いたくらい工作(?)が好きでした。ちなみに幼稚園のころ、ウンコを一度ならず二度も漏らしてます。それが後々の僕に大きな………………大きな………………なんでしょうか? 造形のことを書けと言われても、何を書けばいいのかパッタリわかりませんが、ジョリっと書きますと、元々、リアル系の造形が好きで好きで、そっち方面から入っているせいかリアル寄りなものを作ることが多いですが、アニメも大介(大好き)です。初めは何がなんだかさっぱりわかんなくって、「とにかく人を作るんだから、人体がわかってなきゃ作けないんだー」とかひとりで思い込み、そこからはひたすら、人体のお勉強です。そんなわけで僕の造形ってのは、説教くさいわけなんですが、とにかく、つねに上を見続けているようにしています。自分の作ったものに決して納得しない、次はもっとモットと、いつも思っています。納得してしまったらその時点で成長は止まります。「この頭のなかで思っていることが手に伝えられたらな~」とかよく思う毎日です。でも、それってまだまだ成長できる可能性があるってことですよね? ですよね? とにもかくにも気持ちで負けてはイケマセン。人間やっぱり精神力です。できないと思ってしまったら、できるモノもできなくなってしまいます。フーッ、ここまで書けばよろしいでしょう。がんばりましたー。今後は、少しでもよいものができるよう激しく努力しますので、皆さんどうか吉沢光正を末長ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーくよろしくおねがいしますー期待は裏切らないつもりですよ? ところでカーライルって誰ですか?