アーティスト紹介

WSC #056 popstick!
(てれ+ジャスティス)

[popstick!]

なんとも希薄な「フィギュア造形にかける想い」
しかし同時にそこへ感ずる世代的なリアリティー

 「才能」という観点にてアーティストを選出している以上、その生い立ちなどは基本的には二の次なのだが、このふたりに限ってはまずそこから入らざるをえまい。
 「なんとなく漫画家になりたい」という漠然とした理由に基づき、「漫画家になるなら代アニ(=代々木アニメーション学院)かなぁ」ぐらいの感じで代アニのマンガ科に進んだ“てれ”。ふたつのコースを選択すると料金が割安になることを知り、「ガンプラ製作が上手くなったら儲けもの」とフィギュア科も同時に受講することに決め、「食玩ブームの存在すら知らなかった」という人間が突如としてフィギュア造形に触れはじめる。そして、「漫画を描くよりフィギュア造形のほうがおもしろくなってきた」ためにマンガ科を中退、当初のビジョンとは180度かけ離れた方向に進んでいくことに。
  対する相方のジャスティスもまた、「ホビージャパン誌でガンプラを製作するプロモデラーになるため」に同じ代アニのフィギュア科へ入学。が、「ガンプラ製作が上手くなるためのカリキュラムがなくて驚いた」という、思わず「……アホかーっ!!」とツッ込まずにはいられない状況のなか、「とりあえずはやるしかないので」フィギュア造形に手を染め、やはりてれと同様に徐々にこの道ならではの魅力に取り憑かれていく。
  一流原型師を目指し日々死ぬ気で造形と向き合っているような人からすれば、このふたりの猛烈なユルさと雑さに対し怒りが込み上げても決しておかしくはない。
  が、こうしたいい加減極まりない状況下からWSC選定基準に達している才能が飄々と現れてきてしまうこの現実に、世代的('80年代末生まれ)なリアリティーを感じずにはおれないのである。あえて大げさに言うならば、「DNAレベルでアニメフィギュア造形的な立体感覚を持ち合わせている世代の登場」とでも表現すべきか。
  事実、このふたりの造形には「考えた末にそうした」という部分と同等に、「深く考えずとも自然とそうなった」としか思えぬ優れた箇所が多い。“天然”という言葉は蔑称として用いられることが多いが、そうではなく、「天性的に善し悪しを取捨選択している」という意味でのライトスタッフ(正しい資質)を感ずるのだ。
  この先、ふたりのそうした才能がどこまで開花していくのかはもちろん未知数だが、明らかにまちがった進化の仕方をしない限り、数年先には「フィギュア造形でそこそこきちんと食べています」という存在になっていることはまちがいなく思うのである。

text by Masahiko ASANO

ぽっぷすてぃっく!1987年9月8日生まれ(てれ/写真左)/1988年3月5日生まれ(ジャスティス/写真右)。ふたりとも代々木アニメーション学院フィギュア・メイク科フィギュアコースの出身だが、在学時はクラスメイトではなく「単なる顔見知り」程度で、別々にスタートさせたワンフェスへのディーラー参加(てれは5人組にて'07年[冬]から、ジャスティスは3人組でひと足早い'06年[夏]からの参加)以降に急接近。先に所属していたディーラーが解散し、'10年[冬]からてれが個人ディーラーとしてスタートさせた“popstick!”にジャスティスがあとから加わることで、'10年[夏]よりふたり組ユニットとしての新たなスタートを切ることとなった。某著名原型師のアシスタント的スタンスにて、同氏にアドバイスを受けつつ専業原型師を目指すてれに対し、ジャスティスはひと足早くフィギュアメーカーからの原型製作依頼を受け、「プロ」としてはジャスティスが半歩ほどリードした状態。今後の「ユニット内ライバル関係」にも注目が集まる。

WSC#056プレゼンテーション作品解説

© きゆづき さとこ・芳文社/GA製作委員会


ノダミキ
&キョージュ 色彩戦隊ver.

from TVアニメーション『GA 芸術科アートデザインクラス』
ノンスケール(全高80mm & 135mm)レジンキャストキット


商品販売価格
ワンフェス会場特別価格/5,800円(税込)
ワンフェス以降の一般小売価格/7,800円(税込)


 ふたり組のユニットながら、ふたりの関係性は驚くほど希薄。が、それでいながらふたりの作風には奇妙なほどの共通点があり(当初は「どちらかがプロデューサー的視点でふたりの作風を揃えているのだろう」と目していたものの、「サイズを揃えること以外はとくに何もコントロールしていない」という話を聞き大いに驚かされることに)、ふたりしてとくに気負うことなく、飄々と秀作を生み出す……という捉えどころのなさがpopstick!の特徴であり魅力です。4等身キャラゆえに気付きにくいかもしれませんが、プレゼンテーション作品“ノダミキ&キョージュ 色彩戦隊ver.”(TVアニメーション『GA 芸術科アートデザインクラス』に登場する主役5人組のうちのふたり。原型製作はノダミキ=てれ、キョージュ=ジャスティスによる)は、共にしなやかなポージングとさりげなく作り込まれたディテールが光る秀作。おそらくはここを起点とし、まだまだ進化&変化していくであろうふたりの新鮮な造形センスが感じ取れるはずです。

てれからのコメント

 どうもはじめまして、popstick!の“てれ”と申します。
  ……まいったね。何を書けばいいかわかりません。
  ひとつの目標を綴るなら、「粘土をぐいぐいカタチにしていく人」。そんな人がカッコよくて、あこがれていて、少しでも近づきたくて。でもまだまだボクは上手くいかなくて。「上手くなるにはどうすればいいんだろう?」といつも考えてます。それでも粘土を触っているときは楽しくて仕方ないんですけれども。
  これからも好きなマンガやアニメのキャラクターを作っていきたいです。ひとりじゃ無理そうなことも、相方のジャスティスと利害が一致したときには、きっとできるはず……か? 基本は「好き勝手に作る」のがボクたちだと思ってますけど、そのときはジャスティス、これからもひとつよしなに。そして何より、お世話になった方々にありがとうございます。
  今後ともpopstick!をよろしくです。

ジャスティスからのコメント

 どうも、popstick!のジャスティスです。
  ワンフェスにはこれまで違うメンバーと別のディーラーとして参加していたのですが、3人チームで3人とも造形の方向性が違っていたので「やっぱり出すものは揃えたほうがえぇんじゃない?」ってことになり、'10年[冬]のワンフェスにひとりで参加していて、作るものの方向性も近い「相棒」てれが作ったpopstick!に加わり、新しいディーラーで活動をはじめた矢先のWSC選出……と、いきなりな展開だったんですが、まぁ、お互いに好きなものを好き勝手作りながらがんばっていきましょ~。
  今後はイベントにできるだけ参加して、いままで以上に腕を磨いていままで以上に精進していきますので、これからもよろしくお願いいたします。