アーティスト紹介

WSC #059 めぬ

[めぬ]

「描き鉄」にして「妄想鉄」のパワー120%全開!
もっとも幸せなガレージキットディーラーの姿

 《撮り鉄》《乗り鉄》《食べ鉄》《時刻表鉄》と、ひとくちに鉄道マニアといってもじつはさまざまな属性が存在することはご存じのことと思う。生粋の鉄道マニアである“めぬ”をそのようにカテゴライズするならば、《描き鉄》そして《妄想鉄》という言葉が適切だろう。
  19年前に鉄道と女の子をテーマとしたイラストを『旅と鉄道』という雑誌に投稿しはじめ、同誌の投稿イラストコーナーが廃止される'07年まで超常連として君臨。'05年からはフィギュア造形にも着手し、メカ+女の子というテーマにて'06年より創作系作品を発表しはじめるが、ある日「……『旅と鉄道』への投稿用イラストの世界観を、そっくりそのまま立体化すればウケるのでは?」と遅まきながら気付くことになる。
  結果、'08年より“ローカル線+女の子シリーズ”とでも称すべき大型ヴィネット作品を発表しはじめたところ、ワンフェス会場では「……うわっ、(よい意味で)バカですね~!」という最大級の褒め言葉を多数ちょうだいすることとなり、「投稿イラストが誌面に大判サイズで掲載されたときと同様の快感が生じた」。しかも、そこで造形されるローカル線は埼玉県内を走っている架空の鉄道で、「頭のなかには路線図もあるし急行が停車する駅もきちんと決まっていて、車両形式などもすべて架空のものをそれらしく設定している」というのだから、これを妄想鉄と呼ばずしてなんと呼ぶのか?
  さらに言えば、「鉄道などのメカっぽいものとアニメ絵のかわいい女の子が同等に大好き」という偏った性癖を包み隠さずダダ漏れ状態にし、それを苦笑されたり小馬鹿にされることでゾクゾクとした快感を得ているわけだから、これはもう完全に露出狂&どMの世界である。
  実際にその作品を凝視すると、駅舎の自動改札機や鉄道車両の抵抗器などがとことんリアルに作り込まれているのに対し、女の子のフィギュアはぽわわわ~んとした純真無垢かつ処女性が強調された雑な作りであるというあたりにも偏った性癖が見て取れるわけだが、とにもかくにもそこまで含め、とにかく「微笑ましい」のだ。
  つまり、めぬに関しては「フィギュア造形をもっと精進しこの先飛躍してほしい」というような(まともな)願望は一切ない。この偏った性癖をひとりでも多くの人が正しく理解し、めぬに対し「……うわっ、バカですね~!」と声かけをしてくれればそれでよいのである。
  率直に言うならば、こんなにも幸福な構造にあるガレージキットディーラーをぼくは見たことがないのだ。
  ……最高ですよアナタ。めぬ、マジで最高っ!!

text by Masahiko ASANO

めぬ1971年4月3日生まれ。小学生の低学年時に早くも鉄道マニアと化し、まずは《撮り鉄》を趣味とする。中学生~高校時代は『夕やけニャンニャン』に熱を上げるも、専門学校卒業後に就職し、《乗り鉄》《描き鉄》として鉄道趣味を再開。同時に、鉄道模型メーカーのTOMIX主催によるコンテストにNゲージのレイアウト(ディオラマ)を出品したりしつつ、'00年あたりからワンフェスへの一般参加も開始。その後訪れた食玩ブーム時にはかわいい女の子のPVC製塗装済み完成品フィギュアを買い漁り、'04年ごろからインターネットを通じてフィギュア造形の基礎を学ぶ。やや話が前後するが、'04年冬のワンフェスに“マキノキ”名義にて初ディーラー参加を果たし、1/6ドールサイズの業務用ビデオカメラ“MVCAM DRC-M370”(デザインと形式名は作者の創作)の塗装済み完成品レジンキャストモデルを出品。'05年夏からは“めぬません”名義('07年夏に“めぬ”に改名)で継続的なディーラー活動をスタートさせ、“ネコミミメイドの宅配便”('06年冬)を皮切りとしてメカ+女の子シリーズをコンスタントに発表し続けている。

WSC#059プレゼンテーション作品解説

© 2010 めぬ




© 2010 めぬ




© 2010 めぬ


みのりの

※WSCアーティスト自身による創作(オリジナル)ヴィネット作品
ノンスケール(160mm×230mm×160mm)レジンキャストキット


商品販売価格
ワンフェス会場特別価格/19,800円(税込)
ワンフェス以降の一般小売価格/24,000円(税込)


 昭和30年代に建てられた木造モルタル総2階の北口駅舎と平屋の南口駅舎、鉄骨木造跨線橋、コンクリートタイル敷き対面式プラットホームで構成された、埼北急行中津川線の実里野駅。この埼玉県を走る架空の私鉄駅の南口側に位置する実里野女子学院~通称“みのじょ”に通う、中等部2年生の三ツ木涼香と神名優美、初等部5年生の箕田咲楽たちの何気ない朝の通学風景をざっくりと切り取った、幅160mm×高さ230mm×奥行き160mmもの大型ヴィネット―鉄道マニアにして鉄道から派生した妄想が炸裂したユニークな発想に基づく“めぬ”のプレゼンテーション作品『みのりの』は、鉄道に対しとくに興味のない人が眺めても思わずニヤリとしてしまう、「あるある!」的リアリティーに溢れる異色中の異色作。めぬ自身の手による設定書(駅の構造や立地環境、駅周辺の再開発計画までをも想定した緻密な設定には誰もが驚くはず!)と、自動改札機をはじめとする駅舎のディテールを引き立てるデカールも付属する、「よい意味でアホすぎる」大作です。



めぬ製作による設定書(イラストレーション+文字設定)が付属します

めぬからのコメント

 はじめまして。めぬと申します。
  鉄道の旅が好きで、列車に乗るとひたすら車窓を眺めています。移り行く車窓は見ていて飽きません。駅に着き、目的地はとくに決めず、1日かけて街を歩いたりします。客で賑わう商店街、機械音が響く工場地帯、季節ごとに表情が変わる公園や畑。解体されるビル、建設中の高架橋、住宅地では1軒1軒違うかたちの戸建て住宅もあれば、同じように見える団地に建つ集合住宅もよく見ると棟ごとに個性があったりと、街を観察すると新たな発見や変化があり、また、機能美のおもしろさにも興味が湧いてきます。
  そして、各地を巡り、頭のなかに刷り込まれた風景を元に、行ってみたい街や、楽しい情景を創作することもまた好きなのです。
  創出するキットの原型製作はヴィネットタイプならば、ベースという限られたスペースにストラクチャー類とフィギュアを詰め込むのですが、音や光、匂いや季節など、かたちでは表現できない空気感を伝えるにはどのようなパーツを選べばよいのか、また、どう配置すれば効果的に表現できるか、このレイアウト次第でイメージが大きく変わりますので、難しくもあり、楽しい作業でもあります。
  配置する機械や建物の背景パーツですが、機能する箇所の造形は省かずデフォルメして製作します。ロゴマークや看板などのサインは架空のものを製作し、デカールに出力して貼附しています。これらはすべて日常生活感を感じさせるための工夫です。
  当ディーラーの作品舞台はほとんどが架空の設定です。ですから、キットを手に取った方に作品の世界をできるだけ伝えるためにできあがったキットには必ずイラストによる設定書を付属させています。組み立てる前に設定を読んで、主人公の住む世界に少しでも入っていただけたら楽しくキットが組めることでしょう。
  これからも新しい風景を皆さんと旅できたらいいなと思っています。