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WSC #063 大山 竜
[真・造形とかの会。]
比較対象が存在せぬレベルのデッサン力と表現力
いまあえて問う「ベテランにて大型新人」の存在
怪獣やクリーチャー系の造形にもそれなりにアンテナを張っていたつもりであったのだが、大山 竜という特異な才能の存在をこれまで知らぬまま、15年あまりもの年月を過ごしていた事実を非常に恥ずかしく思う。
ただし、大山がワンフェスへ初めてディーラー参加したのはじつは前回、つまりは'12年夏だというのだ。
その理由は後述するが――次期『ワンダーショウケース』の候補者を探すため、ワンフェス会場を練り歩いていた際に大山の作品を目撃したときの感想は「驚愕」のひとことに尽きた。大山という人物を知らぬがゆえの、無知ゆえの驚きではあったのだが、そこに展示されていたガラモンやガメラの他に類を見ないアーティスティックな高解像度表現に、一発でノックアウトを食らってしまったのである。ここ20年ほど、怪獣&クリーチャー系の造形が「着ぐるみの細密再現」「生物的な生々しいディテール表現」という二元論に陥ってしまっていることに息苦しさと絶望を覚えていた自分からすれば、大山のそれにはこの道の先人たる竹谷隆之と同様の、怪獣&クリーチャー系の造形作品をファインアートのレベルにまで昇華させることのできる未来が見えたのだ。
ちなみに大山造形の真実を知るためには、自身の才能をひたすら無駄に垂れ流し続けている彼のブログを見ていただくのが手っ取り早い。とにかく圧倒的なまでの芸術的才能に溢れ、驚異的な順応力にてどのジャンルの最新造形をも取り込んでいってしまう(じつは美少女フィギュア造形にも易々と順応できてしまう)ことには賛嘆するしかない。まちがいなく「天才」そのものなのだ。
さて、そんな大山がなぜいまごろになってワンフェスへディーラー参加しはじめたのかといえば、「そろそろ自分も竹谷的なステージを本気で目指さないといけないと思った」という理由に基づくのだという。
「ワンフェスへディーラー参加するとなると“売る”という行為が必要になるけれど、売ることには興味がないし、売ることを第一義に考えはじめるとたぶん自分がおかしな方向へ行ってしまう。だからこれまでワンフェスとは距離を置いていたんだけれど、でも、やはりそろそろ環境を変えて、自分自身を変えていくきっかけをつかまないと……という感じですかね」
今回こうしてWSCから声がかからなかった場合には、'13年冬のワンフェス終了後、大山自らWSCへ自薦しようと考えていたのだという。WSCに選出されたことだけで何かが大きく変わるとも思えぬが、これが彼にとっての一大転機となることを期待したいのだ。
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text by Masahiko ASANO |
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おおやまりゅう●1977年1月22日生まれ。幼少期より「絵描きになりたい」という明確な目標を持つ。が、中学1年生のときに『ゴジラvsビオランテ』にハマった際にマックスファクトリー製ゴジラのソフトビニールキットの存在を知り衝撃を受け、ラドール(石塑粘土)でガレージキット的造形に初挑戦。そしてそれをわずか2週間で独力にて完成させたことで、造形の世界に対し一気に開眼する。もっとも、幼少期に夢見た画家を目指すため高校は美術系の学校へ、大学は美大へ……と一見順風満帆な道を進むも、じつは高校2年生の際に周囲にあまりにも絵画が上手い人間がいたためすでに心が折れており、予定調和的に美大をドロップアウトし、いきなり専業原型師を目指しはじめることに。その後、地元大阪のガレージキットを扱うショップが自社製品の開発に乗り出すことを知り、自ら挙手し21歳のときにその原型製作を担当。以降も地道な活動を積み重ねることで怪獣&クリーチャー系造形の世界では徐々に名前が浸透していき、GILL GILL、怪物屋、カプコンなどをクライアントとしながら現在に至る。
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WSC#063プレゼンテーション作品解説 |
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ガラモン
from『ウルトラQ』
ノンスケール(全高200mm)レジンキャストキット
■ 商品販売価格
ワンフェス会場特別価格/19,000円(税込)
ワンフェス以降の一般小売価格/22,000円(税込)
※超絶なディテールを有する作品ですが、できるだけ原型のディテールを損なうことなく、パーツ分割を極力減らすスペシャルなキット化をR.C.ベルグ様のご協力の下に進めさせていただきました。結果、第25期WSCの他2作品に比して高額な価格設定となってしまった旨をご理解いただければ幸いです
※写真撮影に使用したモデルは、ガラモンの体表から生える冬虫夏草のパーツを倍増させた、大山自身によるディテールアップ作例です。元のキットとは冬虫夏草の数が異なる点をあらかじめご了承ください。また、このディテールアップ作例と同様に、キット製作時に冬虫夏草の数を増やしたいという方には、キット購入後に「アフターサービス」のかたちにて冬虫夏草パーツをご購入いただけます(大山のWSCプロデュース期間内における限定販売です)
プロ原型師として15年ものキャリアを誇る大山 竜ですが、じつはワンフェスへのディーラー参加は昨年夏が初めて。そこで展示されていた「作品」然とした、アーティスティックな作風のガラモンに対しWSCレーベルプロデューサーのあさのまさひこが驚愕&大絶賛。大山の「ここから自分を変えていきたい」という想いと、あさのの「いまさらながらこの突出した才能にもっと日の目を見せたい」という想いが合致したがゆえの、「ベテランにして大型新人」というかたちでのWSC選出となりました。
プレゼンテーション作品の『ガラモン』は、5年前に造形したという同様の作品をアップデイトしつつダウンサイジングした、WSCプレゼンテーション用に作り起こされた完全新作。体のいたるところから冬虫夏草が生えた、悠久の刻を越えたガラモンの亡骸が放つ驚くべき存在感は、これまでの怪獣造形の世界ではまったく見ることのできなかった極めて創造性の高い逸品です。さらに、レジンキャストキット化をほとんど考慮せずに造形されたスーパーディテールをたっぷりとご堪能ください。
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大山 竜からのコメント |
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真の造形とは己との戦いであり、世間や他人の評価なんて意識するものではない。……という強い信念で造形する姿勢が世界中で支持される、圧倒的な造形力を持った孤高の原型師に憧れるが、そこまでストイックでもないし、上手くもない、孤独を愛する人でもない。誰かに誉められると宙に浮くぐらいうれしいし、けなされると心臓がズキズキ痛む。友人たちと造形大会をしてるときは、「ずっとこの時間が続けばよいのに」と感じる。誰かに誉められたい、誰かと楽しみたい、必要とされたいから造形してるんだろう。誰もいなければ何も作らない――僕のモノ作りの動機は不純なのだろうか、いや、むしろこれ以上に純粋な動機が何処にある!? ……という考えで原型製作をしてます。
でも自分の好きなモノを好きに作って「飾らない素のあなたが大好き、ずっとそのままでいて」と言われたいのも事実ですが。すべてを悟った大人のふりをして何もしないのも自分のためにならない、だから今後もいろいろなことにもがきながらも挑戦していこうと思います。
今回のガラモンは知人との、「こんな感じの怪獣フィギュアがあってもよいんじゃない?」という会話のなかで生まれました。好き勝手にアレンジしたものですが、許可してくれた円谷プロさん、ありがとうございます。選んでくれたWSCスタッフの方々にも感謝してます。僕や僕の作品に明るいスポットを当ててくれて。参加してよかった……ワンフェス。たくさん売れたら調子に乗って次の怪獣も作ります。売れなくてもくやしいから作ります。
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