WSC #068 Sparrow S.A. [イグルーシカ] その手法と作風、まさしく「The '80s」なり! 主に造形用のパテや粘土を駆使したガレージキット的造形が定着する以前の'80年代前半、スクラッチビルドを得意とするモデラーが使用した素材は主にプラ板であった。梁を用いてプラ板を箱組みし、曲面を再現する際には積層したプラ板を鉄ヤスリでゴリゴリと削る。パテを用いるのは加工過程で生じたスキマやキズを埋めるときだけで、「すべてがほぼ白1色の、プラ板だけでできた造形物」を完成させることが常識と目された時代が存在したのだ。パテや粘土によるガレージキット的造形がその立場を取って代わるまでは、その造形対象がザクだろうとレッド・ミラージュだろうと、すべてがこの手法にて製作されていたのである。 |
text by Masahiko ASANO |
スパロー エス エー●1971年9月1日生まれ。小学校低学年時に生じたガンプラブームにはハマらなかったものの、小学6年生~中学1年生にかけて『重戦機エルガイム』に傾倒。プラスチックモデルがなかなか発売されなかったためにプラ板工作でスクラッチビルドを試み、以降、「プラスチックモデル製作とプラ板工作によるスクラッチビルドが等価」という模型製作スタイルを確立する。大学入学以降は学業や仕事が忙しく模型趣味と疎遠になっていたのだが、'03年、PS2用ゲームソフト『ANUBIS ZONE OF THE ENDERS』に登場するジェフティをどうしても造形したくなり、プラ板工作によるスクラッチビルドが復活。'04年冬、友人の手伝いでワンフェスに売り子としてディーラー参加しそこで衝撃を受け、自前ディーラーでの参加を決意することに。'05年夏より“イグルーシカ”名義での参加をスタートさせ、以降はプラ板工作による原型製作法にて、主にゲームに登場する架空戦闘機や戦闘機系可変ロボットを中心とした作品をコンスタントに発表し続けて現在へ至る。 |
Webサイト ■ http://sparrow.o.oo7.jp/ |
WSC#068プレゼンテーション作品解説 |
オービッド ウォクス・シリーズ from TVアニメーション『輪廻のラグランジェ』 ■ 商品販売価格 ※ウォクス・アウラ(グリーンの機体)、ウォクス・リンファ(ブルーの機体)、ウォクス・イグニス(オレンジの機体)のピアサー形態(飛行形態)から、1機を選んで製作するコンバーチブルキットです。「3機セット」ではないのでご注意ください(仮に3機を揃えたい場合は、プレゼンテーション作品を3点購入する必要があります) 「ケレン味溢れる独自のアレンジを施した架空戦闘機や戦闘機に変形するリアルロボット」を黙々と量産し続けるSparrow.S.A.は、その造形スタイルにしても造形センスにしても、'80年代に流行ったそれをイメージさせるちょっと懐かしい雰囲気が特徴の造形家です。完成度の高いメカ系プラスチックモデルが市場に溢れ返る現在、長きにわたりこうした作風にてひとつの世界観を構築しているメカ系造形家は希有な存在と言えるでしょう。プレゼンテーション作品である『オービッド ウォクス・シリーズ』(TVアニメーション『輪廻のラグランジェ』に登場する主役ロボット3機の飛行形態)は、そんなSparrow.S.A.の資質がダイレクトに反映されており、ぜひともオリジンのメカニックデザインと見比べてみてほしいところ。「ケレン味」の意味するところと、彼がガレージキットにて表現しようとしている世界が理解できるはずです。 |
※Sparrow.S.A.からのコメント |
今回『ワンダーショウケース』のお話をいただいて改めて自分の造形を振り返る機会を持ちましたが、思っていた以上に自分が古臭いタイプなのだということを思い知らされました。だって、「いまどきプラ板工作する人がいたなんて……」とか、「ここをこうすればもっと格好よくなる的なアプローチ、'80年代か!」等々散々言われてしまっては、馬鹿でも気付く話です。 |