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WSC #081 kuni
[7144]
模型製作に関してはいまもってズブのシロウト!
「真意でのデジタルモデリング革命」の体現者
幼少期に「男子の嗜み」として接着剤不要のガンプラのパチ組み(当然塗装もしない)程度は経験したことがあったものの、基本的には模型製作や造形の経験が一切ないままZBrush(3DCGスカルプトツール)を使いフィギュア用の習作原型を製作し、そして、それが一流プロ原型師のそれとまったく見劣りしないものとして仕上がった──もちろんその下地には「そもそもの生業がCG制作会社の社員で、普段はMotionbuilderを駆使しCGアニメーターを務めている」という背景が存在するのだが、それにしてもこれはやはり「ガレージキット的造形が誕生して以来の一大事件」と言わざるをえまい。
簡潔に言えば、「いよいよ真意でのデジタルモデリング革命がワンフェスに押し寄せた」ということである。
……と、ここまでを読み、そこに書かれている内容が「WSC#083“隙間の人”とほぼまったくいっしょ」であることに対し驚いた人も多いと思う。
さらに驚くべきは、kuniの場合は「ZBrushでフィギュアをモデリングし立体出力にまわす」ところまでが彼の担当領域で、以降は「CGを駆使した厳密な製作指示書を作成し、モデルフィニッシャーに依頼して自分の思い描いたとおりの作品に仕上げてもらう」というセルフプロデュース方式を採用している点だ。つまりはいま現在においても模型製作に関しては完全なズブのシロウトであり、「塗装はおろか、立体出力されてきたパーツの表面を磨いて仕上げるスキルすら持ち合わせていない」というのだ。まずはプラスチックモデル製作から入り、そしてそれの改造、フルスクラッチビルドへの挑戦……というステップアップを踏みガレージキットの原型製作やその完成見本作成へ辿り付いた《旧人類》からすれば、もうこれは「時代が変わった」としか表現しようがない。そして、今後はこうしたスタイルを用いる造形作家が別段特別視されない時代が訪れるのだろう。
ちなみにkuniがこうしていきなり頭角を現した背景には、デジタル系造形作家たちのあいだではもはやすっかりお馴染みの『デジタル原型交流会』(主催/スーパーバイザー&榊 馨)が存在している事実を見逃してはならないはずだ。こうした場と、主にツイッターを使った日々の情報交換&共有が、デジタルモデリング革命への成長スピードを促すと同時に、kuniのように「一気に化ける」環境を生み出したのである。
そういう意味でも、kuniは「いま現在のデジタルモデリング環境を象徴する存在」だと言えよう。
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text by Masahiko ASANO |
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くに●1981年5月9日生まれ。そもそもはオタクにカテゴライズされる人間ではなかったのだが、中学2年生の際に『新世紀エヴァンゲリオン』を通じ人生観を狂わされる。そしてエヴァにて「映像関係の仕事に就きたい」という目標が生じ、東京工科大学メディア学部メディア学科へ進学しPCのプログラムやCGなどを習得。また、同時期にブームだった食玩フィギュア収集にハマり、オタク趣味の度数を徐々に高めていくことに。大学卒業後はCG制作会社へ就職、主にCGアニメーターを担当していたが、現在務めている(株)ライオットヴィジュアライゼーションへ転職したのちに自宅で死蔵状態になっていたZBrushをいじりはじめ、'14年夏のワンフェスにて既存ディーラー“7144”からデジタル系造形作家としてデビューを果たす。続く'15年は婚活にてワンフェス参加を辞退(ただし残念ながら結果は伴わず)、'16年からはワンフェス婚という新たな道を開拓すべく造形活動を再開。曰く、「自分の作品が一般市場に出まわることには興味があるが、本業はあくまでCG映像制作でありプロ原型師になることが目標ではない」と語る。
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WSC#081プレゼンテーション作品解説 |
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空母ヲ級 ver.K
from 『艦隊これくしょん -艦これ-』ブラウザゲーム版
ノンスケール(全高200mm)レジンキャストキット
※本作品につきましてはワンフェス会場での展示、及び、『ワンダーショウケース』公式Webサイトへの掲載のみとなります。その旨、ご了承いただければ幸いです
普段はCGアニメーターを生業としているkuniが、あくまで趣味のレベルで「習作」としてZBrushを駆使しモデリングしはじめた『空母ヲ級』(『艦隊これくしょん -艦これ-』ブラウザゲーム版)。その習作がみるみるうちに完成度を高めていき、ポリエステルパテやファンドなどを使ったアナログによるフィギュア造形の経験が一度もないままガレージキット処女作と化し、そしてその処女作にていきなり『ワンダーショウケース』に選出される──そんな冗談のような夢物語が現実化してしまったことに、まずは驚いてください。
そして次に驚くべきは当然ながら、件の作品の圧倒的なまでの完成度の高さと迫力、存在感でしょう。「全高200mm」とは言いつつ空母ヲ級は「異形」としか表現することのできない特異なプロポーションのため、塊としてのボリューム感は相当なもの。しかも、そのボリュームに見合った、(「これはベテラン プロ原型師の仕事である」と言われても素直に納得してしまいそうな)粗密感まできちんと計算されたディテーリングが過不足なく施されている事実は「驚愕」のひとことに尽きるはずです。
■空母ヲ級 ver.K モデルフィニッシャー(完成見本作成)/おつあき(G-MODELING.INFO)
http://www.g-modeling.info
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※kuniからのコメント |
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普段は小さなCG映像制作会社でアートディレクターという肩書きで何でも屋をしています。CG畑の方には、アニメーター寄りのジェネラリスト、と書くと分かりやすいかもしれません。
「あなたは特異すぎる!」
これは先日某所にて散々言われた言葉です。デジタルモデリングのみでその他のフィギュア製作に関する作業が一切できない人間がフィギュアを作っている、ということがとてもめずらしかったようです。
長年PCモニター越しにしか己の作品と向き合えなかった自分からすると、3Dプリンターが普及しつつあるいま、手で触れることのできる作品をこの世に生み出せそう! 生み出したい! と思い至るのは当然の流れでありました。
当初はほしいフィギュアのイメージは頭の中にある、しかしフィギュア製作に関する技術も知識もない、といった状況でしたが、デジタル原型交流会や初心者に寛容なディーラー7144に参加することで、いろいろな方に助けていただきながら、なんとか完成にこぎつけられました。本業のCGムービー制作は基本集団作業ですので、頭の中のものを具現化するために誰かの助けを借りる、というのは得意なのかもしれません。
私の場合、突出したセンスや積み上げてきた何かを評価されて、というよりかは、デジタル造形ブームの波がやってきた場にたまたま居合わせてしまった、というラッキーな一面が強いのかもしれません。「こいつにも出来たんだから俺も !私も!」と思ってくれる方がいれば幸いです。きっと楽しいですよ。沼が待ってます(笑)。
今後はデジタル以外の工程も経験してみて、こつこつとおもしろい活動をしていければと思っております。
最後に、ディーラー代表のしげるさんとメンバーの皆さん、フィニッシャーのおつあきさん、twitterやデジタル原型交流会で絡んでいただける皆さま、ここまで読んでくださった皆さま、挙げていけばキリがないのですが、この場を借りて厚く御礼申し上げます。
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