 |
|
 |
WSC #082 MICHIRU imai
[うろこもん]
ようやく身に付けた「セルフコントロール能力」
安定感が兼ね備わった実力派の今後に期待値MAX!
'12年夏のワンフェスにディーラー初参加。そこには自らの手により描かれた大判の水彩画が飾られ、その創作キャラクター画を立体化したフィギュア“竜の落とし娘”が販売されていた。
その際のインパクトはじつに強大であり(6,000円もする創作系作品でありながら、会場に持ち込んだ30個をいきなり完売させてしまったというのも驚きに値する話であろう)、躍動感としなやかさに満ち溢れ、確かなデッサン力に基づき造形されたそれは、事実上のフィギュア処女作として考えればほぼ100点満点。あえてマイナス査定するとしたら「WSC#048 OZの作風に酷似しすぎている」という1点に尽きたのだが、それもそのはず、「そもそも原型師になろうと思った理由が、WSCに選出されたOZさんの作品を見て“美少女フィギュアのジャンルの中にこんなにスタイリッシュな造形があるんだ!”と衝撃を受けたことにあり、その結果、意図的にその作風を造形に採り入れた」というのだから、つまり同作品は彼女にとっての「この世界へ入っていくための習作であると同時に、ある種の通過儀礼的なもの」であったのだろう。
そしてWSC的にはすでにこの段階で彼女のことを「次期WSCアーティスト候補」と位置付けており、1日も早くOZ色がよい意味で自然と抜け落ちていく(もしくは自身の資質にしっかりと馴染む)段階へ達することを切望していたのだが、そのときどきの自分の気持ちのあり方がそのまま作品に(それもフィルターをほとんど通さず)反映されてしまうタイプの造形作家である旨がその後発覚。よく言えばそれこそ「ほとばしる熱いパトス」が作品から放たれているわけだが、たとえば「精神的に病んでいるときに造形した作品は、それを見る側にそのときの彼女の精神状態が筒抜けになってしまう」とも言え、何度か直接「もう少しだけ造形対象を突き放し、客観性を持って作品製作に取り組んだほうがいいと思う」的なアドバイスを送った旨を覚えている。
そして、ディーラー初参加から早3年半──今回彼女のWSCプレゼンテーション作品となった『「化猫陰陽師」月影』を見るに至り、「ああ、もう(いろいろな意味で)大丈夫だ」という確信に至ったというわけだ。
曰く、「造形活動のスタートが遅かったぶんだけいまもまだ焦っているけれど、WSCに選出されようやくひと息付けた気分」とのことだが、これを機に一気にステップアップが図れる逸材である旨は保証しておきたい。
|
 |
text by Masahiko ASANO |
 |
みちる いまい●19XX年9月20日生まれ。幼少期からアウトドアな少年的趣味力が強いタイプであった反面、絵を描くことがとにかく得意で、『シルバニアファミリー』の食器を紙粘土でリアルに作り込むことなどにも没頭。そうした才能を生かし女子美大付属高校に推薦で入学、エスカレーター式で同美大に進み油絵を専攻したものの、「油絵で食べていくことは事実上不可能」という理由から就職活動をせぬまま卒業してしまうことに。その後、インターネットを通じて「最近はフィギュアというものが流行っているようなので、そちら方面でならば(自分の美術的才能を生かして)食べていくことができるのではないか?」という発想が生じ、結果、'12年夏のワンフェスに“うろこもん”名義にてディーラーデビューを果たす。そしてその初参加のワンフェスでフィギュアメーカーからいきなり声がかかり、以降はワンフェス用の新作発表に重きを起きつつも、その合間にフィギュアメーカーから発注された美少女フィギュアの原型製作を生業としていくパターンを確立。今後、より一層の飛躍が期待される女流作家である。
|
 |
|
 |
WSC#082プレゼンテーション作品解説 |
|
 |
© tsukikage / MICHIRU imai 2016

「化猫陰陽師」月影
from WSCアーティスト自身による創作作品
ノンスケール(全高220mm)レジンキャストキット
■ 商品販売価格
ワンフェス会場特別価格/15,000円(税込)※ワンフェス会場販売分100個限定
ワンフェス以降の一般小売価格/19,800円(税抜)
ディーラーデビューを果たした'12年夏のワンフェスからすでに「次期WSCアーティスト候補」に名を連ねていた実力派が、いよいよ満を持しての『ワンダーショウケース』選出です。そもそも美術的才能に長け、造形作家として眺めたときにも高いデッサン力と空間構成能力が特筆に値していたMICHIRUですが、最近になり創作キャラクターデザイン能力がめきめきと向上すると同時に緻密な造形能力を身に付けるに至り、完全にWSC選出基準をクリア。彼女の中には「西洋風のドロドロとした世界」「純粋にかわいらしいネコ耳系美少女」「和風テイストを有するゲームキャラクター風の闘う美少女」という3つの世界観が存在するそうなのですが、その3つ目に相当するプレゼンテーション作品『「化猫陰陽師」月影』は、そうした彼女の資質が十二分に反映された創作キャラクター作品となります(※プレゼンテーション作品内には着物の柄を再現するための家紋のデカールが付属しています)。
また、造形そのものとは直接関係ありませんが、ぜひとも注目していただきたいのが彼女の色彩センスと塗装技術の驚異的な高さです。ペイントマスター製作などのプロフィニッシャーの仕事にもトライしてほしい逸材と言えるでしょう。
|
 |
※MICHIRU imaiからのコメント |
|
 |
■完全に油断していました
「貴方を次期WSCに選出したいと考えています」。最初はこの内容のメールを見て、次期だから次の作品に期待していますよ、という意味なのかと勘違いし「次回作がんばります!」みたいなトンチンカンな返事をしてしまいました。実際、「次の作品こそがんばろう」と思っていたしWSCに選出していただくほどの技術力があるとは思いませんので、正直最初断ろうかと思ったくらいです。
えーと……造形に関して何を書けばよいのかな……。
私の場合はオリジナル作品が主なので、そのキャラの性格や感情は私が理解できる範囲のもの。そのときどきに感動したものを詰め込み、そのときの気分によって着る服がガラリと変わったり調子よくお喋りできたり、人見知りになったりする私自身と同じように、キャラや作風自体が大きく変わります。そんなふうに自分の好きな物を作って、まったく知らない誰かに「貴方の作品が好きです」と言っていただける、こんなに幸せなことはないです。
製作過程はとても苦しいですが、完成したときのよろこびと、それがあるから苦しいことなんか直ぐに忘れてしまいます。
■WSCは私にとって重要なコンテンツ
単に仕事探しをしていて出会った原型師という仕事、「これなら私にもできるかも」最初はそんなアルバイトを選ぶみたいな感覚でした。それだけだったらここまで続けられたか正直不明です。歴代WSCの作品を見て衝撃を受けていなかったら……もしかしたら、ちょっとやってみて、「思ったより難しいな~」って、アッサリ辞めてしまっていたかもしれません。
だけど、そんな自分でも、感動できるものに出会えたから、成長できました。
誰かに感動を与えられるように、今後も造形を長く続けていきたいです。
“あこがれは画狂老人 北斎”
|
 |
|
 |