アーティスト紹介

WSC#117 さより

[針魚工房]

あの『ネコぱら』の原作者がワンフェスへ参戦!
イラストレーターならではの造形表現に注目せよ

 2014年より“NEKO WORKs”というゲームブランドからリリースがはじまった美少女アドベンチャーゲーム『ネコぱら』。これまでに全世界でシリーズ合計600万本の売り上げを記録する大ヒット作と化すと共に、2017年にはOVA化、2020年にはテレビアニメ化されるという怒涛の展開を見せるに至ったことはつとに有名だ。そのNEKO WORKsを立ち上げた代表者であるさよりと、2023年冬から造形作家としてワンフェスに“針魚工房”名義にてディーラー参加をしはじめたさよりが同一人物であることをどれだけの人がご存知であろうか?
 ネコぱらのヒットをきっかけとし、ずっと憧憬を抱いていたフィギュア化を積極的に進めていったところ、自分自身でフィギュアを造形したいという気持ちが加速的に強くなり、2020年には自身のフィギュアメーカー“NEKOYOME”を設立。そこですべての夢が満たされたと思いきや、ゲーム製作という本業が目立ちすぎたため造形作家としての活動がなかなか認知されず、また、ネコぱらなどの自家コンテンツだけでなく他社版権のフィギュアを造形してみたいという気持ちもあったため、その欲望を満たすにはワンフェスへディーラー参加するのがいちばんだと考え現在に至っているのだという。
 ちなみに造形作家としてのさよりのいちばんのストロングポイントはやはり「絵が描ける」ことであり、ZBrushをたったの10日である程度までマスターし(もっとも、本業の都合で造形に費やせる時間が限られていたため、パーツ分割等まで含めきちんと使いこなせるようになるまでは1年かかったそうだが)、まさしく「絵を描く感覚そのもの」で筋肉の流れ具合などを見事に再現しているのは「さすが」のひとこと。「絵が描ける人間がZBrushを使いこなせるとこのような造形になる」という、よいお手本となっていることが分かるはずだ。
 なお、ワンフェスでの活動はどちらかというと「目的」ではなく造形活動をアピールするための「手段」だと考えているため、今後はものすごく複雑な造形物や大きくて派手な造形物を製作し、組み立てやすさよりも見た目に全振りした非売品の展示にも力を入れていくことで、「会場でしか見ることのできないすごい作品を作っているディーラー」になることを見据えた活動を行っていきたいという。なんともユニークな考え方だが、ワンフェスの名物ディーラーとなる日もそう遠くはないはずだと思えるものがあるのも事実である。

text by Masahiko ASANO

さより生年月日非公開。中国 湖南省生まれ。小学生のころに日本アニメ輸入ブームの影響から、中国最初のオタク世代となる。中学生時代からPCでインターネットに触れ、オタク沼にどんどんハマり、漫画やイラストを趣味としてたくさん描くように。イラストの道に進みたかったので高校は美術系の学校に入り、言葉の壁も破りたかったため独学で日本語をマスターする。大学は北京の清華大学美術学院へ進み、入学後すぐにオタクサークルへ加入。日本語が分かるため同じサークル内の日本人留学生たちと仲良しになり、夏休みは毎年日本旅行&コミケにサークル参加し、同人誌を頒布していたという。大学卒業後は日本の美少女ゲーム会社にグラフィッカーとして就職し、あこがれの秋葉原へ移住。3年後に日本人男性と結婚し会社から独立、(株)アマニタの取締役として起業し自身のゲームブランド“NEKO WORKs”を設立することに。2023年冬からは造形作家としてワンフェスに“針魚工房”名義にてディーラー参加をしはじめ、美少女ゲーム会社経営との二足のわらじ状態にて造形活動にも力を入れはじめている。

X(旧ツイッター) https://twitter.com/sayori_nw

WSC#117プレゼンテーション作品解説

© ALICESOFT


『キラキラ 戦闘ver.』

from PCゲーム『ドーナドーナ いっしょにわるいことをしよう』
1/7スケール(全高192mm)レジンキャストキット

 

完成見本製作/あきもとはじめ


※大変恐縮ですが、諸般の事情により本プレゼンテーション作品は展示のみで販売はいたしません。各WSCアーティストのブースにて直接お買い求めください


 美少女ゲーム出身の人気イラストレーターであるさよりは、オタク趣味関連については漫画・アニメ・ゲーム・フィギュア・服飾・男性向け女性向け成人向け問わずすべてに対し興味があり、その中でも美少女コンテンツがやはりダントツに抜きん出た存在と化しているとのこと。それゆえに18禁ゲーム『ドーナドーナ いっしょにわるいことをしよう』にもなんの抵抗もなく接することができ、ワンフェスのディーラーとしての初作品となったキラキラ 戦闘ver.は「このキャラクターを知らない一般の人が見ても“かわいい!”と思ってもらえるように心がけて造形した」と語ります。
 また、造形時には自身がイラストレーターであることの強みを十二分に活かすことができ、「他人が描いたイラストでもまったく悩まず絵の特徴を立体にすんなり翻訳できる」そうで、意図的に“さより風味”を消し、元のキャラクターデザインをそっくりそのまま再現した作風にもぜひ注目してみてください。

© ALICESOFT


© ALICESOFT


※さよりからのコメント

 はじめまして、針魚工房のさよりと申します。世間では『ネコぱら』の原作者・イラストレーターとして認識されていますでしょうか、私自身としては作品の影に隠れず、ひとりの人間として表に出たいなぁと強く思い、個人ディーラーとして活動しはじめたばっかりです。『ワンダーショウケース』は一般参加のころから存じており、ずっと雲の上の存在だと思っていましたが、まさか初ディーラー参加で作ったガレージキットが選ばれるとは夢にも思いませんでした……!
 美少女ゲームが大好きすぎて日本に来てここまで来れた私ですが、初めての版権ガレージキットはやはり美少女ゲームでなければいけないと思い、私を沼に引きずり込んだALICESOFTさんの『ドーナドーナ』からキラキラを選んで製作しました。大きな武器を持つ美少女はきっと立体に映えるはず! そう考えた私は見事にチェーンソーで地獄を見てしまいました……初めて武器を造形することもそうですが、版権元から設定資料をもらうわけにもいかず、ディテールのデザインやシルエットの曲線を自分で考えないといけないのがとても大変でした。公式の設定や監修を抜きに造形できるディーラーの皆さんは本当によくがんばっていると思いました……! こんなこともディーラーになってみないと一生分からなかったと思うので、本当にワンフェスに出てよかったです!
 『ワンダーショウケース』に選ばれたことはとてもうれしいですが、やはりディーラー一年生としてまだまだがんばらないといけないところが多く、これからもさまざまな造形をして腕を伸ばしていきたいと思いますので、どうか見守っていただけますと幸いです!