▲すでに施工デザインが毎回流用になっているため、この角度から撮影するといつの回のワンフェスだかまるでわからない(苦笑)WSCブース。でも一応、お約束的に掲載させていただきます
■さてさて。模型雑誌への広告出稿というかたちから、WSC公式Webサイトに発表の場を移したWSCプレゼンテーション報告書も今回で早4回目。そんなこんなで、今夏ワンフェスにおけるWSCのアフターリポートをまたまた綴らせていただきます。
まずは何より、今回もまたWSCブース(幕張メッセ 4ホール内)へ足を運んでくださった方々、誠にありがとうございました。
スタッフ一同、謹んでお礼を申し上げます。
■それでは、まずは毎度恒例の隠し隠さずの赤裸々な売り上げ報告から入りましょう。
WSC#087 クッカのプレゼンテーション作品『FQ-117』(ワンフェス会場特価/18,000円)は、ワンフェス会場販売分30個限定で23個の販売(残数7個)。WSC#088 ハトのプレゼンテーション作品『カリオストロ(セーシュン☆ユニフォームver.)』(当日版権扱いのみでの販売/ワンフェス会場価格30,000円)は、ワンフェス会場販売分40個限定で25個の販売(残数15個)。WSC#089 JACKのプレゼンテーション作品『レム』(当日版権扱いのみでの販売/ワンフェス会場価格16,000円)は、ワンフェス会場販売分80個限定で33個の販売(残数47個)……という結果と相成りました。
■ちなみに前回より、ワンフェス会場販売分におけるWSCプレゼンテーション作品の最大生産数を100個から80個まで絞り込むことになってしまったわけですが(それでもやはり3作品とも完売しなかったという……)、今回は、「クッカによるFQ-117以外の2作品は当日版権扱い=ワンフェス会場のみでの販売」というかなり特殊な状況。
さらにクッカのFQ-117は創作系(=キャラ人気に頼ることができない)で18,000円、ハトのカリオストロは30,000円もする高額商品ということもあり生産数をいくつに設定するかスタッフ一同悩みに悩んだのですが、結果から言えば「ここまで生産数を抑えに抑えたのに今回も完売作品がひとつも生じなかった」というのは赤字や黒字どうこうとはまったく違った部分でやはり「う~ん……」と悩ましい気分になってしまいますね。
ただし見方を変えると、「創作系ロボットで18,000円もする」クッカのFQ-117が23個も売れたというのは、じつは「大健闘」と言うこともできるはずです。
実際のところ、FQ-117は事前にインターネット上で「その複雑難解なデザインと造形がとにかくすごすぎる」とかなり話題になっていたので。
▲WSC#087 クッカが次期WSCアーティスト候補としてピックアップされてから、実際に選出されるまでにじつに6年という年月が費やされたという旨はアーティスト解説内に綴りましたが、その「6年前」のデジカメ画像を今回外付けHDDから発掘してみました。「この段階ではWSCへ選出することができなかった」というその理由が分かっていただけますでしょうか?
■ハトのカリオストロに関しては造形作品としてのすごさを称える声が多く聞かれた反面、やはり30,000円という価格に対し食指が伸びなかった人が多かったようです。
確かに「30,000円」という額面になると、いくら造形作品として完成度が高くとも「カリオストロ」というキャラクターに対し強い思い入れのある人以外はなかなかポン!と気前よく払える金額ではないですよね……。
それゆえに、今回はいつも以上にWSCプレゼンテーション作品の完成見本をさまざまな角度からじっくりと撮影していた方が多いように感じました。
▲こちらは、前回=2017年冬のワンフェスにて撮影したWSC#088 ハトのカリオストロ(このときは販売なしの展示のみで、しかも時間が足りなかったため、3Dデータを光造形にて立体出力したパーツに直接塗装を施していたとのこと)。WSCプレゼンテーション作品の画像とじっくり見比べると、じつはプレゼンテーション作品ではいくつもパーツが追加されバージョンアップが図られたことに気付くはずです
■対して、JACKのレムが当日版権扱い=ワンフェス当日でしか買えないというのに33個しか売れなかったことには少々驚いたというか意外でした。じつを言うと宮脇センムはこのレムがかなりお気に入りで、事前に「レムだけは100個生産してもええんとちゃう?」的な発言もされていたのですが、結果から言えば80個生産は大正解。売れ残った47個は処分するしかないので、100個生産していたらその金銭的ダメージはもっと大きくなっていたわけですから。
ちなみにこのレムの販売数が示すものは、「個性的なオレ流アレンジを色濃く施した造形作品がどんどん受け入れられない世の中になっているんだろうな」ということです。おそらく、今回JACKのレムを購入した人は、JACKのレムを心底気に入っているんだと思うんですね。ただし、そうした感覚を持ち合わせた人の絶対数が10年ほど前と比べるとおそろしく少なくなっているのではないか、と。
当然ながら個人的には「……そもそもガレージキット的造形って、2Dの絵そっくりに造形することのみが評価に直結するものではないでしょう?」と思うのですが、これもまた2010年代における現実だと受け止めるしかないんでしょうね。
▲WSC#089 JACKのレムは、2017年冬のワンフェスに展示されていた完成見本(左端)では立体的に造形されたまつ毛がかなり淡い水色で塗装されていました。造形自体はおもしろいもののこの塗装に対し多大な違和感を覚えたため(何せアニメではまつ毛は黒なわけですから)、まずはぼく(=あさの)がPhotoshopにて「せめてまつ毛の根本の色を濃紺に変更し、まつ毛の先端に向け水色にグラデーションをかけたらどうか?」という参考画像(中央)を作成。そしてJACKは今回のプレゼンテーション作品でそれを実行に移してくれたわけですが(右端)、これにより立体的に造形されたまつ毛の効果は確実に高まったと思います
■もっとも、です。
ここのところ毎回「生産数を抑えたにも関わらずWSCプレゼンテーション作品が今回も完売しなかった」的なことを報告せざるを得ないため正直「やれやれ」な気分なんですが、ただし、だからと言って「(プレゼンテーション作品がもっと売れて黒字になるよう)WSCの選出基準を変えよう」などということは1%も考えていません。
そもそもWSCは、「圧倒的なものを作りたい、ここを出発地点としてその先を目指して行きたいという熱きスピリッツを胸に抱いている人たちが、森の中に隠された木のように埋もれていってしまうのは悲しすぎやしないだろうか?」という考えから発足した新進造形作家育成システムです(※とは言いつつ、完全に対ワンフェス仕様の造形活動に勤しんでいる人であればベテランのプロ原型師を選出することもありますが)。
よって、赤字や黒字どうこうは、本当のところはどうでもいいんです(……とは言いつつ決して「ボランティア」ではないので、ほとほと困り果てているわけですが)。
それゆえに、WSCアーティストの選出基準はWSCが続く限りは絶対に変えませんし、仮に変えてしまったらWSCはその存在理由を自ら否定することになってしまうわけです。
■そしていま現在、「次期WSCアーティスト候補」としてその動向を毎回チェックし続けているアマチュア造形作家は10名ほどいるのですが、ぶっちゃけ、彼(彼女)らの実力がWSC基準に達してWSCアーティストとして選出されたとしても、そのプレゼンテーション作品もおそらくは大した数が売れないと思っています。
ストレートに言ってしまえば、WSCが注目するようなおもしろくてトンガッた造形作品や造形作家は「確かにすごいとは思うけれど(個人的に大好きなキャラのフィギュアでない限り)、そのプレゼンテーション作品にお金を落とすまでには至らない=だからこそ写真をバシバシ撮って記録しておきたい」という感じなんでしょうね。
……であれば、「プレゼンテーション作品の売れ残りを出さないためには当日予約注文を取り、後日商品を発送する」という手もあるにはあると思うのですが、でも、それって何か猛烈に「つまらない」じゃないですか。
じつは近い将来、こうした販売システムを実際に採り入れざるを得なくなる可能性は結構高いように思っているんですけれど、できれば可能な限り「悪あがき」を続けてみたいです。ぼくが購入者側の立場であれば、やはりワンフェス会場でそれが買えなくなってしまうのって「本末転倒」としてしか受け取れないですから。
■ちなみにこの原稿を綴っているのはワンフェスの翌日=7月31日(月)なため、さすがにまだ次期=第34期WSCアーティストの選出作業には着手しはじめていませんが、ぼくの中ではなんとなく「こちらからのオファーに対し本人が快諾してくれるのであれば、次回はこの3人に決まるんじゃないかな?」というビジョンは朧げながらもう描かれつつあります。
というわけで第34期WSCのプレゼンテーションもまずまちがいなく実施されると思いますので、次回のワンフェスにてまた再見、です!
▲本文原稿内でも触れていますが、今回はいつも以上にじっくりと時間をかけWSCプレゼンテーション作品の完成見本をさまざまな角度から撮影していた方が多いように感じました。もちろん、これはこれでうれしいんですけれどね、当然ながら……