アーティスト紹介

▲今回は『WSC創設20周年記念プレゼンテーション』と『第37期WSCプレゼンテーション』が合体したブースデザインだったため、当然のようにその施工ブースは超巨大。そのすべての姿を写真に収めようとすると、このように相当に横長な絵となってしまいました


■はい。というわけですでに恒例となっております「WSC公式Webサイトという場を使ったWSCプレゼンテーションのアフターリポート」を今回も綴らせていただきます。
 まずは何より、台風6号関東直撃騒動の中、今回もまたWSCブース(幕張メッセ 4ホール内)へ足を運んでくださった方々、誠にありがとうございました。
 スタッフ一同、謹んでお礼を申し上げます。


■なお、「どのアーティストのプレゼンテーション作品が何個販売され何個売れたか」という話は2回前から割愛することに決めたため、今回もそこは綴りません。
 ……ということになっているのですが。
 「綴りません」と断言しながらそれをいまさら綴るのは往生際が悪いというか「何を考えているんだ!?」と怒られてしまいそうですが、WSC#099“しぃた”のプレゼンテーション作品『ゴジラ第4形態“覚醒Ver.”』(ワンフェス特価ですら23,000円もする高額商品)が11時前に完売したという事実は、どうしても記しておきたいのです。
 しかも、しぃたの個人ディーラーブースには劇場映画『シン・ゴジラ』を手掛けたVFXスタッフが個人的に激励に訪れてくださったそうで、そうした話を聞くと、「やはりあの広いワンフェス会場内から本当にすばらしいものを選出しないといけない」というWSCの基本概念に立ち戻ってしまい、(よい意味で)胃が痛くなりますね(苦笑)。
 もっとも、見方を変えればそれぐらい、しぃたの『ゴジラ第4形態“覚醒Ver.”』は「常時停滞気味の怪獣造形の世界に対し、(WSC#063 大山 竜の『ガラモン』以降久々に)風穴を開けた」とぼくは本気で考えています。

▲しぃたのプレゼンテーション作品『ゴジラ第4形態“覚醒Ver.”』はそもそも猛烈なクオリティーを有していたのですが、WSCプレゼンテーション作品化するにあたり、筆者(あさの)が「ここをこう修正すればもっとずっとベターな作品になる」と考えた箇所と、しぃた自身が「本当ならばこういう作品に仕上げたかったのだが余力がなくて達成できていなかった」という箇所へ手を加えることに。しぃたが3DCGソフトのsolidworksを使いモデリングした街灯、信号機、ガードレール、縁石といった「あまりにもこまかすぎてレジンでもホワイトメタルでも絶対に成型できない」というパーツは、海洋堂社内の光造形3Dプリンター Form2の専用レジンでパーツ化することに


■次いで。WSCナンバーで見事(?)キリ番の#100をゲットした雨谷 怜に関しては、アーティスト解説文内ではその資質をベタ褒めしたものの、本音を言うと(←ちょっとズルいな、オレ)、「仮に少しでも自己満足し進化の速度を落としてしまったら、そのままそのスタンスに長期停滞してしまう系の造形作家」だとも思っているんです。
 というのも、とにかく彼は非常に勤勉かつセンシティヴだし(プレゼンテーション作品のパーツ分割を見るだけでも、それが分かる人には分かるはずです)、たぶん雨谷は今後“売れっ子原型師”になれることは確実だと思う反面、「でもじつはまだ何かが決定的に足りていない」と思うんですね。それをいまここで言葉にすることもできるにはできるのですが、あえて意地悪にそれはやめておこうと思います。
 というわけで今後も血を流す勢いでがんばってください、雨谷 怜!

▲左は、前回のワンフェス会場においてSAKAKI Workshopブースに展示されていた『英霊旅装 アビゲイル・ウィリアムズ』。今回WSCプレゼンテーション化されるにあたり、原型に修正は一切加えられていません。そして右は、レジン成型業者に見積りを取ってもらうため10mm角がプリントされたカッティングシート上に並べられたアビゲイルの全パーツ。「デジタルモデリングだから」どうこうではなく、そのパーツ分割のていねいさ具合に雨谷の生真面目な性格が見て取れるのではないでしょうか


■そしてWSC#101となった狐火郎に関しては、なんというか……「セルフマネージメント能力をもっともっと身に付けて、フィギュアメーカーの担当者と真正面から対峙し、自分の造形資質にフィットした仕事だけを選り好んで奪い取れるぐらいのスタンスまで成長してほしい」というひとことに付きますね。
 とにかく彼女における造形能力のストロングポイントである「躍動感」「空間構成能力」が活かされたPVC塗装済み完成品フィギュアって、じつはほとんどリリースされていないんですよ。そのほとんどが、グラビア立ちポーズか座りポーズだけ。
 ぼくに対し「WSCに選んでいただければ、必ず《ただのイケメン量産機》から次のステップに進める」とまで言い切ったんだから、とにかくがんばるしかないっしょ!

▲狐火郎のWSCプレゼンテーション作品『日本号』も、原型に修正を加える余地が存在しなかったためそのままの状態でWSCプレゼンテーション作品化。ただし、狐火郎は「決して“下手”ではないものの、塗装の作風が若干古臭い」と感じられたため、WSC用のオフィシャル画像を撮影する前に、Skypeを使った口頭指示にて「部分的な塗装の塗り直し」を実行することに(右のデジカメ画像が前回のワンフェス会場にて展示されていた日本号で、左のデジカメ画像は「部分的な塗装の塗り直し」を終えたあとに狐火郎から送られてきたもの)。「肌色に発色のよい影を落とすように」「グロス、セミグロス、フラットのツヤをもっと明確に使い分けてメリハリを付けるように」程度の指示だけでここまで見栄えがよくなってくるとは考えていなかったので、これはうれしい誤算でした


■さて。すでにご存知のとおり、今夏のワンフェスでは第37期WSCプレゼンテーションと同時に『WSC創設20周年記念プレゼンテーション』も実施されました。
 スタイル的にも施工デザイン的にも5年前の15周年記念プレゼンテーションをほぼそっくり踏襲したものでしたが、第28期('14年[夏]選出)~第36期('19年[冬]選出)における25名分のWSCアーティスト作品(それも、「WSCプレゼンテーション作品」+「WSC選出後の自信作」の2作品展示なので、計50作品!)が並んだ光景は、やはり「圧巻」のひとこと。
 WSCレーベルプロデューサーという立場から眺めても、その「ダダ漏れ状態で放たれているライトスタッフ(=正しい資質)の高密度感さ具合」に、ひたすら感動するしかなかったというのが偽らざる本音です。

▲いま現在エルドラモデルに所属しているWSC#088 ハト(第33期WSC)は今回のWSC創設20周年記念プレゼンテーション対象アーティストであったため、エルドラモデル全面協力の下、前回はWonder Festivalオフィシャルグッズショップ脇に展示された『ワンダちゃんNEXT DOORプロジェクト』FILE:07 ポコVer.の等身大ワンダちゃんが今回はWSC創設20周年記念プレゼンテーションにて再展示されることに。その理由はもちろん、同ワンダちゃんのレジンキットの原型製作がハトであったためです。そして右の画像は、ワンフェス当日におけるWSC創設20周年記念プレゼンテーションブース。展示作品をデジカメで撮影しようと、ほぼ終日大混雑状態でした


■また、これは割と余談じみた話になってしまうのですが──WSCに選出された造形作家たちはやはり「同士」もしくは「戦友」的な横の意識の繋がりがものすごく強い人々が多く、20周年記念プレゼンテーション会場に自らの作品を展示しにやってきたWSCアーティストたちが、「同窓会」的な感じで、いつまでもその場を立ち去ろうとせず延々と談笑し続けている風景には、何かちょっと「くすっ」とさせられてしまいました。
 もちろん、WSCレーベルプロデューサーとしての、ある種の誇らしい気分まで含めての「くすっ」ですが。

▲ワンフェス閉場時間の17時を迎えた瞬間、WSC創設20周年記念プレゼンテーション対象アーティストたちがわらわらと同ブースに直行、展示作品をものすごい勢いで梱包していく様子はある意味迫力満点(?)でした。そして17時30分、最後に宮脇センムと筆者が中央に居座るかたちで、WSCアーティスト一同集合の記念撮影を実施(顔出しNGのアーティストは顔を隠していますが)。いやあ、いずれにせよ感慨深いカットですね


■なお、「20周年」というあまりにも大きなひとつの区切りが付いたことにより、ぶっちゃけ、いまぼく自身は(当初からそうなるだろうと予想はしていましたが)燃え尽き症候群状態にあります。
 さらに言うと、冷房が一切入っていなかった中での20周年記念プレゼンテーションのセッティング作業(ワンフェス前日)と、冷房こそ入っていたものの「……ホントにエアコンちゃんと動いてるの!?」と疑うほど蒸し暑かった次期WSCアーティスト選出作業(ワンフェス当日)の過労がたたってその後は軽い熱中症状態が続いており、いまこの原稿を書いているだけでもあっぷあっぷ状態。
 本当ならば今日(=7月31日)からでも第38期WSCアーティストの選定作業に取り掛からないといけないのですが、さすがに「ちょ、ちょっと休憩させてください(泣)」という感じです。

▲ワンフェス前日のWSC創設20周年記念プレゼンテーション作品搬入日、自分の作品の展示が終わっても、延々とその場を立ち去ろうとしないWSCアーティストたち(中には、今回の作品展示対象ではないWSCアーティストも含まれているし……)。明日は朝早く起床しないといけないんだから、いいからもう帰れよ!(苦笑)


■ただし。
「……うわっ、いったいなんなんだこの不思議かつ卓越した才能は!」という次期WSCアーティスト候補を数人ピックアップする行為自体は完了しているので、その対象者たちが第38期WSCアーティストへのオファーに対し首を縦に振ってくれれば、第38期WSCプレゼンテーションは必ず行われるはずです(そのころまでには、ぼくの燃え尽き症候群も必ず収まっているはずですし)。
 というわけで、来冬のWSCプレゼンテーションにて再見、です!