アーティスト紹介

▲この写真だとちょっと分かりづらいですが、『ワンダちゃんNEXT DOORプロジェクト』の終了に伴いWFオフィシャルグッズショップの施工デザインが一新されたため、今回のWSCブースはWFオフィシャルグッズショップと隣り合わせの構造となりました


■というわけで、すでに恒例となっております「今期WSCプレゼンテーションのアフターリポート」を以下に綴らせていただきます。
 今冬のワンフェスは新型コロナウイルス騒動で戦々恐々の方もいらっしゃったことと思いますが、まずは何より、今回もまたWSCブース(幕張メッセ 4ホール内)へ足を運んでくださった方々、誠にありがとうございました。
 スタッフ一同、謹んでお礼を申し上げます。


■……もっとも、「どのアーティストのプレゼンテーション作品が何個販売され何個売れたか」という話についてはすでに触れないことに決めたので、「アフターリポート」と謳いつつも、どちらかと言うと「今回選出されたWSCアーティスト&そのプレゼンテーション作品の補足説明テキスト」みたいな感じになっちゃってるんですけどね、すでに。


■それではまず、WSC#102 RICOと、彼のプレゼンテーション作品『NTW-20 貴族体験館』から行ってみましょう。
 アーティスト解説にも言い訳がましいことを書きましたが、2期連続で同じディーラー=SAKAKI Workshops、しかも同じ職場で同じ仕事=フィギュア造形とは似て非なるリアルタイム系キャラクターモデリングをしている人間をWSCアーティストとして選出することに対し、当然ながら迷いはあったんです。ぼくが外野から揶揄されるのはどうでもよいのですが、RICOの存在が妙な色眼鏡通しで見られてしまうことに対する怖さがあったので。
 ただし、そういったリスクを犯してでも「いま」彼のことをどうしても選ばざるを得なかったんですね。昨年夏のワンフェス会場に展示されていたサーフェイサー吹き状態のNTW-20 貴族体験館を見た瞬間に、「……コレをこのタイミングで選出しなかったら自分自身に対しウソをつくことになってしまう」という信号が全身に走ってしまったので。
 ただし大変だったのはRICOのWSC選出が決まった以降で、レジンキャストキット化するために原型の3Dデータを部分的に作り直したり、仕事を終えたのちの短い作業時間で立体出力したとんでもない数のパーツを磨いたり、その結果、フィギュアの完成見本が仕上がったのはWSC合同撮影会のギリギリ直前という緊張感溢れる展開に。そのおかげで、完成見本における白色部分のシャドウ吹き塗装は銃に巻かれたリボンのみでタイムリミットとなってしまい、正直に言うと「う~ん、もったいない!」というのが本音なんです。全身に過不足なくシャドウ吹きをしたら、作品がもっと立体的に見えてRICOの才能がもっときちんと伝わったはずなんですよ。これは本当に残念なできごとでしたね。

▲昨夏ワンフェスにて原型展示のみされていたNTW-20 貴族体験館。正直な話、このサーフェイサー吹きのグレー1色状態のほうが、原型の出来のすごさがストレートに伝わるのがなんとも皮肉ですなあ……。そして右は、同プレゼンテーション作品をレジンキャストキット化するにあたり、一部のパーツを手直ししつつパーツ分割した、立体出力直前状態のレンダリング画像(サイドテーブルパーツは割愛)。ダネルNTW-20の異常な精密感に目を奪われがちですが、フィギュア本体の肩のフリル、袖のシワ、エプロンの立体裁断表現にぜひ注目してください。塗装見本ではこの部分にシャドウ吹きがなされていなかったため立体感がやや乏しく見えますが、じつはここまでエッジの利いたモールドで造形されているのです


■続いて、WSC#103 荒木秀造と、彼のプレゼンテーション作品『ゲッコー戦士レオパルド』について。荒木に関してはワンフェス会場で「プライズなどの原型製作を生業としている」という話を聞いていたので、ある意味「一応プロ原型師ならば、まあ、これぐらいは作れて当然かな」とも思ったのですが、このゲッコー戦士レオパルド、とにかく見れば見るほど味わい深い。とにかく楽しみながら造形したことが感じ取れるだけでなく、彼の造形的資質がいたるところからじわじわと滲み出ている、と。結果、「コレをWSCプレゼンテーション作品にしても“自分には何がなんだかよく分からない作品”とか言われてしまうんだろうな……」と皆さんから思われることを覚悟しつつも、彼をWSCアーティストとして選出することには1%の迷いもありませんでした。
 ちなみにその後、アーティスト解説とプロフィールを綴るため荒木にSkypeを使いインタビューを行ったのですが、その際(いよいよここでバラしてしまいますが)、じつは彼が2浪の末に東京藝大の彫刻科へ入学し、大学院まで進んで卒業していたことが発覚! 東京藝大は5浪や6浪した末に入学をあきらめる人が続出するような日本における最高峰の美大なので、「……なるほど、彼の造形的資質やセンスはそうした背景に裏打ちされていたのか!」とひどく納得することに。
 というわけで以下に、荒木が東京藝大在学時にチェーンソーで製作した木彫作品を紹介させていただきますね。「こんなトンデモな作品が作れちゃう人間なんだから、そりゃあゲッコー戦士レオパルドが味わい深いのも当然だよなあ」と妙に納得してしまいました。

▲本文中に記した、荒木が東京藝大在学時にチェーンソーで製作した木彫作品。左は学部の卒業制作作品『見栄を切る』(「見栄」と「見得」をミックスさせた造語による、全長約4mにも及ぶカマキリ)。「迫り来るクルマにすら威嚇ポーズを切り出し轢かれて死んでしまう彼らの脳内スケールはこんな感じなのかなと、子供のころから考えていたことを表現しました」とのこと。そして右側2点は、大学院の卒業制作作品『夕暮れ』(全高3.5m。ちなみに夕暮れというタイトルは、制作中ずっと頭の中を流れていたTHE BLUE HEARTSの曲名からそのまま取って付けたそう)。「蝉と冬虫夏草の神秘的な魅力に惹かれて制作しました。入れ替わり別の生命を得ても目的はいっしょ。ただただ地上を目指す姿はなんとも美しいものだと」とは荒木からのコメントです


■そして、WSC#104 Kと、彼のプレゼンテーション作品『Android EL01(愛称=エル)』について、です。
 プレゼンテーション作品解説内でも綴りましたが、ワンフェス会場におけるKのブースでのプレゼンテーション風景を見た瞬間に「……あ、この人、“こっち側の世界の住人”じゃないな」ということは一発で理解できました。それゆえに、いわゆる“会社バレ問題”でKをWSCアーティストに選出するのは難しいんじゃないかと考えていたのですが、意外なほどあっさりとOKが出てしまい、よい意味で拍子抜けしてしまったという。
 ちなみにKの突出したデザインセンスと立体感覚、そしてエルの完成度の高さはアーティスト解説とプレゼンテーション作品解説で綴り切ってしまっているので正直「もう何も書くことがない」という状態なんですが、ワンフェス会場でプレゼンテーション作品の内容を直接見ることができなかった人にひとつだけ情報を提供しておきます。
 エルのキットにはK自身がDTPで製作したA4判型の厚紙製フライヤーが付属しているんですけれど、このフライヤーがまたカッコイイ!(下の画像を参照をしてください) 「このフライヤーは完全に“Kのプレゼンテーション作品の一部”として考えてもらって構わないので、何も制約は設けないから好き勝手に構成してください」とお願いしたところ、こちらが期待した以上のデザインとして仕上がってきました。
 もっとも、現役バリバリのプロダクトデザイナー(カーデザイナー)なんですから、彼にとってはこれぐらい「お茶の子さいさい」なんでしょうけれどね。

▲こちらがKのプレゼンテーション作品“エル”に付属しているA4判型フライヤーの表面&裏面画像。表面はZBrushによる新たなエルの全身レンダリング画像をkeyshotにて写実的に描写したもので、裏面はエルのメカニカルな肉体美を強調した胴体前後のレンダリング画像にて構成されています。ちなみにエルっててっきり有◯架純ちゃんがモデルだと思っていたんですけど、Kにその旨を告げると「……え? 似てます!? そこはとくに意識していなかったんだけどなあ」とのこと。確かにこのレンダリング画像を見ている限りでは、あんまり有村◯純ちゃんっぽくないですね

▲左は、昨夏ワンフェスでの、Kの個人ブース『96』におけるプレゼンテーション風景。この景色を見た瞬間に、「……あああ、ついに“モノホン”の人がこっちの世界へ攻めて来ちゃった!」と鳥肌が立ったわけです。ちなみにこのパネル出力画像を見ている限り、やはりモデルは◯村架純ちゃんに見えるでしょう? ……え? 見えない!? そうかなあ……。そして右は、今冬のワンフェスにおける『96』ブースの光景。Kからはあらかじめ「このAndroidシリーズは三幅対のイメージで、あと2体作成し3体揃っての完成を予定している」と予告されていたわけですが、今回早くもその2体目となる“IV-02 PROTOTYPE(イヴ02 プロトタイプ)”が発表されたことになります


■さて。いますでに第39期WSCアーティストの選考作業がスタートしているのですが、今年は『東京2020オリンピック・パラリンピック』の開催により、本来は夏に開催されるワンフェスが秋の開催となるため、第39期WSCのプレゼンテーションは今秋行われることになります。
 ただし問題はその先にあって、2020年秋のワンフェスと2021年冬のワンフェスの開催時期があまりにも近すぎるゆえ、WSCのプレゼンテーション準備期間が短すぎて時間が足りないため、おそらく2021年冬のワンフェスにおけるWSCのプレゼンテーションは「1回休み」となると思われます。
 もちろん、神風的なものが吹く可能性もないわけではないので、いまの段階で「2021年冬のワンフェスにおけるWSCのプレゼンテーションはお休みします」と断言してしまうのは明らかに時期尚早なんですが、一応、「そうか、そういう可能性が高いのか」ぐらいの感じで覚えておいていただけると助かります。
 ……というわけで、まずは秋のWSCプレゼンテーションにて再見、です!