プレゼンテーション報告書

■まずは何より、今回もまたWSCブースへ足を運んでくださった皆さま、誠にありがとうございました。スタッフ一同、謹んでお礼を申し上げます。
 前回より採用されはじめた「プレゼンテーション作品は各WSCアーティストの出展ブースにて購入していただく(プレゼンテーション作品をいくつ用意して買い手と対峙するかはWSCアーティストの判断に任せる)」という新たなスタイルの第2回目となった今夏のワンフェス。もちろん一部からはご不満の声も漏れ伝わってきていますが、WSCを継続していくためにはこのスタイルに移行するしかなかったのは前回ご説明したとおり。
 言わば“2ndシーズン”へと移行したWSCですが、今後も引き続き何とぞよろしくお願いいたします。


■しかし……選出アーティスト3名が全員男性で、3名とも顔出しOK(=アーティスト写真あり)となったのは、なんと第26期/2013年[夏]のワンフェス以来丸10年ぶり。「だからどうした」と言われてしまうと二の句が継げないのですが、女性造形作家の躍進と顔出しNG造形作家が増え続けている現状、レーベルプロデューサーとしてはちょっと感慨深いものがあった回のWSCとなりました。


■それでは、ここからは第41期WSCアーティストの3名にまつわるエピソードを綴っていきましょう。
 これまで自身のアーティスト写真を持ち込んだWSCアーティストは何名かいたものの、WSC#114 柚Pは、プレゼンテーション作品のメインビジュアルが自ら撮影した写真となりました。これは「メインビジュアルを持ち込んだ」というよりは、ぼくのほうが柚Pのツイッターにて発表されていたこの屋外ロケ写真の虜になってしまい、「ぜひこの屋外ロケ写真をメインビジュアルとして使わせてほしい!」と頼み込んだかたちになったのです。
 ちなみに柚Pが住んでいるのは広島県で、「広島ってこんな大雪が降るの?」と疑問に思ったのですが、柚Pの自宅は広島県の北部寄りなので皆がイメージしている広島よりもかなり雪が降りやすい地域だそうで。で、このロケ写真を撮った日は同地域に大寒波が押し寄せていたそうで、「いましかない!」と一眼レフ デジカメとマゼランを持ち出し凍えながら撮影したとのこと。
 結果、いわゆる“雪レフ”(雪がレフ板代わりになって被写体に光をまわしてくれる効果)も手伝い、極上の写真に仕上がったというわけです。

▲柚Pが広島の雪中にて撮影したマゼランの俯瞰ショット。よく眺めると透明アクリル板の円形ベースを雪の中に埋めている様子がうっすらと透けて見えます


■WSC#115 木田脩仁のプレゼンテーション作品『move』はいわゆる一般的な美少女フィギュアと異なり、エモさに可愛さ・格好良さなどのエッセンスを加えて魅力的な表現を追求した一品。そしてアーティスト解説内でも触れましたが、木田は昨今爆発的な人気を誇るデザイン&アート系の創作系ソフビ(ソフトビニール製フィギュア)のクリエイターでもあります。
 そんな木田が展開するソフビ作品『ポメ公』にはどのような意図が込められているのか、木田に問い合わせたところ長く熱いメッセージが返ってきました。
「ポメ公を使った理由はふたつありまして、ひとつ目が犬は誰でも知っているからという単純な理由(ポメラニアンは犬の中で個人的にいちばんかわいいと思っています)。そしてふたつ目が、モチーフにしたハチ公は観光場所・ストーリー共に海外でも人気があるため、海外のお客様にも視野を向けたという理由があります。
 以下アートトイと呼ばれているソフビについてですが(僕はデザイナーズトイ派です)、ひとつのカタチでさまざまなカラーバリエーションを展開することを前提に原型が作られています。ちなみにポメ公は「どんな場所でも飼い主を待っている」というコンセプトを元に製作しています。雪の中で待っているのなら雪にまみれたような塗装を施したり、エジプトで待っていたらアヌビス神の格好を表現したりなど、設定によってさまざまなカラーバリエーションを展開していくことが可能です。カラバリを作るとコレクターは集めたくなりますし、実際その設定に合った場所で撮影しSNSで投稿することによってコレクターも楽しめると共に認知度も増えていきます。
 ソフビを作った理由としては、自分自身がコレクターだからこそコレクター魂を揺さぶるものを作れるのではと思ったからです。また単純に作るのが好きだということと、ある程度ビジネスとして奥が深くやりがいがあるというのも理由のひとつです」。
 ガレージキットとは文脈が大きく異なるためワンフェス本来の来場者からすれば「?」な世界かもしれませんが、いまのワンフェスはこうしたデザイン&アート系の創作系ソフビをも巻き込んで拡大していることをぜひとも知っていただきたく思います。

▲ソフビ製『ポメ公』のカラーバリエーション展開。台座に乗せるとコレが忠犬ハチ公のパロディであることが分かります。ユニークなのはドーナツ的なカラーバリエーションで、チョコミント系の塗装が美味しそう!


■WSC#116 まっつくのプレゼンテーション作品『ハルル&カララ』は往年の富野アニメファンに大きな衝撃をもたらしたようですが、実物を眺めた方は、まるで吸い込まれるような瞳の輝きに目を奪われたはず。「これは単なる塗装表現ではないな」と思いまっつくに問い合わせたところ、「……なるほど!」な回答が戻ってきました。
「頭部は内部構造のギミックが再現された独特の作りになっており、眼球は瞳孔部分を凹状にへこませて造形しています。そして瞳孔部分を塗装したのちにクリアーカラーを塗装するのではなく、クラフト用UVレジンを瞳孔部分の凹みに垂らしているんです。さらに表面張力を利用して、瞳孔部分を若干盛っています。そのほうが撮影の際にハイライトが入りやすくなるので。
 そして瞳孔部分のクラフトUVレジンをUVライトで一旦硬化させたのち、ここでもクリアーカラーを塗装するのではなく、仕上げに眼球全体に薄くクラフト用UVレジンを塗って、再度UVライトで硬化させています。そのことで質感が生っぽくリアルに見えるのと、通常のクリアカラーだと組み付けの際に塗料が剥げてしまうところを強固にガードできちゃうので一石二鳥なんです」。
 同様の手法を用いて写実的なリアル系フィギュアを造形している人がいることは知っていましたが、アニメ系フィギュアでこの手法を用いたのは「斬新」のひとこと。「アニメ系フィギュアの瞳の表現なんてこんなもんでしょ」と歩みを停めず、モアベターな仕上がりを追求するまっつくのガレージキットスピリッツに感銘、です。

▲カララの頭部ギミックはごらんのとおり。分解するとちょっと怖いけれど、眼球の裏面から突き出たパイプを可動させることで視線の向きを調整することも可能。とにかくこの水色の瞳に吸い込まれそうになること請け合い

▲まっつくが今夏ワンフェスへ持ち込んだ新製品は、なんと! バッフ・クラン宇宙軍総司令にして、ハルル&カララ姉妹の実父であるドバ・アジバ! 「こんなおっさんキャラ売れるのか!?」と心配していたものの、50個を持ち込みほぼ完売状態とのこと。……しかしドバ総司令とJKが並ぶブースって凄い光景ですねw


■そんなこんなで今回も無事(?)終了した第42期のWSC。当然ながら第43期WSC候補の選出作業はすでにスタートしています。来年冬のワンフェスにて再見、です!