アーティスト紹介

WSC #004 射尾卓弥

Takuya IO

[BROKEN THU-NDER]

卓越した「センスのよさ」と
それを乗り越えていく可能性に期待して……

 かつての新人類しかり、渋谷系ミュージシャンしかり、小憎らしいほど簡単に「ひょい」っとアベレージ以上のものを提示し、センスのよさだけでひょうひょうとシーンを遊泳していってしまう輩というのはどこにでもいるものだ。そして、近年のガレージキットシーンもそういった人間が少なくない。驚くほど上手くはないのだが、どこかしら見る者を魅きつける“華”があり、努力でのし上がってきたタイプとは明らかに違う涼しげな顔をして見せる。言いまちがえるとネガティブに取られかねないが、射尾卓弥はそういう「極めてイマドキのガレージキット作家」だ。
 既存の作品群からおいしい要素だけを抜き出し、適切にアッサンブラージュしつつ再構成していくアレンジメント能力は極めて高い。が、「最初に作った模型がガンプラ(=ガンダムのプラスチックモデル)で、この先もガンプラ以外はあまり作る気がしない」というタイプゆえ、「“スケールモデル的シャープさ”とか“真のオリジナリティ”みたいなことを言われても正直意味がよくわからないし、自分のまわりはみんなガンプラ以外に興味がないから、そういう“これから先”みたいな領域を突き詰める必要に駆られたことがない」という。そもそも、「ある程度形状が出ると飽きちゃうんで、最後まで本気で模型を仕上げた覚えがないかも」。
 そういった、彼の置かれた状況まで含めて「イマドキだなあ」と思うし、現状の彼に対し「不真面目だ!」と怒るつもりもない(そんな権利もないし)。ただし、仮にぼく以外の誰かが“そこから先”を目指すことを強要した場合(つまり、誰かしらがプロの仕事として彼とタッグを組んだとき)、射尾はここを起点にまだまだ「化ける」要素を十二分に内包していると思う。
 センスだけで世渡りしてきた者のなかで、“その先の自分”を提示できずに消えていった輩は数多い。が、彼はそうした過去の悪例から抜け出せるはず―そう確信したがゆえのワンダーショウケース選出であり、射尾にはいつしかそうした“自分自身への真剣勝負”をかけてほしいと切に願っている。
 大丈夫。君ならきっとなんとかなるから。

text by Masahiko ASANO

いおたくや1975年2月9日生まれ。幼少期より絵を描くことと模型製作を趣味としてきたが、生業としては絵描きを選択、'99年にはプレイステーション用ゲームソフト『プリズマティカリゼーション』(←いわゆるギャルゲー)でキャラクターデザイン&原画を手掛けている。キャラクターモデルに対し本格的に開眼したのは中学生時代で、『ファイブスター物語』と『ガンダム・センチネル』の2作品に触れたことがきっかけ。ワンフェスへは'99年冬から“BROKEN THU-NDER”名義で参加、動機は「市販されていないゲームキャラの模型を完成させたいため、自分自身に対し締切りを設定したかったから」。このとき製作した『サンダーフォースV パーフェクトシステム』のGAUNTLETは、版権申請中に版元のテクノソフトからアクセスがあり同社へ原型を売却、商品原型への道程を辿っている。なお、'00年からは『電撃G'sマガジン』誌上でギャルゲー系イラストの連載もスタートする。
(※現在はディーラー活動を休止しています)

 

WSC#004プレゼンテーション作品解説

© TAKUYA IO 2000


KIMERA 13 ver.WSC

※WSCアーティスト自身による創作(オリジナル)キャラクター
ノンスケール(全高250mm)レジンキャストキット


商品販売価格
ワンフェス会場特別価格/4,000円(税込)
ワンフェス以降の一般小売価格/4,500円(税別)

(※販売は終了しています)


WSCとしては初のメカニックキャラクター系アーティストとなる射尾卓弥は、ワンフェスには“BROKEN THUNDER”名義で'99年冬より参加。プレゼンテーション商品となるKIMERA 13(キメラ サーティーン)は作者自身の手による創作キャラクターで、'99年夏のワンフェスでは「ワンフェスガイドブック誌上で販売の旨を謳っていなかったのに、持ち込んだ20個が午前中で完売した」という隠れたヒット作(?)です。ちなみに今回プレゼンテーションされるのは、既存作品のディティールを改修し、さらにウェポンパーツを追加した“WSCヴァージョン”。作者のデザイナー的資質が反映された機体マーキングもデカールとしてセットされています。

射尾卓弥からのWSC選出時におけるコメント

 海洋堂の宮脇さんから最初に電話があったときは、正直驚きました。『ワンダーショウケース』は自分とは無縁のものだとアタマっから決め付けていましたし(現に、'99年夏のワンフェスにおけるプレゼンテーションの際も無視を決め込んでました……)、レーベルプロデューサーのあさのさんには「キミは何をやらせても器用にこなす反面、何ごとにもアベレージが60点の男だ」とか言われるし……。
  どうして僕を選んだんでしょう? なぜに? ホワ~イ?
  僕のワンフェスへの参加理由は非常に単純なものです。「市販されていない模型を自作するため」。ただそれだけです。「ワンフェス参加!」となると、必然的に自分への締切りが発生しますから。別に、「ほとばしるオレの造形スピリッツを見よ~!」とか、「私にとってガレージキットとは」とか「最近の模型はうんぬん……」「将来はスーパー原型師になるぞ!」などなど、そういうことはあまり考えていないんですよね。「ガンダムいっぱい作りた~い」とかは、しょっちゅう思ってますけど。
  こんな「超」不純な動機でワンフェスに参加しているヤツが、このようなものに選ばれてよいのでしょうか?(本業は絵描きですし……) ただし、辞退するほど無欲にもなれませんので受けさせていただきました。マジメに「将来は造形で食べていこう」と思って、ワンフェスでがんばっている方々にはホント、申し訳ないです。
  ですが、これを機に、模型のほうも(時間が許せば)仕事でやってみたいと思っています。僕のようなぺーぺーに発注がくるかどうかはわかりませんが……。
  その節はよろしくお願いいたします。